手こね寿司

Tekone Zushi

手こね寿司 1

画像: Wikimedia Commons

手こね寿司は、三重県の志摩地方を代表する漁師料理です。カツオなどの赤身の魚を醤油ベースのたれに漬け、酢飯と混ぜ合わせて作ります。仕上げにしょうがや大葉の千切りを散らすことが多く、さっぱりと食べられます。始まりは、志摩市志摩町和具の漁師が、カツオ船の上で手早く食事をとるために作った料理だと伝えられます。手でこねるように混ぜて作ったことから、「てこね寿司」と呼ばれるようになったといわれます。明治時代には漁師の家庭や地域に広まり、祭りや来客時のごちそうとして受け継がれてきました。昭和時代には志摩地方の代表的な郷土料理となり、伊勢志摩を訪れる観光客にもふるまわれるようになりました。現在は伊勢・鳥羽・志摩の飲食店で名物として提供されています。2025年度(令和7年度)には、文化庁の「100年フード」に認定されました。

発祥

古くから漁業が盛んな志摩市志摩町和具では、漁師がカツオ船に乗り、一本釣りでカツオを獲っていました。忙しい漁の合間に船上で食事をとる際、カツオを刺身にして醤油に漬け、ご飯に混ぜて手軽に食べたのが始まりと伝えられます。日持ちのする酢飯を使い、手でこねて作ったことが名前の由来とされます。大漁の祝いとして、船主が船員にふるまったハレの食事だったという説もあります。

歴史

明治時代になると、手こね寿司は漁師の家庭や地域の人々にも広まりました。家庭料理として受け継がれ、祭りや来客時にも出されるようになります。昭和時代には志摩地方を代表する郷土料理と位置づけられ、伊勢志摩を訪れる観光客にもふるまわれました。現在も市民のソウルフードとして親しまれ、伊勢神宮の門前町などでも名物として味わえます。

特徴

主役はカツオで、刺身よりやや薄めにそぎ切りにし、醤油と砂糖などで作ったたれに20分ほど漬けます。これを酢飯と混ぜ、しょうがや大葉の千切りを散らして仕上げます。たれの配合は店や家庭によって異なり、黒ごまを混ぜる店もあります。志摩市内でも、地区ごとに作り方が少しずつ違うとされます。

主な食材

カツオ(季節によりアジ・イサキ・イナダなど)米(酢飯)醤油・砂糖(漬けだれ)しょうが大葉

食文化

志摩地方では、お祝いや集まりごとの行事料理として、また家庭料理として作られています。初ガツオの季節から始まり、夏はアジやイサキ、秋は戻りガツオ、冬はイナダやワラサ(ブリの若魚)など、旬の魚で楽しむこともあります。

家庭料理との違い

家庭では、そぎ切りにしたカツオをたれに漬け、炊きたての酢飯と混ぜて手軽に作ります。飲食店では、地元産の米で酢飯を作ったり、肉厚に切ったカツオを秘伝のたれに漬けたりと、店ごとに工夫が凝らされています。伊勢うどんと組み合わせたセットを出す店もあります。

有名店

すし久

三重県伊勢市宇治中之切町20

江戸時代の天保年間(1830〜1844年)に寿司店として開業し、のちに料理旅館となったとされる老舗です。内宮前のおはらい町にあり、料理旅館の面影を残す建物で食事ができます。地元産コシヒカリの酢飯に、甘辛いたれに漬けた肉厚のカツオをのせた「てこね寿し」が名物で、1,600円程度からです。

手こね茶屋 おはらい町中央店

三重県伊勢市宇治中之切町93

内宮前のおはらい町にある店です。志摩名物の手こね寿司と、伊勢名物の伊勢うどんを一度に味わえる「名物合わせ」が1,760円程度で提供されています。伊勢参りの途中に、三重の郷土料理を食べ比べられます。

大王荘

三重県志摩市大王町波切244

志摩市大王町の波切(なきり)にある店です。手こね寿司を「漁師ずし」の名で提供しており、単品は900円程度、小鉢と味噌汁が付く「漁師ずし御膳」は1,100円程度(いずれも税込)です。漁師町で地元の味を楽しめます。

よくある質問

Q. 「てこね」とはどういう意味ですか?

A. 「手でこねる」ことに由来するといわれます。漁師が船の上で、醤油に漬けたカツオとご飯を手で混ぜて作ったことから、この名で呼ばれるようになったと伝えられます。表記は「手こね寿司」「てこね寿司」「手こねずし」など、資料や店によって異なります。

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