
塩引き鮭は、新潟県村上市に伝わる鮭の加工品で、秋に獲れた鮭に塩をすり込み、寒風にさらして干し上げたものです。村上では鮭を方言で「イヨボヤ」と呼び、平安時代には三面川(みおもてがわ)の鮭を都の朝廷へ納めていたとされるほど、古くから鮭と深く結びついてきました。江戸時代には村上藩士の青砥武平治が鮭の回帰性に着目し、世界初とされる鮭の自然ふ化増殖に成功しました。城下町の村上では切腹を嫌い、腹を一部つなげたまま割く「止め腹」という独特のさばき方が今も受け継がれています。晩秋から初冬にかけて日本海から吹く湿った風がゆっくりと身を乾かし、柔らかく円熟したうま味が生まれます。村上では大晦日の年取り魚として欠かせない存在です。市内には天井から多数の鮭を吊るす老舗もあり、鮭のまちの文化を今に伝えています。
発祥
村上を流れる三面川は、古くから鮭がよく獲れる川として知られていました。平安時代には三面川の鮭が租税として京の朝廷に納められていたとされます。村上では鮭の身だけでなく頭や内臓、中骨、皮まで余さず使い、100種類を超える鮭料理が伝わるといわれます。塩引き鮭はその代表格で、村上の気候風土を生かした伝統の味として受け継がれてきました。
歴史
江戸時代、村上藩士の青砥武平治(1713〜1788年)は、鮭が生まれた川に戻る習性に着目しました。三面川に産卵しやすい人工の分流「種川」を設け、鮭を保護する「種川の制」を確立します。工事は1755年頃に着工し、完成まで約30年を要したと伝えられます。これが世界初の鮭の自然ふ化増殖とされ、鮭は藩の財政を潤しました。1987年(昭和62年)には日本最初の鮭の博物館「イヨボヤ会館」が開館しています。
特徴
内臓を取り出した鮭に丹念に塩をすり込み、約1週間置いてから流水で塩抜きします。その後、風通しのよい場所に2週間ほど吊るして干し上げます。村上では腹を二段に分けて切り、一部をつなげて残す「止め腹」でさばくのが特徴です。吊るす際も首つりを嫌い、尾から下げるのが村上流とされます。日本海の湿った寒風の中でゆっくり乾燥させることで、身は柔らかく熟成したうま味をまといます。
主な食材
食文化
塩引き鮭は年取り魚として大晦日の食卓を飾り、正月の祝い膳にも欠かせない一品です。家庭で作る場合はその家の主の仕事とされ、作り方にも一家ごとのこだわりがあるといわれます。
有名店
千年鮭 きっかわ
新潟県村上市大町1-20
築130年の町屋(国の登録有形文化財)の天井から千匹もの鮭が吊るされ、見学もできる鮭の専門店です。公式通販での塩引き鮭は切り身1切2,058円程度〜、一尾は2万円程度〜です。
詳細を見る →越後村上うおや 本店
新潟県村上市大町4-3
寛政年間に初代助五郎が鮭の元売業を起こしたと伝える、創業200年余りの鮭の老舗です。選び抜いた秋鮭を約1週間塩漬けにし、流水で塩加減を整えて日本海の寒風にさらし、塩引き鮭に仕上げています。
詳細を見る →千年鮭きっかわ 井筒屋
新潟県村上市小町1-12
きっかわが築130年以上の町屋を受け継ぎ、2017年に開いた鮭料理の店です。建物は国の登録有形文化財で、塩引き鮭をはじめとする村上の鮭料理を膳で味わえます。
詳細を見る →| 鮭の塩引き 切身 化粧箱入(千年鮭 きっかわ) | 千年鮭きっかわの公式通販で扱う塩引き鮭で、切り身3切の化粧箱入りは6,527円程度です。半身や一尾の商品もあり、化粧箱入りは贈り物にも向きます。購入先を見る →PR |
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よくある質問
Q. 「止め腹」とは何ですか?
A. 鮭の腹を全部は切らず、一部をつなげたまま残してさばく村上独特の方法です。城下町で切腹を忌み嫌ったことに由来するとされます。藩を救った鮭に切腹させてはならないという思いも込められていると伝えられます。
Q. 「イヨボヤ」とはどういう意味ですか?
A. 村上の方言で鮭のことです。「イヨ」も「ボヤ」も魚を意味する言葉で、「魚の中の魚」といった意味合いを持ちます。鮭にだけ使われる言葉で、鮭の博物館「イヨボヤ会館」の名前にもなっています。