泉州水なす漬

Senshu Mizunasu-zuke (Pickled Water Eggplant)

泉州水なす漬 1

画像: Wikimedia Commons

泉州水なす漬は、大阪府南部の泉州地域で育つ「水なす」を、ぬか床や調味液に漬けた漬物です。水なすは、ぎゅっと絞ると水がしたたるほど水分が多く、皮と果肉が柔らかで、ほのかな甘みがあります。皮が薄くあくが少ないため生でも食べられ、その持ち味を生かす浅漬けが地域の食文化として根づいてきました。栽培は江戸時代初期から続くとされ、貝塚市の澤や泉佐野市の上之郷周辺が発祥地といわれます。2007年には、地元のJAが「泉州水なす」を地域団体商標に登録しました。2025年(令和7年)1月には、国の地理的表示(GI)にも登録されています。「泉州水なすの浅漬」は農林水産省「うちの郷土料理」に掲載されています。家庭で日常的に食べられるほか、大阪を代表する土産物や贈答品としても人気です。

発祥

室町時代後半の『庭訓往来(ていきんおうらい)』には、水なすの元と考えられる「澤茄子(みづなすび)」の名が菓子の項に見えます。果物のように生で食べられる特別ななすとして扱われていたと考えられています。泉佐野市には「日根野あずきに上之郷なす」という言葉が残ります。現在の貝塚市澤や泉佐野市上之郷の周辺が、水なす栽培の発祥地といわれます。江戸時代の和泉地方の農事調査からは、堺・岸和田・貝塚・泉佐野の川沿いの村々で栽培されていたと推測されます。

歴史

水なすは、ほかの土地で育てると形や色、肉質が変わるといわれ、門外不出の特産とされてきました。岸和田城に立ち寄った土佐藩初代藩主の山内一豊が、茶がゆとともに出された水なす漬を忘れられず、土佐で栽培を試みたという逸話も残ります。昭和初期までの水なすは漬けると色が悪くなるのが難点で、1942年以降、府の農事試験場が品種改良を進めました。皮が薄く傷みやすいため、1960年代までは泉州の中で消費されていました。1980年代以降、道路網や冷蔵宅配便が整い、浅漬けが贈答品として全国へ送られるようになりました。

特徴

漬物には、主にぬか床に漬ける「ぬか漬け」と、調味液に漬ける「浅漬け(塩漬け)」があります。いずれも水なすのみずみずしさを生かし、漬かりすぎないうちに食べるのが特徴です。ぬか漬けは、皮にぬかの風味がしっかりとのり、果肉はジューシーなまま残ります。食べるときは包丁を使わず、手で縦に裂くのがよいともいわれ、でこぼこした断面に醤油などがよくからみます。古漬けを塩抜きして小エビと甘辛く炊いた「じゃこごうこ」も、泉州の郷土料理として知られます。

主な食材

泉州水なす米ぬか(ぬか床)塩調味液(浅漬けの場合)

食文化

昔は田畑の片隅に水なすを植え、炎天下の農作業でのどが渇いたときに食べて渇きを癒やしたといわれます。大阪府とJAグループ大阪は、水なすを「なにわ特産品」に指定しています。泉州で作られるなすのほとんどは水なすで、地域を代表するブランド野菜です。2019年のG20大阪サミットでは、晩餐会の食材にも採用されました。

家庭料理との違い

文化庁の事業報告書によると、かつては泉州の各家庭で水なすが漬けられ、家ごとに漬け方や味の違いがありました。近年は家庭で漬ける機会が減り、市販品を利用する人が多くなっています。漬物店には、機械化をせず独自のぬか床で手作業で漬け込む店もあります。

有名店

伊勢屋商店(黒門市場)

大阪府大阪市中央区日本橋2-3-4

1897年(明治30年)に黒門市場で創業したとされる漬物店です。機械化をせず、伝統の製法で漬け込むことを掲げています。泉州産の水なすを独自のぬか床で手作業で漬けた「水なすぬか漬」は、大阪府の「大阪産(もん)名品」に認証されています。

JA大阪泉州 農産物直売所「こーたり~な」

大阪府泉佐野市松風台3-1-1

JA大阪泉州が運営する農産物直売所です。大阪府が泉州水なすの購入先として紹介している施設の一つで、産地ならではの水なすや水なす漬を探せます。

JAいずみの 農産物直売所「愛彩ランド」

大阪府岸和田市岸の丘町3-6-18

JAいずみのが岸和田市で運営する農産物直売所です。大阪府が泉州水なすの購入先として紹介している施設の一つで、地元の農産物とともに水なすを扱っています。

堺共同漬物「大阪・泉州みずなす漬詰合せ」堺市の堺共同漬物による、ぬか漬・浅漬・カットタイプの3種を食べ比べられる詰め合わせです。同社のみずなす漬は大阪産(もん)名品に認証されています。百貨店のギフトでは税込4,968円程度で扱われています。
久吾商店「水なす漬詰合せ」岸和田市土生町の久吾商店が手がける、水なすのぬか漬と塩漬の詰め合わせです。同社の水なす漬は大阪産(もん)名品に認証されており、大阪土産や贈り物として紹介されています。

よくある質問

Q. 水なすは普通のなすと何が違いますか?

A. 水分がとても多く、ぎゅっと絞ると水がしたたり落ちるほどです。皮と果肉が柔らかく、ほのかな甘みがあり、あくが少ないため生でも食べられます。ほかの土地で育てると形や肉質が変わるといわれ、砂地の土壌で海に近い泉州の気候が栽培に向くとされます。

Q. 泉州水なすの旬はいつですか?

A. ハウス栽培は3〜8月、露地栽培は5〜11月ごろで、露地ものは7月に最盛期を迎えます。浅漬けは、お中元などの夏の贈答品としても人気があります。

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