鎌倉彫

Kamakura-bori

鎌倉彫 1

画像: Wikimedia Commons

鎌倉彫は、木彫りの上に漆を塗り重ねて仕上げる神奈川県鎌倉市の伝統的工芸品です。鎌倉時代、中国・宋から伝わった彫漆(堆朱・堆黒)に影響を受けた鎌倉の仏師たちが、より簡便に立体的な意匠を表現しようと、木地に文様を彫刻したうえで漆を塗る技法を編み出したのが始まりとされます。当初は仏具や禅宗寺院の道具として作られていましたが、明治初期の廃仏毀釈で仕事を失った仏師たちが、盆や茶托など生活工芸品の製作へと活路を見出し、現在の鎌倉彫へと発展しました。彫りの断面がV字形になる「薬研彫り」を基本とし、木肌の質感を生かした重厚な色合いの漆塗りが特徴です。1979年には経済産業大臣指定の伝統的工芸品に指定され、現在も鎌倉市内の工房・組合を中心に技術が受け継がれています。

発祥

鎌倉彫の起源は鎌倉時代、禅宗の伝来とともに中国・宋の陳和卿が堆朱・堆黒などの彫漆技法を日本にもたらしたことにさかのぼります。この立体的な意匠に影響を受けた仏師の康運(一説に康円)が、堆朱と同様の効果をより簡便に生み出す方法として、木地に文様を彫刻したうえで漆を塗り重ねる技法を考案し、仏具や禅寺の道具として制作したのが始まりとされています。

歴史

室町時代には優れた作品が「鎌倉物」と呼ばれ評価を高めましたが、明治初年の神仏分離・廃仏毀釈により仏師たちは仕事を失いました。これを転機に、盆や茶托などの生活用品の製作へと転換し、横須賀線の開通による観光客の増加も追い風となって、みやげ物・日用品としての鎌倉彫が発展しました。1968年には鎌倉彫協同組合により活動拠点「鎌倉彫会館」が建設され、1979年には国の伝統的工芸品に指定されています。

特徴

彫り方の断面がV字形になる「薬研彫り」を基本に、牡丹や唐草など日本的な草花の意匠を力強く大胆に彫り込み、その上に漆を塗り重ねて木彫りの陰影を生かすのが特徴です。塗り重ねた漆をあえて研磨して下地の色をわずかに見せる「乾口取り」などの技法により、使い込むほど艶と味わいが深まる風合いが生まれます。木地には彫刻に適したカツラやイチョウが多く用いられます。

技法

薬研彫り

彫刻刀で断面がV字形になるように彫り込む鎌倉彫の基本技法。牡丹や唐草といった草花文様を力強く大胆に彫り出し、漆を塗り重ねた際に深い陰影が生まれるようにする、鎌倉彫を象徴する彫り方。

乾口取り

漆を塗り重ねた表面をあえて研磨し、下地の色をわずかに見せることで古びた風合いや落ち着いた色合いを出す仕上げの技法。使い込むうちに味わいが増す鎌倉彫らしい表情を生み出す。

使用される素材

カツライチョウ漆

制作工程

  1. 1

    木地づくり

    カツラやイチョウなどの木材を盆・鉢・箱などの形に木取りし、ろくろや刃物を使って器物の木地を成形する、すべての工程の土台となる作業。

  2. 2

    下絵付け

    成形した木地に草花や幾何学文様などの下絵を描き入れ、次の彫刻工程で彫り進めるための下図とする。

  3. 3

    彫刻

    薬研彫りをはじめとする彫刻刀の技法を使い、下絵に沿って文様を彫り込んで立体感と陰影を作り出していく、鎌倉彫の中心となる工程。

  4. 4

    漆塗り

    木地固め・下地・中塗り・上塗りと工程を分けて漆を塗り重ね、彫刻の凹凸に沿って陰影を際立たせながら仕上げていく。

  5. 5

    研磨・仕上げ

    塗り重ねた漆の表面を研ぎ、摺漆を施して艶と風合いを整え、完成させる最終工程。

主な産地
  • 鎌倉市

職人・工房

博古堂

鶴岡八幡宮三の鳥居脇に店を構える明治33年(1900年)創業の老舗。奈良から鎌倉に来た仏師の家系である後藤家が29代にわたり営み、彫刻から製作まで一貫して手がける。

公式サイト →

購入方法

博古堂
鶴岡八幡宮三の鳥居脇にある鎌倉彫の老舗。後藤家が代々続けており、盆や茶托などの日用品から仏具まで幅広く扱う直営店で、鎌倉彫の歴史を体感できる。購入先を見る →PR
鎌倉彫会館 CAFE&SHOP倶利/ギャラリーg
鎌倉彫協同組合の活動拠点1階にあるショップ・ギャラリー。器や小物など日常使いの鎌倉彫を購入できるほか、隣接するギャラリーgでは企画展も開催される。購入先を見る →PR

体験施設

鎌倉彫会館 文化教室(鎌倉彫ワークショップ)

神奈川県鎌倉市小町2-15-13

第1・4土曜10:00〜12:00開催、予約不要・当日先着順。専任講師の指導のもと彫刻を体験でき、料金は大人4,500円、小中学生3,500円(税込)、所要90〜120分程度。

詳細を見る →
#漆器#彫刻#鎌倉#薬研彫