ほうとう

Hoto

ほうとう 1

画像: Wikimedia Commons

ほうとうは、小麦粉を練って幅広に切った生麺を、かぼちゃなどの野菜と一緒に味噌仕立ての汁で煮込む山梨県の郷土料理です。麺に塩を入れずに打つため、下ゆでをせずにそのまま鍋に入れられます。打ち粉がついたまま煮込むので汁にとろみがつき、冷めにくく体が温まります。「うまいもんだよかぼちゃのほうとう」という言葉があるほど親しまれ、2007年には農林水産省の「農山漁村の郷土料理百選」に選ばれました。山梨県は県域の約8割を山林が占め、米がとれる水田は限られていました。そのため麦などを粉にして食べる「粉食(ふんしょく)」の文化が育ち、ほうとうは米に代わる主食となりました。峡南(きょうなん)地域では「のし入れ」「のし込み」とも呼ばれます。現在は県内に専門店が多く、一人前ずつ鉄鍋で出す店が一般的です。

発祥

名前のもとになったとされるのは、中国から伝わった小麦粉の料理「餺飥(はくたく)」です。平安時代には、貴族が儀式などで食べていたことが知られています。はじめは各地にあったものの、稲作の広がりとともに姿を消し、山梨の郷土料理として残ったといわれます。鎌倉時代になると武士や僧侶の間で製粉の道具が使われ始め、粉を使う料理が少しずつ増えていきました。

歴史

ほうとうは文献上、江戸時代以降に甲斐の名物として多く登場します。近世には養蚕の広がりとともに麦が盛んに作られ、村々に置かれた水車による製粉も普及して、粉食が庶民の食卓に浸透しました。家庭では日常の食事として食べ継がれ、戦後は観光客向けの郷土料理店に広まります。県内では昭和40年代から麺の商品化が進み、土産用のほうとうも売られるようになりました。

特徴

小麦粉にぬるま湯を少しずつ加えてこね、薄くのばして1cmほどの幅に切ります。塩を使わないため麺のコシは強くなく、煮崩れたかぼちゃや汁とよく絡みます。だしは煮干しでとり、じゃがいもや大根、人参など硬い具から順に煮込みます。味噌は2回に分けて加え、最後にねぎを入れてふたをして蒸らします。かつては米麹と麦麹で仕込んだ自家製の甲州味噌がよく使われました。

主な食材

小麦粉(ほうとう麺)かぼちゃじゃがいも・里芋大根・人参・白菜しいたけなどのきのこ長ねぎ油揚げ煮干し(だし)味噌

食文化

山間で米の代わりとなる主食だったため、ほうとうを打つことは花嫁修業の第一歩ともされてきました。家庭では大鍋でたっぷり作り、翌日に温め直した「沸かし返し」を好む人もいます。夏には麺を冷水で締め、つけ汁で食べる「おざら」も親しまれています。

家庭料理との違い

家庭では家族分を大鍋で作ってどんぶりや汁椀に盛り、具も野菜と油揚げが中心です。専門店では一人前ずつ鉄鍋で煮込んで出し、豚肉や鶏肉、きのこなどを加えた品も選べます。麺は幅広で厚めのものが多く、注文から出来上がりまで20〜30分ほどかかる店もあります。

有名店

ちよだ

山梨県甲府市丸の内2-4-8

JR甲府駅南口から歩いて3分ほどの、1941年創業の老舗です。ほうとうは注文を受けてから作り、1,280円程度です。ほうとうの麺を冷水で締めてつけ汁で食べる「おざら」を山梨で始めた店としても知られ、おざらは770円程度です。

ほうとう不動 河口湖北本店

山梨県南都留郡富士河口湖町河口707

河口湖の名物として知られるほうとう店です。メニューは「不動ほうとう」1種類のみで、1,320円程度です。コシのある自家製麺を、かぼちゃや山菜などと味噌仕立ての汁でじっくり煮込みます。麺がなくなり次第、営業を終えます。

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天下茶屋

山梨県南都留郡富士河口湖町河口2739

1934年(昭和9年)創業の、御坂峠(みさかとうげ)に立つ茶屋です。太宰治が滞在し『富嶽百景』の舞台となりました。肉を使わず、自家製麺と野菜を地味噌で煮込んだほうとうを出しており、きのこほうとう鍋は1,350円程度です。

よくある質問

Q. 「ほうとう」という名前の由来は何ですか?

A. 中国伝来の小麦粉料理「餺飥(はくたく)」が変化したという説が広く知られています。民俗学では、穀物を粉にする作業「はたく」に由来するという説もあります。武田信玄が自分の宝刀で具材を切ったという話もありますが、後の時代に広まった俗説とされます。

Q. ほうとうとうどんは何が違うのですか?

A. うどんは生地に塩を加えてコシを出し、ゆでてから使うのが一般的です。ほうとうは塩を入れずに打ち、生麺のまま汁に入れて煮込みます。麺から溶け出す粉で汁にとろみがつき、麺と野菜と汁が一体になった味わいになります。

Q. 武田信玄の陣中食だったというのは本当ですか?

A. 信玄が考案した陣中食だったという言い伝えはあります。ただし、甲斐の名物として文献に多く登場するのは江戸時代以降です。信玄にまつわる由来は、戦後に観光の名物として広まる中で語られるようになったという見方もあります。

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