なた漬けは、生の大根を厚刃の鉈(なた)でざっくりと乱切りにし、米麹や甘酒、砂糖などで短期間漬け込む秋田の即席漬物です。切り口がわざとささくれ立つように大根を割ることで麹の味が内部までしみ込みやすくなり、シャキシャキとした歯ざわりと自然な甘みが特徴の浅漬けに仕上がります。秋田県は良質な秋田杉をはじめ山林資源が豊富で林業が盛んだったことから、多くの家庭に鉈があり、それを使って大根を漬け込んだことが名前の由来と伝わります。燻して乾燥させた大根を漬け込む「いぶりがっこ」とは異なり、なた漬けは生の大根を用いて数日で漬け上がる点が大きな違いで、秋田の食卓に欠かせない冬の「がっこ(漬物)」の一つとして親しまれています。
発祥
秋田県は天然秋田杉をはじめとする山林資源に恵まれ、古くから林業が盛んだったため、多くの家庭に木を切る道具として鉈が備わっていました。冬支度で漬け込む生の大根を、包丁ではなく身近にあった刃の厚い鉈でざっくりと乱切りにしたことから「なた漬け」と呼ばれるようになったと伝えられており、林業とともに発達した暮らしの知恵がうかがえる名称です。
歴史
秋田では冬場の保存食として、大根を米麹や甘酒に漬け込む漬物文化が古くから根付いており、なた漬けは燻製で仕上げるいぶりがっこと並ぶ「秋田の代表的ながっこ」として各家庭で作り継がれてきました。乾燥や燻煙の工程を経ずに生のまま漬け込める手軽さから、いぶりがっこよりも短い期間で仕上がる漬物として、日々の食卓に欠かせない常備菜の位置を占めてきました。
特徴
鉈で大根を乱切りにすると、包丁で切るよりも切り口がザラザラとささくれ立つため、厚切りでありながら内部まで麹や甘酒の味がしみ込みやすくなります。塩漬けにしたのち砂糖と甘酒を加えて数日から1週間ほど漬け込むだけで仕上がる手軽さも特徴で、ザクザクとした小気味よい歯ざわりと麹由来のやさしい自然な甘みを存分に楽しめる浅漬けです。
主な食材
食文化
「がっこ」と呼ばれる秋田の漬物文化の中でも、なた漬けは短期間で仕上がる手軽な浅漬けとして日常的に作られてきました。燻製の香りが特徴のいぶりがっことともに「秋田三大名物がっこ」の一つに数えられ、家庭ごとに甘みや漬け込み日数を微調整しながら受け継がれています。
家庭料理との違い
同じ秋田の大根漬けである「いぶりがっこ」は、囲炉裏の煙で大根を燻して乾燥させてからたくあんのように漬け込むのに対し、なた漬けは大根を生のまま鉈で乱切りにし、米麹や甘酒で数日から1週間ほど漬け込む点が大きく異なります。燻香のあるいぶりがっこに比べ、なた漬けは大根そのものの水分とシャキシャキした食感、麹の優しい甘みを楽しむ漬物です。