佐久鯉

Saku Koi (Saku Carp)

佐久鯉 1

画像: Wikimedia Commons

佐久鯉(さくごい)は、長野県東部の佐久地方で育てられる食用の鯉と、それを使った郷土の鯉料理です。佐久市桜井地区の商人が、江戸時代の天明年間に大阪の淀川から「淀鯉」を持ち帰ったのが始まりといわれます。冷たく澄んだ千曲川の水で育つため成長がゆっくりで、ほかの産地より長い3年ほどをかけて出荷されます。身が引き締まって臭みが少なく、脂が適度にのった肉質が特徴です。明治時代からは田んぼで鯉を育てる方法などで生産が増え、昭和初期には「佐久鯉」の名に統一されました。輪切りにして味噌で煮る「鯉こく」、甘辛く煮た「うま煮」、薄造りを冷水で締めた「あらい」などが伝統の食べ方です。正月や祝い事のごちそうとして、今も佐久の人々に大切にされています。

発祥

佐久鯉の始まりは、江戸時代の天明年間(1781〜1789年)とされます。佐久市桜井地区の呉服商・臼田丹右衛門が、大阪の淀川から「淀鯉」を持ち帰ったのが起こりといわれます。一方、佐久鯉の最古の記録は1746年(延享3年)とされ、佐久の旧家の当主が伊勢神宮の神職に鯉料理をふるまったと伝わります。これをきっかけに、正月に鯉こくを食べるようになったともいわれます。

歴史

江戸時代に養殖が始まった鯉は、健康によいとして「薬魚」とも呼ばれ、宿場の献立にも登場しました。明治時代の初めからは田んぼで鯉を育てる方法などで生産が増え、佐久の外へも販路を広げました。明治後期には宮内省(現在の宮内庁)に買い上げられ、大正時代には品評会で受賞を重ねています。昭和初期に名前を「佐久鯉」に統一し、生産量が日本一になった時期もありました。

特徴

佐久は冷涼な気候で、千曲川から引く水も冷たいため、鯉の成長はゆっくりです。ほかの産地では2年ほどで出荷されることが多いのに対し、佐久鯉は3年ほどかけて育てます。そのため身が引き締まり、臭みがほとんどなく、脂が適度にのった肉質になるといわれます。2008年(平成20年)には、佐久養殖漁業協同組合が「佐久鯉」の地域団体商標を取得しました。

主な食材

佐久鯉味噌(鯉こく)しょうゆ・砂糖(うま煮・甘露煮)粉山椒

食文化

佐久地方では、鯉こくが正月に欠かせない料理とされ、祝い事のごちそうとしても鯉が珍重されてきました。鯉の養殖が苦境にある今も、佐久の人々の鯉への思い入れは強いといわれます。伝統の鯉こく・うま煮・あらい・塩焼きのほか、鯉丼や鯉のうろこを揚げた「鯉せんべい」など、新しい食べ方も生まれています。

家庭料理との違い

家庭の鯉こくは、味噌に砂糖を入れるかどうか、うろこを取るかどうかなど、地域や家ごとに作り方が異なります。料理店では、家庭では手間のかかるあらいや、鯉せんべいなどを盛り込んだ会席仕立ての鯉料理を味わえます。鯉料理の元祖を名乗る老舗もあり、それぞれの秘伝の味があります。

有名店

佐久ホテル

長野県佐久市岩村田今宿553

1428年(正長元年)創業と伝わる、中山道の岩村田宿にある温泉旅館です。「鯉料理発祥の宿」として知られ、秘伝のたれを使った鯉料理を出しています。佐久鯉の最古の記録に関わる家系が営むとされます。

割烹花月

長野県佐久市原481-3

大正期の創業で「元祖鯉料理の店」を名乗る割烹です。鯉のあらいや、鯉のうろこを揚げた珍味「鯉せんべい」を盛り込んだ会席仕立てのコースが味わえます。佐久の人になじみ深い鯉丼も1,080円程度で提供しています。

三河屋食堂

長野県佐久市中込1-21-4

JR小海線の中込駅近くにある食堂で、鯉こく定食やあらい定食、丼など、さまざまな鯉料理を味わえます。鯉こく定食は1,950円程度〜です。鯉以外の食事メニューもあり、気軽に立ち寄れます。

魚甲本店佐久市原457にある、鯉の甘露煮など川魚の加工品の店です。千曲川の流れで育った鯉を伝統の製法で煮上げた甘露煮は、2,592円程度〜です。鯉の身を昆布で巻いて煮た「こい巻」や、フナやアユの甘露煮も扱っています。
楽群堂本舗佐久鯉の発祥地とされる佐久市桜井663にある、明治時代から続く鯉の養殖の老舗です。地元の調味料で煮詰めた子鯉の甘露煮は170gで1,080円程度〜です。鯉の稚魚を天日で干して揚げた「すずめ焼」も販売しています。

よくある質問

Q. 佐久鯉はなぜ臭みが少ないのですか?

A. 佐久の冷たく澄んだ水で、3年ほどかけてゆっくり育てるためといわれます。ほかの産地では2年ほどで出荷することが多く、長く育てる分だけ身が引き締まります。臭みがほとんどなく、脂が適度にのった肉質になります。

Q. 鯉こくとはどんな料理ですか?

A. 鯉を大胆に筒切りにして、味噌で煮込んだ汁物です。佐久地域の正月には欠かせない料理とされ、好みで粉山椒をかけて食べます。うろこを取るかどうかや、味噌に砂糖を入れるかどうかは、地域や家庭によってさまざまです。

Q. 鯉のあらいとはどんな料理ですか?

A. 鯉の身を薄く切り、湯通ししてから冷水で締めた料理です。鮮度が大切な料理のため、新鮮な鯉が手に入る産地ならではの食べ方とされます。佐久では、割烹の会席料理や食堂の定食などで味わうことができます。

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