ローカルフードジャンル

鍋料理

全国各地の鍋料理を横断的に紹介します。

地域(複数選択可)

47 件

きりたんぽ鍋
鍋料理秋田

きりたんぽ鍋

Kiritanpo Nabe

きりたんぽ鍋は、半搗きにしたご飯を秋田杉の丸棒に巻き付けて焼き上げた「きりたんぽ」を、比内地鶏の出汁で煮込む秋田県を代表する郷土料理です。発祥の地とされるのは大館市・鹿角市を中心とする県北地方で、炭焼きや杉の伐採のため山にこもった労働者が、残ったご飯を棒に付けて焼いて食べたのが始まりと伝えられます。比内地鶏の旨味が溶け出した醤油味の出汁に、ごぼう・舞茸・せり・長ねぎといった秋田の山の幸を合わせ、最後にきりたんぽを加えて短時間煮ることでほどよく出汁を含ませます。新米の季節から冬にかけて各家庭でつくられ、冠婚葬祭や来客をもてなす席にも欠かせない一品として親しまれています。

こづゆ
鍋料理福島

こづゆ

Kozuyu

こづゆは、会津地方に伝わる祝い膳の汁物で、干した貝柱でとった上品なだしに、里芋、にんじん、しいたけ、きくらげ、糸こんにゃく、豆麩など奇数種類の具材を加えて仕上げる薄味のお吸い物です。会津塗の浅い椀「手塩皿」に盛り付けて供されることが多く、漆器の艶やかな朱色と汁物の彩りが調和する点も見どころです。正月や結婚式、法事など人が集まるハレの日に欠かせないもてなし料理として、会津の各家庭で世代を超えて受け継がれてきました。海に面していない会津で、貴重な海産物である貝柱のだしを使うこと自体が贅沢とされ、来客をもてなす最上級の一品と位置づけられてきた歴史があります。何杯おかわりしてもよいとされる独特の作法も残り、単なる料理を超えて地域の交流や祝いの文化そのものを体現する一品といえます。家庭ごとに具材の配合や大きさの切り方が微妙に異なり、その家の味として受け継がれている点も魅力です。

こんにゃく味噌おでん
鍋料理群馬

こんにゃく味噌おでん

Konnyaku Miso Oden

こんにゃく味噌おでんは、下茹でした板こんにゃくやしみこんにゃくを串に刺し、甘辛く濃厚な味噌だれをたっぷり塗って味わう群馬県ならではの郷土料理です。群馬県はこんにゃく芋の生産量が日本一で、全国シェアの約9割を占めるこんにゃくの一大産地であり、地元で親しまれてきたこんにゃくを存分に味わう料理として発展しました。群馬の冬は「からっ風」と呼ばれる乾燥した冷たい季節風が吹くことから、体を芯から温めてくれるおでんが各家庭でよく作られてきたと伝わります。味噌だれの配合は家庭や店によってさまざまで、みりんを加えた甘辛い味付けのほか、ゆずやごまを加えて香り豊かに仕上げたものもあり、地域によっては「ひっぱたきおでん」とも呼ばれています。

ほうとう
麺類 / 鍋料理山梨

ほうとう

Hoto

ほうとうは、小麦粉を練って幅広に切った生麺を、かぼちゃなどの野菜と一緒に味噌仕立ての汁で煮込む山梨県の郷土料理です。麺に塩を入れずに打つため、下ゆでをせずにそのまま鍋に入れられます。打ち粉がついたまま煮込むので汁にとろみがつき、冷めにくく体が温まります。「うまいもんだよかぼちゃのほうとう」という言葉があるほど親しまれ、2007年には農林水産省の「農山漁村の郷土料理百選」に選ばれました。山梨県は県域の約8割を山林が占め、米がとれる水田は限られていました。そのため麦などを粉にして食べる「粉食(ふんしょく)」の文化が育ち、ほうとうは米に代わる主食となりました。峡南(きょうなん)地域では「のし入れ」「のし込み」とも呼ばれます。現在は県内に専門店が多く、一人前ずつ鉄鍋で出す店が一般的です。

芋煮
鍋料理山形

芋煮

Imoni

芋煮は、山形県の里芋を主役にした鍋料理で、秋になると河原に鍋や薪を持ち寄って仲間や家族で楽しむ「芋煮会」が県内各地の風物詩として親しまれています。発祥は江戸時代の最上川舟運にさかのぼり、里芋の産地だった中山町周辺で船頭たちが積み荷の棒ダラと地元の里芋を一緒に煮て食べたことがルーツとされます。県内でも味付けや具材には大きな地域差があり、内陸の村山地方では牛肉と醤油による甘辛い味付けが定番である一方、庄内地方では豚肉と味噌を使い、きのこや厚揚げも加えた具だくさんの汁に仕上げます。最上地方は山菜やきのこを、置賜地方は木綿豆腐と隠し味の味噌を加えるなど、同じ「芋煮」でも地域ごとに個性豊かな味わいが楽しめるのが特徴です。毎年9月には山形市の馬見ヶ崎川河川敷で「日本一の芋煮会フェスティバル」が開催され、直径6mの大鍋で約3万食がふるまわれます。

静岡おでん
鍋料理静岡

静岡おでん

Shizuoka Oden

静岡おでんは、牛すじなどでとった色の濃いだし汁で、串に刺した具材を煮込む静岡市の郷土料理です。具には黒はんぺんや牛すじ、大根、こんにゃく、卵などが使われます。食べる直前に、魚の削り節を粉にした「だし粉」と青のりをたっぷりかけるのが特徴です。だし汁には濃口しょうゆを使い、継ぎ足しながら煮込むため、黒っぽい色になります。始まりは大正時代とされ、戦後には廃棄されていた牛すじや豚もつを具に使うようになって人気が高まりました。専門店や居酒屋だけでなく、惣菜屋や駄菓子屋でも1本単位で買えるのが静岡らしいところです。子どもたちは駄菓子屋で、おやつ代わりにおでんを食べて育ってきました。戦後、静岡市役所近くの通りには数多くのおでん屋台が並びました。その流れをくむ「青葉おでん街」と「青葉横丁」には、今もおでん店が軒を連ねています。

湯豆腐
鍋料理京都

湯豆腐

Yudofu

湯豆腐は、昆布だしを張った土鍋で豆腐を静かに温め、ポン酢や薬味を添えていただくシンプルな京都の郷土料理です。京都市左京区の南禅寺門前が発祥地として知られ、豆腐そのものの味わいを楽しむ精進料理として発展してきました。良質な地下水に恵まれた京都では古くから豆腐づくりが盛んで、水と大豆の質が味を大きく左右するといわれます。冬の風物詩として知られますが、実際には南禅寺周辺の専門店では通年提供されており、観光客にも人気の高い京料理の一つです。派手さはないものの、出汁と豆腐の温度・食感にこだわる奥深さが魅力です。

こしね汁
鍋料理群馬

こしね汁

Koshine-jiru

こしね汁は、群馬県富岡市・甘楽町周辺の特産品であるこんにゃく・しいたけ・ねぎをたっぷり使った味噌仕立ての汁物で、3つの食材の頭文字を組み合わせて名付けられた郷土料理です。富岡市婦人会連合会が、地元でよく育つこんにゃく・原木しいたけ・下仁田ねぎという農畜産物を生かした汁物として考案したのが始まりとされ、誕生から20年以上が経った今では家庭料理として定着し、学校給食の献立や地域の祭り・イベントでも振る舞われています。こんにゃく・しいたけ・ねぎの3つを必ず入れることが決まりで、それ以外の野菜や味噌の種類は家庭ごとに異なり、大根やにんじん、ごぼう、里芋、豚肉などを加えて具だくさんに仕上げるのが特徴です。

とうじそば
麺類 / 鍋料理長野

とうじそば

Toji Soba

とうじそばは、長野県松本市奈川(旧奈川村)に伝わるそばの郷土料理で、「投汁そば」とも書きます。鍋で煮立てたつゆに、竹で編んだ小さな「とうじかご」に入れた一口分のそばをくぐらせ、温めて食べます。つゆには旬の野菜や山菜、きのこ、鶏肉などを入れ、そばと一緒にお椀に取り分けます。奈川は、松本から飛騨へ向かう野麦街道沿いの、標高約1,200mの山あいの地域です。昼夜の寒暖差が大きくそばの栽培に向いており、昔は米よりもそばが主食だったと伝わります。囲炉裏に吊るした鉄鍋を家族で囲んで食べた料理で、冠婚葬祭などハレの日のもてなしにも欠かせませんでした。奈川を中心に、木曽地方の一部でも食べられています。

どんがら汁(寒鱈汁)
鍋料理山形

どんがら汁(寒鱈汁)

Dongara-jiru (Kandara-jiru)

どんがら汁は、山形県庄内地方の冬を代表する郷土料理で、産卵のため沿岸に集まる真鱈「寒鱈」を、身だけでなく内臓・白子・皮・アラまでほぼ丸ごと使って味噌仕立てにする豪快な鍋料理です。「どんがら」とは魚の骨やあらを指す言葉で、身とあら(胴殻)を余さず使うことに由来するとされます。もともとは庄内の漁師たちが船上や浜で寒さをしのぐために食べていた漁師料理が始まりとされ、脂ののった肝を溶き入れることでコクのある濃厚な味わいに仕上がるのが最大の特徴です。1月上旬から2月上旬の「寒」の時期にとれる4kg以上の脂の乗った寒鱈が最も美味とされ、この時期には鶴岡市や酒田市で「寒鱈まつり」が開催され、大鍋のどんがら汁がふるまわれます。伝統的には長ねぎは入れず、仕上げに岩のりを添える食べ方が本来の形とされています。

じゅんじゅん
鍋料理滋賀

じゅんじゅん

Junjun

じゅんじゅんは、琵琶湖沿岸から湖北地方にかけて伝わる、醤油・砂糖・みりんで甘辛く味付けするすき焼き風の鍋料理です。全国的なすき焼きが牛肉を主役とするのに対し、じゅんじゅんはウナギ・イサザ・コイ・ホンモロコ・ナマズなどの湖魚や、鶏肉、近江牛を使うなど地域や家庭によって具材が異なるのが特徴です。名前の由来は、鍋の中で具材を煮るときに立てる「じゅんじゅん」という音からきているとされます。かつては琵琶湖周辺の漁村を中心に伝わる限定的な家庭料理でしたが、近年は滋賀県全域で名前が知られるようになり、郷土料理として観光客にも紹介される機会が増えています。正月やお盆など来客をもてなすハレの日に、奮発した食材を使って作られてきた、湖国の暮らしを映す鍋料理です。

すいとん
鍋料理群馬

すいとん

Suiton

すいとんは、小麦粉を水で溶いて練った生地をちぎって団子状にし、野菜とともに味噌や醤油ベースのだし汁で煮込む群馬県全域の郷土料理です。群馬県は全国有数の日照時間の長さを誇り、米の裏作として小麦を育てる二毛作が盛んだったことから、小麦粉を使った料理文化が古くから発達しました。生地を伸ばして切る手間を省き、そのまま丸めて煮込む手軽さから、農作業の合間にも作りやすい家庭料理として親しまれてきました。地域によって呼び名もさまざまで、藤岡市の「とっちゃなげ汁」をはじめ「つめりっこ」「ねじっこ」などの呼称も残ります。同じ小麦粉料理の「おっきりこみ」より古くから食べられていたとされ、現在も県内の学校給食に取り入れられるなど「ぐんまの郷土料理」として親しまれています。

もつ鍋
鍋料理福岡

もつ鍋

Motsunabe

もつ鍋は、牛や豚のもつ(内臓肉)をキャベツやニラ、にんにく、唐辛子とともに醤油や味噌ベースのスープで煮込む、福岡・博多発祥の鍋料理です。終戦直後の食糧難の時代、安価に手に入る牛もつを野菜と一緒にアルミ鍋で煮て食べたのが始まりと伝えられています。その後、食材事情の改善とともにキャベツが加わり、もつ・にら・キャベツ・醤油ベースのスープ・〆のちゃんぽん麺という現在の形に確立されました。1980年代後半から博多市内で専門店が急増し、1990年代前半に全国的な「もつ鍋ブーム」が起こったことで、福岡を代表するご当地グルメとして定着しました。プリプリとした食感のもつと、たっぷりの野菜を一度に摂れる栄養バランスの良さも人気の理由です。

金沢おでん
鍋料理石川

金沢おでん

Kanazawa oden

金沢おでんは、金沢市民が一年を通して食べる地元のソウルフードで、昆布と魚節でとった上品な出汁に地元大野産の醤油を効かせた、関西風の透き通っただしが特徴です。地元で水揚げされる「バイ貝」や、だしをたっぷり吸い込む「車麩」、冬にはカニの甲羅にみそと身を詰めて煮た「カニ面」など、他県のおでんにはないご当地食材が並ぶのも大きな魅力です。金沢でおでんが親しまれるようになったのは明治時代末頃とされ、当初は祝賀行事などの場で提供されたと伝えられています。市内には昭和初期創業の老舗おでん屋が今も暖簾を守り、地元客と観光客の双方でにぎわいます。夏でも提供する店が多く、季節を問わず楽しめる点も金沢おでんならではの特色です。

しょっつる鍋
鍋料理 / 発酵食品秋田

しょっつる鍋

Shottsuru Nabe

しょっつる鍋は、ハタハタなどの魚を塩とともに長期間発酵させてつくる魚醤「しょっつる」を出汁に使う、男鹿半島を中心とした秋田県沿岸部の鍋料理です。しょっつるは能登の「いしる」、香川の「いかなご醤油」と並ぶ日本三大魚醤の一つに数えられます。江戸時代初期頃から、男鹿をはじめとする秋田の漁村で大量に水揚げされるハタハタを樽に塩漬けし、じっくり発酵させて魚醤をつくる技術が受け継がれてきました。ハタハタや豆腐、白菜、きのこなどを土鍋でしょっつる仕立ての出汁で煮込む鍋は、魚醤ならではの濃厚な旨味と独特の風味が持ち味で、冬の男鹿を代表する味覚として親しまれています。

のっぺ
鍋料理新潟

のっぺ

Noppe

のっぺは、里芋を主役に、にんじんやこんにゃく、干し椎茸、たけのこなどを薄味で煮た新潟県を代表する郷土料理です。里芋のぬめりや片栗粉によるとろみがあり、汁物というより煮物に近いのが新潟ののっぺの特徴です。だしには干し貝柱や干し椎茸などの乾物が使われ、ほたて貝柱や銀杏、鮭、いくらなどを加えて彩りよく仕上げます。大晦日や正月の定番料理であるとともに、祭りや法事、婚礼など人が集まる席には欠かせない料理とされてきました。温かいままでも冷やしてもおいしく、冷たいのっぺを好む家庭も少なくありません。具材や切り方、とろみの付け方は地域や家庭によって異なり、呼び名も「こにも」「こくしょう」など土地ごとに変わります。各家庭の作り方が母から子へと受け継がれ、学校給食や飲食店、駅弁でも親しまれています。

水炊き
鍋料理福岡

水炊き

Mizutaki

水炊きは、鶏ガラや骨付き鶏肉をじっくり煮込んで白濁したスープをとり、鶏肉や白菜、豆腐などの具材を煮ながらポン酢でいただく博多を代表する鍋料理です。名前に反してスープは透明ではなく、長時間の加熱でコラーゲンが溶け出した白く濃厚な仕上がりになるのが博多水炊きの特徴です。明治38年(1905年)、長崎出身の林田平三郎が香港で学んだ西洋料理のコンソメと中国料理の白湯(パイタン)の技法を組み合わせて考案し、博多の店「水月」で提供を始めたのが発祥とされています。海外との交流が盛んだった港町・博多らしく、外来の食文化を独自にアレンジして根付かせた料理であり、農林水産省の「うちの郷土料理」にも福岡を代表する一皿として選定されています。

せり鍋
鍋料理宮城

せり鍋

Seri Nabe

せり鍋は、宮城県産のせり(芹)を根・茎・葉すべて丸ごと使う鍋料理です。せりの根には強い旨みが凝縮されており、シャキシャキとした香り高い根の食感が持ち味となっています。宮城県は全国有数のせりの生産地で、なかでも県内生産量の約8割を占める名取市が主産地として知られています。名取市では名取川の伏流水が湧く上余田・下余田の地区で古くからせり栽培が行われており、元和年間(1620年代)には野生のせりの栽培に関する記録が残り、安永年間(1770年代)にはせり栽培が広く普及したと伝えられています。伊達政宗が天正18年(1590年)の連歌の席でせりの根を「根芹(ねぜり)」と詠んだとも伝わり、古くから根まで味わう文化があったことがうかがえます。近年は牛たん焼きやずんだ餅と並ぶ仙台・宮城の名物グルメとして知名度が高まり、冬場を中心に多くの飲食店で提供されるようになっています。

だまこ鍋
鍋料理秋田

だまこ鍋

Damako Nabe

だまこ鍋は、半搗きにしたご飯を一口大に丸めた「だまこもち」を、比内地鶏の出汁でごぼう・せり・きのこなどとともに煮込む秋田県の郷土料理です。八郎潟周辺の南秋地方が発祥の地とされ、もとは焼いたワカサギやフナを味噌で仕立てた「つけご」という食べ方が原型でした。八郎潟の干拓によって漁獲量が減ったことから、魚に代わって鶏のガラと肉を使うようになったと伝えられています。杉の串に巻き付けて焼き上げるきりたんぽとは異なり、串を使わず焼く工程もないため手軽につくれるのが特徴で、もちもちとした食感の家庭料理として、きりたんぽと並んで秋田の冬を代表する鍋料理です。

しじみ汁
鍋料理滋賀

しじみ汁

Shijimi-jiru

しじみ汁は、琵琶湖にのみ生息する固有種セタシジミを使った味噌汁で、滋賀県内で広く親しまれてきた郷土料理です。セタシジミはヤマトシジミなどに比べて殻がふっくらと大きく肉厚で、身にコクがあるのが特徴です。昭和40年代ごろまでは県内のどの家庭でも味噌汁やしぐれ煮、しじみ飯として日常的に食べられており、琵琶湖の恵みを象徴する食材でした。近年は湖岸の砂地の減少など環境の変化により漁獲量が大きく減少し、資源保護の取り組みが進められています。旬は12月から4月ごろで、身が締まって美味しくなることから「寒シジミ」とも呼ばれ、この時期には県内のスーパーや小売店にも並びます。

てっちり
鍋料理大阪

てっちり

Tecchiri (Fugu Hot Pot)

てっちりは、ふぐ(主にトラフグ)の身やアラを、野菜や豆腐とともに昆布だしで煮て、ポン酢で食べる鍋料理です。関西、とりわけ大阪でのふぐ鍋の呼び名として知られます。毒を持つふぐを「当たると死ぬ」鉄砲にたとえて「てっぽう」と呼び、そのちり鍋を略して「てっちり」になったとされます。同じように、ふぐの刺身は「てっさ(鉄砲の刺身)」と呼ばれます。大阪は全国のふぐ消費量の約6割を占めるともいわれ、日本一のふぐの消費地として知られます。昭和初期に大阪でふぐの人気が高まり、戦後は専門店が増えて、冬の味覚として定着しました。締めには、ふぐのうまみが溶け出しただしで作る雑炊を楽しむのが定番です。ふぐの調理には専門の知識と技術が必要です。大阪府では条例により、登録を受けた「ふぐ処理登録者」だけが業としてふぐを処理できます。

仙台雑煮
鍋料理宮城

仙台雑煮

Sendai Zoni

仙台雑煮は、椀からはみ出すほどの大きな焼きハゼをまるごと乗せ、その香ばしいだしで仕立てる宮城県仙台市の正月料理です。江戸時代末期、松島湾でハゼが豊漁だった頃、炭火で焼いて天日干しにした「焼きハゼ」を藁で連ねて正月用に売る習慣が広まり、これを出汁に使う雑煮が仙台の家庭に定着したと伝えられています。具には焼きハゼのほか、阿武隈川を遡上する鮭から採れるハラコ(いくら)、仙台せり、大根・人参・ごぼうを細切りにして茹でてから外気で凍らせた「おひきな」、ずいき、凍み豆腐などが用いられます。彩り豊かで、ハレの日にふさわしい豪華な一杯に仕上がります。仙台市街地周辺では正月三が日にこの雑煮を食べるのが今も一般的な慣習です。なお伊達政宗自身が食べていた雑煮は干しアワビや干しナマコ、ニシンのだしを使う別の様式だったと記録されており、焼きハゼ雑煮はむしろ庶民の間で育まれ広まった郷土料理といえます。近年はハゼやハラコの不漁により入手が難しく、価格も上昇しているため「高級雑煮」と呼ばれることもあります。

ハリハリ鍋
鍋料理大阪

ハリハリ鍋

Harihari Nabe (Whale and Mizuna Hot Pot)

ハリハリ鍋は、鯨肉と水菜を、昆布や節類でとっただしでさっと煮て食べる大阪の鍋料理です。「ハリハリ」は、水菜を食べるときのシャキシャキとした歯ざわりや音を表した言葉とされます。大阪は「天下の台所」と呼ばれた食材の集散地で、鯨も各地から運び込まれ、鯨を食べる文化が花開きました。鯨と水菜の鍋は、大阪の家庭や飲食店でよく食べられてきたといわれます。名前は、1967年(昭和42年)にミナミの千日前で開店した鯨料理店「徳家」が付けたと伝えられています。近年は捕鯨の規制などから鯨を食べる機会が減り、豚肉などで代用することもあります。2024年度(令和6年度)には「大阪の鯨ハリハリ鍋」が、文化庁の「100年フード」(未来の100年フード部門)に認定されました。農林水産省「うちの郷土料理」でも、大阪府の郷土料理として紹介されています。

じゅんさい鍋
鍋料理秋田

じゅんさい鍋

Junsai Nabe

じゅんさい鍋は、秋田県三種町の特産であるじゅんさい(蓴菜)を主役にした夏の鍋料理です。じゅんさいはスイレン科の水生植物で、水面に浮かぶ若葉の下から伸びる新芽をゼリー状のぬめりごと食用にします。三種町の角助沼周辺は自生地として知られ、地域ぐるみで沼を整備してきたことで今では全国有数の産地に発展しました。5月から8月にかけての収穫期には、箱舟に乗った摘み取り人が一芽ずつ手作業で摘み取る光景が初夏の風物詩となっています。鶏ガラや比内地鶏でとった出汁で鶏肉やごぼうを煮込み、仕上げにじゅんさいを入れて色が鮮やかな緑に変わったらすぐに食べるのがコツで、つるりとしたのどごしとぷりっとした食感を楽しむ、秋田の夏らしいもてなし料理です。

だぶ
鍋料理佐賀

だぶ

Dabu

だぶは、鶏肉と大根・人参・里芋・ごぼう・れんこん・こんにゃくなどの野菜をだしで煮て、塩や醤油で味付けし、片栗粉で軽くとろみをつけた佐賀県唐津市周辺の郷土料理です。祝い事の際には彩りよく玉麩や銀杏を加え材料を四角に切るのに対し、弔事では玉麩を使わず、こんにゃくなどを三角に切るなど、慶弔で仕立て方を使い分ける独特の文化があります。名前の由来には、たっぷりの水で「ざぶざぶ」に仕上げることが訛って「だぶ」になったとする説などがあります。かつては煮しめなどを作った際に出る野菜の切れ端を無駄にせず活用した料理ともいわれ、冠婚葬祭で近隣の人々が集まり大鍋で共同で仕込む風習がありました。今も帰省時に食べたくなる「ふるさとの味」として親しまれています。

はば雑煮
鍋料理千葉

はば雑煮

Haba Zoni

はば雑煮は、千葉県の上総地域を中心に正月に食べられている雑煮で、「はばのり」という香りの強い海藻を仕上げにのせるのが特徴です。はばのりは房総半島南部の鴨川市や南房総市などで採取される、秋に着生し冬から春にかけて育つへら型の海藻で、不揃いな見た目のため市場にはあまり出回らず、主に地元で消費されてきました。焼いた角餅をかつお節でとった出汁のすまし汁に入れ、あぶって揉んだはばのりと青のり、かつお節をかけていただきます。「はば」を「幅」にかけて「一年中幅を利かせられるように」という縁起を担ぐ料理としても知られ、産地から離れた九十九里地域や市原市でも正月に欠かせない味として受け継がれています。

中身汁
鍋料理沖縄

中身汁

Nakami-jiru (Pork Offal Soup)

中身汁は、豚の胃や小腸・大腸などの内臓「中身」を具材にした、すまし仕立ての沖縄の郷土料理です。内臓料理でありながら臭みがなく上品な味わいに仕上がっているのが特徴で、丁寧な下処理によって余分な脂と臭みを取り除いたうえで、かつおと豚のだしを合わせたすまし汁に仕立てます。ルーツは琉球王朝時代の宮廷料理にあり、中国からの冊封使や薩摩の役人をもてなす料理として供されていたと伝えられます。かつての沖縄では年末に豚を一頭つぶして正月を迎える習慣があり、新鮮な内臓を使った中身汁は本土の雑煮に相当するごちそうとして、正月や祝い事、法事の席で欠かせない一品となりました。現在も家庭料理として受け継がれる一方、沖縄そばの具として使った「中身そば」としても親しまれています。

ゼリーフライ
鍋料理埼玉

ゼリーフライ

Zeri Furai

ゼリーフライは、茹でてつぶしたじゃがいもとおから、刻んだねぎやにんじんなどを混ぜて小判形に成形し、衣をつけずに素揚げしてウスターソースにくぐらせて食べる行田市のご当地グルメです。デザートの「ゼリー」とは関係がなく、小判に似た形から「銭富来(ぜにふらい)」と呼ばれていたものが訛って「ゼリーフライ」になったという説が広く知られています。ルーツは日露戦争に従軍した行田市持田の「一福茶屋」の主人が、中国東北部で食べた野菜まんじゅうをもとにアレンジしたものとされ、明治後期にはすでに存在していたと伝わります。おからをふんだんに使うため食物繊維が豊富でヘルシーな点も特徴で、モチモチとした食感とソースの染みた味わいが人気です。行田市内には専門店や豆腐店、駄菓子屋など複数の店で提供・販売されており、市を代表する庶民のおやつ・軽食として親しまれています。

玉こんにゃく
鍋料理山形

玉こんにゃく

Tama Konnyaku

玉こんにゃくは、直径3cmほどの球状に丸めたこんにゃくを串に刺し、醤油ベースのだしでじっくり煮込んだ、山形県民のソウルフードともいわれるご当地グルメです。平安時代、山寺(立石寺)を開山した慈覚大師が中国から持ち帰ったこんにゃくを寺の精進料理に用いたのが始まりと伝えられ、やがて周辺住民に広まり県内全域に定着しました。板こんにゃくや糸こんにゃくは全国に見られますが、串に刺して食べ歩く「玉こんにゃく」というスタイルは山形ならではの食文化です。祭りや観光地、花見の屋台などで定番の食べ歩きグルメとして親しまれ、練りがらしをつけて食べるのが一般的です。

あんこう鍋
鍋料理茨城

あんこう鍋

Anko Nabe

あんこう鍋は、大洗町や北茨城市の平潟・大津、ひたちなか市の那珂湊などの漁港で水揚げされるあんこうを主役にした、茨城を代表する冬の鍋料理です。あんこうは江戸時代、鶴・雲雀・鷭・鯛と並んで「三鳥二魚」と呼ばれる五大珍味の一つに数えられた高級食材で、水戸徳川家から将軍家へ献上されていたことを示す資料も残っています。骨以外ほとんど捨てるところがなく、「ぬの(卵巣)・えら・とも(ひれ)・水袋(胃)・肝・柳肉(身)・皮」の「あんこうの七つ道具」を余さず鍋に仕立てるのが特徴です。もともとは漁師が船上で真水を使わずに仕立てた「どぶ汁」が原型とされ、あん肝を溶き入れた濃厚な味噌仕立ての出汁で身や内臓を煮込む、冬の茨城を代表するもてなし料理として親しまれています。

けの汁
鍋料理青森

けの汁

Keno-jiru

けの汁は、津軽地方を中心に食べられてきた具だくさんの汁物で、小正月(1月15日)の行事食として知られる郷土料理です。大根・にんじん・ごぼうなどの根菜、わらび・ぜんまいなどの山菜、油揚げや凍み豆腐といった乾物を、賽の目よりさらに細かく刻んで昆布出汁でじっくり煮込み、味噌や醤油で味付けします。名前は津軽弁で粥を「け」と呼んだことに由来するという説があり、他にも複数の語源説が伝えられています。正月に忙しく働いた女性たちが小正月に里帰りする際、残される男衆のためにまとめて作り置いたのが始まりとも言われ、大鍋で数日分をこしらえ、日を追うごとに味が染みていくのを楽しむ食文化として今に受け継がれています。

けんちん汁
鍋料理神奈川

けんちん汁

Kenchin-jiru

けんちん汁は、根菜や豆腐をごま油で炒めて昆布や椎茸のだしで煮込んだ、精進料理を起源とする汁物です。神奈川県鎌倉市の禅寺・建長寺で古くから作られてきた「建長汁」がなまって「けんちん汁」と呼ばれるようになったとする説が広く知られ、鎌倉が発祥の地とされています。動物性の食材やだしを使わず、豆腐は手でくずして加えるのが伝統的な作り方で、精進料理ならではの滋味深い味わいが特徴です。江戸時代以降、精進料理の枠を越えて庶民の家庭料理としても広まり、現在では全国各地で作られる冬の定番汁物となりました。鎌倉では今も建長寺門前の食事処などで、寺伝の味を再現したけんちん汁を味わうことができます。

じゃっぱ汁
鍋料理青森

じゃっぱ汁

Jappa-jiru

じゃっぱ汁は、青森県津軽地方に伝わる冬の郷土料理です。「じゃっぱ」は津軽弁で魚の「あら」を意味し、鱈の頭や骨、皮、内臓などを大根や人参、ねぎといった野菜とともに味噌仕立てでじっくり煮込みます。津軽地方では鱈は正月を迎えるための「年取り魚」として尾頭付きで一尾丸ごと買い求める風習があり、身は刺身や鍋に、そして通常なら捨てられてしまうあらの部分もじゃっぱ汁として無駄なく使い切る、雪国ならではの知恵が息づく料理です。冬の厳しい寒さのなかで体を芯から温めてくれる家庭料理として、津軽地方の食卓に古くから根付いています。

せんべい汁
鍋料理青森

せんべい汁

Senbei-jiru

せんべい汁は、青森県八戸市を中心に、青森県南部から岩手県北部にかけて食べ継がれてきた郷土料理です。鶏肉や魚、きのこ、野菜などでとった出汁に、汁物専用に焼き上げた「おつゆせんべい」と呼ばれる南部せんべいを割り入れて煮込みます。せんべいはやわらかくもちもちとした食感になりながらも煮くずれしにくく、出汁を吸ってじんわりと旨みを含みます。冷害に見舞われやすく稲作が難しかったこの地域では、小麦を原料とする南部せんべいが米に代わる主食・保存食として発達し、その延長線上でせんべい汁が生まれました。2003年結成の「八戸せんべい汁研究所」の活動やB-1グランプリでの受賞を機に全国的な知名度が高まり、2022年度には文化庁の「100年フード」にも認定されています。

ちゃんこ鍋
鍋料理東京

ちゃんこ鍋

Chanko Nabe

ちゃんこ鍋は、東京・両国の相撲部屋で力士たちの食事として発展した鍋料理です。本来「ちゃんこ」は相撲部屋で作られる料理全般を指す言葉で、その中でも鍋料理を「ちゃんこ鍋」と呼びます。明治42年(1909年)の両国国技館完成の頃、当時の人気横綱・常陸山谷右エ門の活躍で出羽海部屋への入門者が増え、大勢の力士がまとめて栄養を取れるよう、一つの鍋を大人数で囲んで食べるスタイルが定着したと伝わります。鶏がらでだしを取る「ソップ炊き」や、味噌・塩ベースの鍋など、味付けや具材は部屋ごとに異なり、巡業先の農家から譲り受けた野菜や、その日仕入れられる肉・魚を組み合わせて作られてきました。四つ足の動物(牛・豚)を食べると土俵で「手をつく」ことに通じ縁起が悪いとされ、鶏や魚が好んで使われた点も特徴です。現在は両国を中心に、元力士が営むちゃんこ料理店で一般客も味わえる料理となっています。

どぜう鍋
鍋料理東京

どぜう鍋

Dojo Nabe

どぜう鍋は、江戸時代から東京下町で親しまれてきたどじょうを使った鍋料理です。安価で栄養豊富などじょうは、力仕事で汗を流す江戸庶民のスタミナ源として人気を集め、浅草の駒形どぜうをはじめとする専門店が数多く誕生しました。丸のまま開かずに煮る「丸鍋」と、開いてごぼうと一緒に煮て卵でとじる「柳川鍋」の2つのスタイルが代表的で、ねぎと山椒をたっぷりのせて食べるのが一般的です。「どぜう」という表記は、本来「どぢやう」と書くべきところを縁起の良い奇数の三文字にするため、江戸時代の店主が考案したものと伝わります。現在では専門店の数は減ったものの、浅草には江戸時代創業の老舗が今も暖簾を守り続けており、江戸庶民の味として親しまれています。

ひっつみ
鍋料理岩手

ひっつみ

Hittsumi

ひっつみは、小麦粉を水で耳たぶほどのやわらかさにこね、薄く延ばして手でちぎりながら鍋に入れて煮込む岩手県の郷土料理です。名前は「手でちぎる」を意味する方言「ひっつまむ」に由来するといわれています。県央地域は北上川流域に水田が広がり米作りが盛んな一方、寒さが厳しく冷害で米が不作になる年もあったため、小麦や大麦の生産も行われ、粉に水を加えてこねる「しとねもの」と呼ばれる粉食文化が発達しました。ひっつみはその代表的な料理で、鶏肉やごぼう、にんじん、きのこなどの季節の具材とともに、しょうゆやみそで味付けした汁で煮込みます。家庭ごとに味付けや具材が異なり、岩手県民に「おふくろの味」として親しまれてきました。地域によっては「とってなげ」「はっと」とも呼ばれます。

まめぶ(まめぶ汁)
鍋料理岩手

まめぶ(まめぶ汁)

Mamebu

まめぶ(まめぶ汁)は、岩手県久慈市山形町や九戸郡周辺に伝わる郷土料理で、小麦粉の生地でクルミと黒砂糖を包んで丸めた団子「まめぶ」を、昆布と煮干しでとった出汁に醤油で味付けし、ごぼう・にんじん・油揚げ・かんぴょうなどと一緒に煮込んだ汁物です。団子をひと口かじると、香ばしいクルミと黒砂糖の優しい甘みが広がり、しょうゆ仕立ての汁の塩気と混ざり合う独特の味わいが持ち味です。かつて米が育ちにくかったこの地域で、祝い事などの「ハレの日」に麺類の代用としてつくられたのが始まりとされ、正月や冠婚葬祭の席で欠かせない一品として今も受け継がれています。

もんじゃ焼き
鍋料理東京

もんじゃ焼き

Monjayaki

もんじゃ焼きは、水で溶いた小麦粉に刻んだキャベツや具材を混ぜ、鉄板の上で焼きながら食べる東京・下町生まれの粉もの料理です。江戸時代末期から明治期にかけて、水で溶いた小麦粉を鉄板で薄く焼き、醤油や水飴などで味付けして食べる駄菓子屋の子どものおやつが起源とされ、生地がまだ緩いうちにへらで文字を書いて遊びながら焼いたことから「文字焼き」と呼ばれ、それが訛って「もんじゃ」になったといわれます。中央区月島は昭和後期からもんじゃ焼きの専門店が急増し、現在は「もんじゃストリート」と呼ばれる商店街に多くの店が軒を連ねる、もんじゃ焼きの代名詞的な街として知られています。お好み焼きよりも水分量が多いゆるい生地が特徴で、「はがし」と呼ばれる小さなへらで鉄板から直接すくって食べる独特のスタイルも魅力の一つです。

牛鍋
鍋料理神奈川

牛鍋

Gyu-nabe

牛鍋は、幕末から明治にかけて開港地・横浜で生まれた、牛肉を味噌や醤油で煮込みながら食べる鍋料理です。肉食が忌避されていた江戸時代までの日本において、外国人居留地が置かれた横浜で牛肉を食べる欧米人の食文化に触れたことが牛肉食普及のきっかけとされ、文明開化を象徴する料理として全国に知られるようになりました。浅い鉄鍋にぶつ切りの牛肉やねぎ、豆腐などを入れ、味噌や醤油ベースの割り下で煮ながら食べるのが特徴で、後にすき焼きへと発展していく原型ともいわれています。横浜には創業から百年以上続く老舗の牛鍋店が今も営業を続けており、当時の製法や味わいを受け継いだ牛鍋を味わうことができます。

三平汁
鍋料理北海道

三平汁

Sanpei-jiru

三平汁は、塩鮭や糠にしんなど塩蔵した魚と大根、人参、じゃがいもなどの根菜を昆布だしでことこと煮込んだ、北海道を代表する塩味の汁物です。味噌や醤油をほとんど使わず、魚に含まれる塩分だけで味を調えるのが最大の特徴で、素朴ながら滋味深い味わいが魅力です。江戸時代後期の紀行文にすでにその名が記録されているとされ、200年以上前から北海道の家庭で食べられてきた歴史ある料理です。名前の由来には、松前藩主に振る舞われた漁師・斉藤三平の名にちなむ説や、有田焼の深皿「三平皿」に由来する説など諸説あり、いまも定説はありません。味噌仕立てで生鮭を使う石狩鍋とは異なり、あくまで塩蔵魚と根菜の組み合わせが基本で、地域によって使う魚や仕立て方が異なるのも特徴です。

青森生姜味噌おでん
鍋料理青森

青森生姜味噌おでん

Aomori Ginger Miso Oden

青森生姜味噌おでんは、青森県青森市を中心に津軽地方一帯で親しまれるご当地おでんです。昭和20年代、青森駅から古川にかけて建ち並んだ屋台で、青函連絡船に乗る船客の体を温めようと、あるお店が味噌だれにすりおろした生姜を加えたのが始まりと伝えられます。津軽味噌(赤味噌)に酒・みりん・だし汁を合わせて煮立て、生姜をたっぷりすりおろして仕上げるのが特徴で、大根やたまごのほか、薄く大きな「大角天」やボタンの花びらのような焼き目が入る「ぼたん焼ちくわ」、陸奥湾特産のつぶ貝など、青森ならではの具材が使われます。現在では青森市内および津軽地方で「おでん」といえばこの生姜味噌だれを指すほど定着しており、「青森おでんの会」が加盟店を紹介する「おでんMAP」の発行や標準レシピの制定、おでん缶の商品化などを通じて、当地の食文化として全国へ発信する活動を続けています。冬の定番として親しまれる一方、通年提供する店も多く、青森を訪れたら味わいたいご当地グルメの一つです。

石狩鍋
鍋料理北海道

石狩鍋

Ishikari Nabe

石狩鍋は、鮭のぶつ切りとあら(中骨・かま等)に、キャベツや玉ねぎ、豆腐、じゃがいもなどを合わせ、味噌仕立てで煮込む北海道を代表する鍋料理です。発祥は石狩川河口に開けた石狩市とされ、江戸時代から続く鮭漁の恩恵を色濃く受けた郷土料理として知られています。大漁を祝う漁師たちが、獲れたての鮭のあらを味噌汁に放り込んで暖を取りながら食べたのが始まりと伝えられ、昭和20年代には石狩の地びき網漁を見物に訪れた観光客に振る舞われたことで全国に知られるようになりました。仕上げに振る山椒が魚の臭みを抑え、うま味を引き立てます。2007年には農林水産省の「農山漁村の郷土料理百選」に選定され、ジンギスカン、鮭のちゃんちゃん焼きと並ぶ北海道三大郷土料理の一つに数えられています。今も石狩市内の老舗料理店では、鮭を余すことなく使い切る漁師の知恵を受け継いだ一杯が味わえます。

大和茶粥
鍋料理奈良

大和茶粥

Yamato Chagayu

大和茶粥は、ほうじ茶などの茶を煮出した汁で米を炊いた奈良の代表的な家庭料理で、「大和の朝は茶粥で明ける」といわれるほど古くから奈良の人々の食卓に根付いています。その起源は東大寺や興福寺といった寺院にあるとされ、僧侶が修行の合間に食べていたことから広まったと伝わり、東大寺二月堂の「お水取り」で知られる修二会とも深いかかわりを持つ料理です。木綿の茶袋に入れたお茶を煮立て、そこに米を入れて強火で一気に炊き上げると、米粒が花のように開く「ハナが咲く」状態になるのが良いとされています。とろみの少ない、さらっとした食感が特徴で、片栗粉などでとろみをつける他地域の茶粥とは異なる仕上がりです。かつて僧侶や庶民の間で米を節約する知恵として広まったとも伝えられ、質素でありながら奈良の風土に根ざした滋味深い一品として、今も家庭や飲食店で親しまれています。

奈良のっぺ
鍋料理奈良

奈良のっぺ

Nara Noppe

奈良のっぺは、里芋や大根、にんじんなどを昆布と干し椎茸の戻し汁でじっくり煮込んだ、奈良に伝わる精進料理です。全国各地に同じような「のっぺ」「のっぺい汁」と呼ばれる料理がありますが、奈良のっぺは肉や魚を使わない精進仕立てで、里芋が煮崩れることで自然にとろみがつくのが大きな特徴です。片栗粉などでとろみをつける地域も多い中、素材そのものの力でとろみを出す点に、奈良ならではの丁寧な作り方が表れています。毎年12月に春日大社で執り行われる「春日若宮おん祭」に先立ち、神事に奉仕する大和士(やまとざむらい)らが身を清める「大宿所祭」では、参拝者にこの奈良のっぺが振る舞われる習わしがあり、単なる家庭料理にとどまらず、地域の祭礼と結びついた郷土料理として受け継がれています。冬場の体を温める一品として、奈良の家庭でも古くから作られてきました。

飛鳥鍋
鍋料理奈良

飛鳥鍋

Asuka Nabe

飛鳥鍋は、鶏ガラだしに牛乳を加えたスープで鶏肉や白菜、春菊などの野菜を煮込む、奈良県明日香村に伝わる鍋料理です。飛鳥時代、唐から渡来した使者が乳製品を伝え、孝徳天皇に献上して喜ばれたのが日本における牛乳飲用の始まりと伝えられ、当時の僧侶が飼っていた鶏の肉を牛乳で煮て食べたことが起源の一つとされています。牛乳が高価だったためヤギの乳を使っていたとする説もあり、諸説が伝わっています。白味噌や醤油で味を調えたまろやかな味わいが特徴で、昭和初期に明日香の名物料理として現在の形が確立され、今では冬季を中心に地元の飲食店で提供される明日香村の名物鍋となっています。

富山の雑煮
鍋料理富山

富山の雑煮

Toyama Zoni

富山県の雑煮は、昆布だしをベースにした醤油味のすまし汁に角餅と昆布巻きかまぼこを合わせるのが特徴の、富山ならではの正月料理です。県内でも地域差があり、県東部の下新川地方ではフクラギ(ブリの若魚)やカワハギなど魚介を加えた具だくさんの雑煮が作られる一方、県西部の砺波地方では長ねぎや昆布などシンプルな具材でまとめるのが伝統的とされています。両地方に共通するのは、餅を焼かずに昆布だしで柔らかく煮て椀に入れることと、富山を代表する練り物である、板を使わない「昆布巻きかまぼこ」を彩りとして加えることです。紅白の「赤巻」が用いられることも多く、見た目にも華やかな一杯に仕上がります。北前船交易によって昆布が豊富に流通した富山ならではの食文化が、雑煮という正月の一椀にも色濃く表れています。