画像: Wikimedia Commons京都府
平安京以来千年の都として、公家・武家・寺社・町衆それぞれの文化が層を成して積み重なってきた京都府。西陣織や京友禅、清水焼をはじめとする伝統工芸は分業体制のもとで洗練を極め、湯豆腐や京漬物、八ツ橋といった食文化も禅寺や祭礼、町衆の暮らしと深く結びついて今に伝わる。工芸・食ともに全国有数の層の厚さを持つ地域で、五条坂や西陣、上賀茂、大原など、産地や名店を訪ね歩くこと自体が観光の楽しみになっている。
京都の伝統工芸

西陣織
Nishijin-ori
西陣織は京都市北部の西陣地域を中心に生産される先染めの高級絹織物の総称です。糸を先に染めてから文様を織り出す「紋織物」であり、爪掻本綴織・経錦・緯錦・緞子・朱珍・紹巴など、国の伝統的工芸品に指定された12種の技法が伝わります。起源は5〜6世紀頃に大陸から伝わった織技術にまで遡るとされ、平安時代には宮廷の織部司のもとで発展しました。応仁の乱後、避難していた織手たちが西軍の陣地跡で織物業を再開したことから「西陣」の名がついたと伝えられています。江戸時代には大名や豪商に愛用される高級織物として名声を確立し、現在も帯地を中心に日本の着物文化を支え続けています。図案作成から染色、製織まで多くの専門職人が分業で関わり、多品種少量生産の体制を守っている点も大きな特徴です。

京友禅
Kyo-yuzen
京友禅は、江戸時代前期の元禄期に京都で生まれた模様染めの技法で、絵画のように華やかで優美な意匠を布地に描き出すのが特徴です。扇絵師として人気を博していた宮崎友禅斎が、自らの画風を染めのデザインに取り入れたことが始まりとされ、幕府による奢侈禁止令で絞りや刺繍などの派手な装飾が制限された時代に、糊で防染しながら絵画的な文様を染め出す友禅染めとして広まりました。下絵、糸目糊置き、色挿し、引き染め、蒸し、水洗い(水元)といった多くの工程を経て一枚の着物が完成し、各工程を専門の職人が分業で担う体制が特徴です。明治期には化学染料と型紙を用いる型友禅(写し友禅)が考案され、量産も可能になりました。1976年に国の伝統的工芸品に指定され、日本三大友禅の中でも最も歴史が古い染色技法として今日に受け継がれています。

京焼・清水焼
Kiyomizu-yaki
京焼・清水焼は京都を代表する陶磁器の総称で、特定の様式に縛られず作り手ごとに個性豊かな表現が見られる点が最大の特徴です。京都で最初の焼き物は寛永年間(1624〜1645年)頃に東山・粟田口で焼かれた「粟田口焼」とされ、桃山時代に茶の湯が流行すると、京都市内でも楽焼をはじめ様々な茶道具やうつわが作られるようになりました。江戸時代には野々村仁清や尾形乾山、奥田頴川、青木木米といった名工が相次いで登場し、京焼の地位を不動のものとしました。名称は清水寺への参道である五条坂・清水地区の窯元で焼かれていたことに由来します。土や技法、絵付けの手法に厳密な決まりがなく、陶工それぞれの独自性が尊重されている点が、他の産地の陶磁器と大きく異なる特徴です。現在は東山区の五条坂・茶わん坂に加え、山科区の清水焼団地、宇治市炭山などが主な産地となっています。
京漆器
Kyo-shikki
京漆器は、平安京の宮廷文化とともに育まれてきた京都の漆工芸で、薄手の木地を幾重にも漆で塗り重ねる「本堅地」という緻密な下地技法と、金銀粉で文様を描く蒑絵の美しさを特徴とします。起源は794年の平安遷都まで遡るとされ、奈良時代に生まれた末金鏤(まっきんる)の技法が平安時代に受け継がれ、研出蒔絵や平蒔絵として完成されていきました。茶道文化の広がりとともに茶道具としての需要も高まり、公家や寺社、茶人の求めに応じて洗練された意匠が磨かれてきました。1976年に国の伝統的工芸品に指定され、他産地の漆器には見られない「わび」「さび」を備えた奥深い趣と優雅さを併せ持つ点が高く評価されています。木地作りから下地、上塗り、加飾まで多くの工程を経て、一つの器が完成します。
京指物
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京指物は、金釘などの接合金具を使わず、木の板と板、棒と板を組み合わせる「組み手」やホゾ差しの技法によって作られる京都の木工芸です。起源は平安時代の宮廷文化に発するとされ、正倉院に見られるような日本独自の木工技術に、中国・朝鮮から渡来した文化も取り入れながら発展してきました。室町時代以降には専門の指物師が現れ、茶道文化の広がりとともに、調度品としての指物と茶道具としての指物の双方で洗練された技術が磨かれていきました。狂いが少なく軽量な桐、柔らかく滑らかな杉、堅牢で高級感のある欅など木材の性質を見極めて使い分け、木目の美しさを生かしながら精緻に組み上げるのが特徴です。京箪笥や棚、茶道具、硯箱など幅広い品目に用いられ、1976年に国の伝統的工芸品に指定されました。
京扇子
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京扇子は、京都および京都近郊で作られる扇子の総称で、平安時代初期に京都で考案されたと伝わる。宮中で用いられた檜扇や紙扇にルーツを持ち、扇面づくり・扇骨加工・上絵・仕上げなど、工程ごとに専門の職人が分業する点が最大の特徴で、一本が仕上がるまでに80以上ともいわれる工程を経る。一人の職人が一貫して仕立てる江戸扇子に対し、京扇子は分業体制によって精緻な仕上がりを追求してきた歴史を持つ。茶道・能楽・舞踊など用途に応じた茶扇や舞扇、実用扇から飾り扇まで意匠も幅広く、現在も国内の扇子生産の大半を京都および近郊が担っている。1977年に経済産業大臣指定の伝統的工芸品となった。
京うちわ
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京うちわは、柄と団扇面が別々に作られ、後から柄を差し込む「差し柄」の構造を最大の特徴とする京都のうちわである。中骨と柄が一本の竹から作られる一般的なうちわとは異なり、団扇面には多数の竹骨が放射状に配され、そこに漆塗りや装飾を施した柄を後付けする点が独自性となっている。起源は南北朝時代、朝鮮半島から伝わった団扇が京都近郊の深草に伝わったことにさかのぼるとされ、江戸時代には宮廷向けに絵師が絵付けをした「御所うちわ」として発展した。実用品でありながら、日本画のような美しい絵柄と精密な竹細工が調和した工芸品として親しまれている。

京くみひも
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京くみひもは、京都市や宇治市周辺で作られる組紐で、丸台・角台・高台など複数の組台を使い、数十本の絹糸を職人が手で組み上げて一本の紐に仕立てる伝統工芸品である。基本の組み方だけで約40種類、模様のバリエーションを含めると3,000種類を超えるといわれるほど技法が多彩で、複雑に組み上げられた繊細な編み目と優美な光沢が特徴となっている。かつては神具・仏具や武具の紐、装身具として用いられ、現代では着物の帯締めや羽織紐を中心に、アクセサリーなど幅広く使われている。1976年に国の伝統的工芸品に指定された。
京黒紋付染
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京黒紋付染は、絹織物を深みのある黒色に染め上げ、家紋を正確に染め抜く京都の染色技術で、婚礼で着る黒留袖や葬儀用の喪服などに用いられる。染めの技法には、模様のある黒留袖などに使う「引染」と、無地の喪服などに使う「浸染」の2種類があり、染料には紅や藍などを重ねて用いることで、単に黒く染めるだけでなく、深みと艶のある独特の黒色を生み出す点が特徴である。染め上がった生地には家紋を白く染め抜く紋章上絵の技術も欠かせない。全国で生産される黒紋付のうち9割以上を京都が占めるとされ、1976年に国の伝統的工芸品に指定された。

京鹿の子絞
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京鹿の子絞は、生地を糸で一粒ずつ括って防染し、染め分けることで模様を表す京都の絞り染めで、仕上がった模様が子鹿の背の斑点に似ていることからその名がついたとされる。疋田絞りや一目絞りなど多数の括り技法を組み合わせ、精緻な括り粒とあざやかな色の染め分けが生み出す立体感が特徴で、すべての工程が手仕事によって行われるため、機械染めにはない独特の潤いと温かみを持つ。室町から江戸時代初期にかけて辻が花染として盛んになり、江戸中期の元禄期に全盛を迎えた。起源はインドとされ、7世紀ごろに日本へ伝わったとする説があり、日本書紀にも絞り染めに関する記述が見られるなど古い歴史を持つ。1976年に国の伝統的工芸品に指定された。
京繍(京刺繍)
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京繍(京刺繍)は、一本の針と多色の絹糸・金銀糸を用いて布地に模様を縫い表す京都の伝統的な刺繍工芸である。平安京遷都に伴い宮中の衣服装飾を担う「縫部司(ぬいべのつかさ)」が置かれたことに始まり、十二単や武将の胴服、能装束、小袖などとともに発展してきた。染や織と並んで日本の染織史上重要な位置を占め、全体の構図、繍糸の配色、繍技・繍法が一体となることで、平面の布に立体感と情趣あふれる表現を生み出す点が特徴である。現在も約30種の技法が伝わり、そのうち繍切り・駒使い繍・まつい繍など15種が経済産業大臣指定の伝統的工芸品の技法として認められている。近年は和装品にとどまらず、額装作品や小物などにも応用され、新たな需要が開拓されている。

京仏壇
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京仏壇は、木地・屋根(宮殿)・木彫刻・漆塗・蝋色・純金箔押・錺金具・蒔絵・彩色など、四十余りの専門職種による分業体制のもとで作られる京都の伝統的な仏壇である。仏教伝来直後の8世紀頃に始まった京都の仏具製作は、11世紀初頭に仏師定朝が七条に「七条仏所」を設けたことで本格化し、江戸時代初期の宗門改め制度によって各家庭に仏壇を安置する習慣が広まったことで需要が急増した。宗派ごとに荘厳(しょうごん)の様式が異なるため大量生産になじまず、木工・漆工・金工などあらゆる伝統技術を結集した総合工芸品としての性格を持つ。現在、京都で製作される仏壇・仏具のうち約7割は寺院用とされ、全国の寺院用仏具の多くを京都が担っている。1976年に経済産業大臣指定の伝統的工芸品に指定された。
京仏具
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京仏具は、香炉・燭台・花瓶(けびょう)や仏像、荘厳具など寺院や家庭の仏事に用いる道具類の総称で、木工・漆工・金工・染織など多様な技術を結集した総合工芸品である。仏具の製作は6世紀の仏教伝来とともに始まったとされ、京都では11世紀初頭に仏師定朝が七条に「七条仏所」を設けたことで本格化し、以来千年余りの歴史を刻んできた。宗派ごとに仏具の意匠や仕様が異なるため大量生産になじまず、四十余りの専門職種による分業体制のもとで一点一点手作業により仕上げられる。現在、京都で製作される仏具の約7割は寺院用とされ、全国の寺院で使われる仏具の多くを京都が供給している。1976年に経済産業大臣指定の伝統的工芸品となった。

楽焼
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楽焼は、桃山時代に樂家初代長次郎が千利休の侘茶の思想を受けて創案した手づくねの茶碗を源流とする陶芸で、京都で450年以上受け継がれてきた。轆轤を使わず、手とへらだけで一椀ずつ成形し、低い火度で焼き上げる技法が特徴で、装飾を排したおおらかな造形と、掌に包み込むような柔らかい風合いが茶人に愛されてきた。技術のルーツは中国明時代の三彩陶にあるとされ、長次郎の父と伝わる渡来人・阿米也がその技法を伝えたと考えられている。樂家は初代長次郎から現在の十六代まで一子相伝で受け継がれ、各代当主が個性豊かな作風を打ち出してきた点も他の陶芸には見られない特色である。今日では樂家本流の樂焼のほか、これに倣った赤楽・黒楽の茶碗を手掛ける窯元も京都に複数存在する。
京表具
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京表具は、掛軸・屏風・襖・額装など、書画や染織品を裂地や和紙で仕立てて飾り、保存する京都の伝統工芸である。仏教伝来とともに中国から伝わった経巻の表装を起源とし、都が置かれた京都では仏画の礼拝や書院造の床の間文化、茶の湯の興隆と結びついて技術が磨かれてきた。湿度の高い盆地気候が、糊と和紙を幾重にも重ねて乾燥させる表具の製作に適していたことも技術発達を後押ししたとされる。表具師(経師)は掛軸や屏風の新調にとどまらず、古書画や文化財の修理・修復も手掛け、国宝や重要文化財の修復現場でもその技術が頼りにされている。1997年に国の伝統的工芸品指定を受け、2007年には地域団体商標にも登録された。
京都の郷土料理

湯豆腐
Yudofu
湯豆腐は、昆布だしを張った土鍋で豆腐を静かに温め、ポン酢や薬味を添えていただくシンプルな京都の郷土料理です。京都市左京区の南禅寺門前が発祥地として知られ、豆腐そのものの味わいを楽しむ精進料理として発展してきました。良質な地下水に恵まれた京都では古くから豆腐づくりが盛んで、水と大豆の質が味を大きく左右するといわれます。冬の風物詩として知られますが、実際には南禅寺周辺の専門店では通年提供されており、観光客にも人気の高い京料理の一つです。派手さはないものの、出汁と豆腐の温度・食感にこだわる奥深さが魅力です。

にしんそば
Nishin Soba
にしんそばは、甘辛く煮た身欠きにしんを温かいそばにのせた京都発祥の麺料理です。海のない京都では、北前船によって北海道から運ばれた乾物の身欠きにしんが貴重なたんぱく源として重宝され、そば文化と結びついてこの料理が生まれました。文久元年(1861年)創業の蕎麦店「松葉」の2代目・松野与三吉が、明治15年(1882年)ごろに考案したと伝えられ、以来京都の名物料理として定着しています。骨まで柔らかく炊き上げた甘露煮風のにしんと、かつおと昆布のだしをきかせたつゆの組み合わせが特徴で、京都の観光名物としても広く知られています。

千枚漬け
Senmaizuke
千枚漬けは、薄くスライスした聖護院かぶらを昆布とともに塩漬けし、酢やみりんで甘酸っぱく仕上げる京都を代表する漬物です。すぐき漬け・しば漬けと並ぶ「京都三大漬物」の一つに数えられ、特に冬の京都の味覚として親しまれています。慶応元年(1865年)に宮中の料理方であった初代・大黒屋藤三郎が考案したのが始まりと伝えられ、玉砂利に見立てたかぶらと松の緑に見立てた壬生菜で御所の風景を表現した意匠にも歴史的な背景が感じられます。上品な甘みと昆布の旨み、パリッとした歯ざわりが特徴で、京都土産としても定番の一品です。

すぐき漬け
Sugukizuke
すぐき漬けは、京都・上賀茂特産の京野菜「すぐき菜」を塩だけで漬け込み、乳酸発酵させた独特の酸味を持つ漬物です。千枚漬け・しば漬けと並ぶ「京都三大漬物」の一つで、上賀茂神社の社家が江戸時代初期から作り始めたと伝えられます。かつては社家だけに製法が伝わる貴重な品で、江戸期には「すぐきは一本たりとも村の外へ持ち出すことまかりならぬ」という触れが出されるほど厳重に守られていました。「天秤漬け」と呼ばれる独自の重石の方法や、室(むろ)に入れて発酵を促す工程など、手間のかかる伝統製法が今も受け継がれています。

しば漬け
Shibazuke
しば漬けは、なすやきゅうりなどの夏野菜を赤しその葉とともに塩漬けにし、乳酸発酵させた鮮やかな紫色の京都の漬物です。すぐき漬け・千枚漬けと並ぶ「京都三大漬物」の一つで、京都市左京区大原地区で作られる高品質な赤しそが欠かせない材料となっています。名前の由来は、高倉天皇の中宮であった建礼門院徳子が大原の寂光院で余生を過ごした際、地元の人々が献上したしそ漬けの美しい紫色を喜び「紫葉漬け」と名付けたという逸話に伝わります。市販品には調味酢で漬けた製品も多い一方、大原では塩と赤しそだけで乳酸発酵させる伝統的な「生しば漬け」の製法も守られています。

八ツ橋
Yatsuhashi
八ツ橋は米粉に砂糖と肉桂(ニッキ)を加えて蒸し、薄く伸ばして焼き上げた京都を代表する銘菓。三日月のように反り返った独特の形が特徴で、江戸時代の箏曲家・八橋検校にちなむという説と、『伊勢物語』に登場する三河国八橋の板橋の形に由来するという説がある。かつては堅焼きの煎餅のみだったが、昭和以降に生地を焼かずやわらかく仕上げた「生八ツ橋」が考案され、餡を包んだ三角形の生八ツ橋がお土産の主流となった。現在は抹茶やチョコレート、季節限定のいちごなど味のバリエーションも豊富で、京都八ツ橋商工業協同組合に加盟する十数社がそれぞれの製法で製造・販売している。

わらび餅
Warabimochi
わらび餅は、わらびの根から採れるでんぷん「わらび粉」を水で溶いて練り上げ、黒蜜ときな粉をかけて食べる涼菓。とろけるようなやわらかい食感とほのかな苦みが特徴で、平安時代には貴族に愛された高級菓子であったと伝わる。わらびの根からしか採れない「本わらび粉」は根10kgからわずか数百gほどしか取れないほど希少で、実際にはさつまいもなど他のでんぷんを使った廉価な商品も広く流通している。京都には注文を受けてから練り上げる出来立てにこだわる甘味処が多く、祇園や下鴨周辺を中心に本わらび粉を使ったわらび餅を提供する店が観光客にも人気を集めている。
阿闍梨餅
Ajari Mochi
阿闍梨餅は、餅粉に卵や砂糖を練り合わせた生地で丹波大納言小豆の粒餡を包み、鉄板で焼き上げた半生菓子。むっちりとした歯ごたえの生地と香ばしい焼き色、つぶ餡のあっさりとした甘さが調和し、京都みやげの定番として広く親しまれている。名前と中央が盛り上がった独特の形は、比叡山で千日回峰行を行う「阿闍梨」が被る網代笠に由来するとされる。京都の老舗菓子舗「満月」が大正時代に考案して以来、100年以上にわたり同店の看板商品として作り続けられており、近年は他の菓子舗も類似の商品を手がけるなど京都を代表する和菓子のひとつになっている。

鱧料理
Hamo Ryori
鱧料理は、梅雨から盛夏にかけて旬を迎えるハモを、骨切りという独特の技法で下ごしらえして味わう京都の夏の郷土料理。海に面していない京都でも生命力の強い鱧は活きたまま運ぶことができたため、冷蔵技術のない時代から貴重なたんぱく源として重宝されてきた。小骨の多い鱧は骨切りをしなければ食べられないため、この技術は料理人の腕を象徴するものとして発達し、京都では「骨切りを覚えて一人前」といわれるほど重要な修業のひとつとされている。湯引きして梅肉でいただく鱧の落としをはじめ、照り焼き、鱧しゃぶ、椀物など幅広い料理法があり、祇園祭の頃に鱧が旬を迎えることから、祇園祭は別名「鱧祭り」とも呼ばれるほど京都の夏に欠かせない味覚となっている。

鯖寿司
Kyo Sabazushi
鯖寿司は、塩でしめた鯖を棒状に成形した酢飯にのせ、昆布で巻いて仕上げる京都の郷土寿司。海のない京都で新鮮な魚介を口にする貴重な機会として発展し、若狭湾で獲れた鯖を塩漬けにして「鯖街道」と呼ばれる道を歩いて京都まで運ぶうちに、ちょうど良い塩加減に熟成したことから生まれたとされる。冷蔵技術が発達した現在でも、葵祭・祇園祭・時代祭の京都三大祭をはじめ、各地の秋祭りなど「ハレの日」のごちそうとして食べる風習が受け継がれており、家庭や祭礼の席で振る舞われる特別な料理として親しまれている。棒状に押し固める「棒寿司」と、鯖一尾をそのまま使う「姿寿司」の2つの形式があり、店によって仕立て方に個性が出る。
じゃこ山椒
Jako Sansho
じゃこ山椒は、ちりめんじゃこ(カタクチイワシの稚魚を茹でて干したもの)と実山椒を、醤油・みりん・酒などで甘辛く炊き上げた佃煮で、京都の食卓に欠かせないおばんざいの一つです。「ちりめん山椒」とも呼ばれ、ご飯のお供やお茶漬け、酒の肴として親しまれてきました。もともとは各家庭で作られ、近所や来客に配る手土産のような存在でしたが、昭和の中頃に商品化されて以降、京都みやげの定番としても広く知られるようになりました。実山椒のぴりりとした辛みと爽やかな香り、ちりめんじゃこの旨味が調和した奥深い味わいが特徴で、店ごとに配合の異なる味を食べ比べる楽しみもあります。
鴨なんば
Kamo Nanba
鴨なんばは、鴨肉と九条ねぎをそばやうどんに合わせた、京都で親しまれる冬の麺料理です。「なんば」は上方言葉でねぎを意味し、大阪・難波周辺で栽培されていた「難波ねぎ」に由来するとされます。京都では、難波ねぎの系統を引く地元産の九条ねぎが使われ、加熱すると甘みが増すねぎの風味と、脂の乗った鴨肉の旨味が溶け合った出汁が特徴です。関東では「鴨南蛮」と表記され、上方では「鴨なんば」と呼ばれるなど、東西で呼び名や表記が異なる料理としても知られています。京都の老舗そば処では冬季限定メニューとして提供されることが多く、寒い時期の一杯として親しまれています。

くずきり
Kuzukiri
くずきりは、葛粉を水で溶いて蒸し固め、麺のように細く切った京都の夏の甘味です。氷水で冷やしてつるりとした喉ごしを楽しみ、黒蜜や白蜜、きな粉などをつけていただきます。祇園の老舗「鍵善良房」をはじめとする甘味処の名物として広く知られ、注文を受けてから一枚ずつ手作りする店も多く、作りたてならではのコシと透明感のある食感が魅力です。原料には奈良・吉野の本葛が使われることが多く、葛の質がそのまま味と食感を左右する繊細な菓子として、京都の夏の風物詩となっています。祇園の老舗「鍵善良房」は享保年間(1716〜1736年)創業と伝わり、注文を受けてから一枚ずつ手作りするスタイルを守り続けています。
引千切(ひちぎり)
Hikichigiri
引千切(ひちぎり)は、雛祭りの頃に京都で作られる伝統的な上生菓子です。よもぎ餅などの生地を杓子のような形に伸ばし、端を引きちぎったような形に仕上げて、中央のくぼみに餡やきんとんをのせます。宮中の儀式に由来する菓子とされ、京都では雛人形と共に飾られる特別な存在として親しまれてきました。忙しさのあまり餅を丸める手間を省いて引きちぎったという逸話が名前の由来とされ、独特の形はアコヤ貝を思わせることから、子どもの成長を守り育てる願いが込められているとも伝えられます。ルーツは宮中で誕生や着帯の儀式に用いられた「戴餅(いただきもち)」とされ、生地によもぎを混ぜて緑色に仕上げるものが多く見られます。
賀茂なす田楽
Kamonasu Dengaku
賀茂なす田楽は、京の伝統野菜「賀茂なす」を使った、京都の夏を代表する郷土料理です。丸々とした賀茂なすを輪切りや半分に切って油でじっくりと揚げ焼きにし、白味噌や赤味噌にみりん・砂糖・酒などを合わせて練った田楽味噌をたっぷりとのせていただきます。賀茂なすは実がしまって煮崩れしにくく、油との相性がよいことから田楽に適した野菜とされています。祇園祭が行われる7月頃、家庭の食卓はもちろん、京都の料亭や飲食店でも旬の味覚として提供され、夏の京都を彩る一皿として親しまれています。賀茂なすは貞享元年(1684年)の文献「雍州府志」にも記述が残るほど栽培の歴史が古く、かつては左京区の吉田・田中地区で作られていたと伝わります。
モデルコース
清水焼と湯豆腐・くずきりを巡る東山半日コース
午前は五条坂・清水焼団地周辺で窯元めぐりを楽しみ、清水寺参拝の後は南禅寺参道で名物の湯豆腐を味わう。祇園まで足をのばせば、鍵善良房など甘味処でくずきりを締めに楽しめる、東山エリアの定番周遊コース。
西陣・北野で伝統工芸に触れる一日コース
西陣織会館で帯や着物の製織工程を見学した後、京扇子・京くみひもの老舗をめぐり、分業制で受け継がれてきた京都の染織文化を体感するコース。北野天満宮参拝と合わせると半日〜一日で楽しめる。
イベント
祇園祭
毎年7月1日〜31日(山鉾巡行は前祭7月17日・後祭7月24日) / 八坂神社・四条烏丸周辺
五条若宮陶器祭(京都陶器まつり)
毎年8月7日〜10日 / 五条坂周辺