
無名異焼は、新潟県佐渡市の相川地区を中心に作られる焼き物です。「無名異(むみょうい)」とは、佐渡金銀山から産出する酸化鉄を多く含んだ赤い土のことで、古くは止血薬などの薬としても用いられました。この無名異を陶土に用いて高温で焼き締めると、成形から乾燥までに約3割も縮み、非常に硬く仕上がります。叩くと澄んだ金属音がし、使い込むほどに光沢が増していくのが特徴です。文政2年(1819年)に無名異を使った楽焼が焼かれたのが始まりとされ、明治時代に高温で硬く焼き上げる現在の技法が確立されました。2003年には国の重要無形文化財に指定され、五代伊藤赤水が保持者(人間国宝)に認定されています。さらに2024年10月には「佐渡無名異焼」の名称で、経済産業大臣指定の伝統的工芸品となりました。島内の窯元では、ろくろ体験ができるところもあります。
発祥
無名異は、佐渡金山の坑内で産出する酸化鉄を多く含んだ赤土です。古くは止血薬や中風の薬として用いられ、和漢薬のように流通していました。文政2年(1819年)、この無名異を使って楽焼を焼いたのが無名異焼の始まりとされます。当初は、無名異を混ぜた赤色の楽焼でした。楽焼は比較的低い温度で焼く焼き物で、現在の硬い無名異焼とは性質の異なるものでした。
歴史
安政4年(1857年)には伊藤富太郎が本焼を始め、明治11年(1878年)には伊藤赤水と初代三浦常山が相前後して高温焼成に成功しました。初代常山は、高い温度で焼く硬質の朱紫泥焼を完成させたとされます。2003年に無名異焼は国の重要無形文化財に指定され、五代伊藤赤水が保持者に認定されました。2024年10月17日には、佐渡市で初めて国の伝統的工芸品に指定されています。
特徴
無名異を含む陶土は、水簸(すいひ:水に溶かして細かな粒子だけを取り出す精製法)で砂や不純物を除いた、非常に細かい粒子の土です。そのため収縮率が大きく、一般的な焼き物が10〜15%ほど縮むのに対し、成形から乾燥までに約30%も縮みます。1200〜1250度の高温で焼き締めた器はとても硬く、叩くと澄んだ金属音を発します。使うほどに色合いが深まり、落ち着いた艶が出てきます。
技法
生磨きと焼成後の研磨
成形した器がまだ生乾きのうちに、石や鉄べらで表面を磨いて光沢を出します。焼き上げた後も、佐渡金山の精錬で出た滓(かす)などを使う砂研磨でさらに磨き、独特の艶を引き出します。
窯変(ようへん)
焼成中の炎の当たり方などで器の色が変わる現象を生かした表現です。五代伊藤赤水は、赤い無名異の器に黒く変色した部分が現れる窯変の作品で新たな表現を確立しました。
練上(ねりあげ)
色の異なる土を重ねて巻き寿司のような塊を作り、輪切りにした断面を並べて器を形作る技法です。五代伊藤赤水の作品は、練上による独特の縞模様や花紋で知られています。
使用される素材
制作工程
- 1
土の精製
無名異と粘土を水簸し、細かい篩で砂や不純物を除く。
- 2
成形
ろくろなどで器の形を作る。
- 3
生磨き
乾ききる前に、石や鉄べらで表面を磨く。
- 4
本焼き
1200〜1250度の高温で硬く焼き締める。
- 5
研磨
焼き上がった器をさらに磨き、光沢を出す。
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職人・工房
購入方法
- 伊藤赤水作品展示館(赤水窯)
- 相川一町目の本店と下相川店で、赤水窯の鉢や茶碗、皿、花入、香炉などを扱う。価格は4,000円台程度から30万円程度までと幅広い。購入先を見る →PR
- 玉堂窯元
- 窯元の売店で、茶器やカップ、食器、酒器、花器、茶道具などの無名異焼を販売。営業は3〜11月が8時30分〜17時30分、12〜2月が9時〜16時。購入先を見る →PR
体験施設
よくある質問
Q. 無名異焼はなぜ叩くと金属音がするのですか?
A. 無名異を含む土は粒子が細かく、成形から乾燥までに約3割も縮むほど収縮が大きいのが特徴です。これを高温で焼き締めるため非常に硬く仕上がり、叩くと澄んだ金属音を発します。
Q. 「無名異焼」と「佐渡無名異焼」は違うものですか?
A. 同じ焼き物を指します。2024年に経済産業大臣指定の伝統的工芸品となった際の名称が「佐渡無名異焼」で、国の重要無形文化財としては「無名異焼」の名で指定されています。