あわびの煮貝

Awabi no Nigai (Simmered Abalone)

あわびの煮貝 1

画像: Wikimedia Commons

あわびの煮貝(にがい)は、あわびを醤油で煮込み、煮汁に漬けて味を含ませた山梨県の名産品です。海のない甲州(甲斐国)で生まれた海産物の加工品として知られています。江戸時代、駿河湾の沼津に揚がったあわびを醤油とともに樽に詰め、馬の背に載せて峠を越えて運んだのが始まりと伝えられます。長い道中で醤油がほどよく染み込み、甲斐に着くころにはちょうどよい味に仕上がっていたといいます。甲府城に勤めた武士たちに称賛され、やがて江戸でも知られるようになりました。武田信玄が陣中食に用いたという話もありますが、これは諸説の一つです。現在は国産の黒あわびを使い、肝ごと仕上げる老舗もあります。薄く切って刺身のように味わうのが定番で、正月や結婚式などの祝いの席や贈答品として重宝されています。

発祥

煮貝の始まりは、江戸時代に駿河湾の沼津と甲斐国を結んだ海産物の運搬にあるとされます。農林水産省の紹介では、江戸時代末期に沼津港の魚問屋が、伊豆七島でとれたあわびを甲斐へ送ったのが起こりです。生のあわびを醤油で加工して樽に詰め、馬の背に載せてゆっくり街道を進みました。長旅を終えるころには味がよく染みて、最上の仕上がりになったと伝えられます。山梨県の観光情報では、御殿場から須走、籠坂峠を越える道筋が紹介されています。

歴史

文献上の古い記録としては、1829年(文政12年)の日記に「尓加以(にがい)」の名が見えるとされます。1840年代の資料にも「仁賀伊」「煮鮑」といった表記が残っています。煮貝は甲府城に勤めた幕府の武士たちに称賛され、評判は江戸にも広がりました。甲府市中央の「みな与」は1584年(天正12年)創業と伝え、煮貝発祥の店を名乗っています。武田信玄が陣中の栄養補給や来客のもてなしに用いたという言い伝えもありますが、確かな史料は乏しく、諸説の一つとされます。

特徴

あわびを殻から外し、醤油を基本にした煮汁で煮込んだあと、煮汁に漬け込んで味を含ませます。煮汁の配合は製造元ごとの秘伝で、かつおだしを合わせる店もあります。身はやわらかく、噛むほどに醤油とあわびのうま味が広がります。肝(わた)を付けたまま仕上げる店もあり、ほろ苦い風味も楽しめます。食べるときは煮汁を切り、薄くそぎ切りにして刺身のように味わうのが定番です。切り身を鉄板で焼き、ステーキにする食べ方もあります。

主な食材

あわび(国産の黒あわびなど)醤油(生揚げ醤油を使う製造元も)かつおだし(製造元による)

食文化

煮貝は、正月や結婚式などの祝いの席に並ぶ山梨県のハレの日のごちそうです。高価な品のため、贈答用としても重宝されてきました。海から遠い甲州で、駿河湾から運ばれた海の幸がいかに珍重されたかを今に伝える一品です。

家庭料理との違い

煮貝は家庭で作る料理というより、専門の製造元が手がける加工品です。老舗には作り置きをせず、注文を受けてから必要な数を真空パックにして渡す店もあります。あわびの産地や大きさ、煮汁の配合が製造元ごとに異なり、味や食感を比べる楽しみがあります。

有名店

みな与

山梨県甲府市中央3-11-20

1584年(天正12年)創業と伝える煮貝の専門店で、JR甲府駅から歩いて15分ほどです。国産近海物の黒あわびだけを使い、肝付きのまま秘伝のタレに手作業で漬けて仕上げます。あわびの煮貝は65gで5,900円程度〜です。

詳細を見る →
国産 黒鮑煮貝(かいや)1977年(昭和52年)創業の甲府市の貝類加工メーカー、かいやの煮貝です。国産天然の黒あわびを使い、かつおベースの自社だしと地元企業の生揚げ醤油で仕上げています。保存料などの添加物を使わない製法にこだわり、オンラインストアでも購入できます。購入先を見る →PR

よくある質問

Q. なぜ海のない山梨県の名物なのですか?

A. 駿河湾の沼津に揚がったあわびを醤油漬けにして、馬の背で甲斐国まで運んだのが始まりとされます。運ぶ間に醤油がほどよく染み込み、おいしく仕上がったと伝えられます。海産物が貴重だった甲州で珍重され、名産品として定着しました。

Q. 武田信玄が食べていたというのは本当ですか?

A. 信玄が陣中の栄養補給や来客のもてなしに用いたという言い伝えがありますが、確かな史料は見つかっていません。武田氏館跡などからあわびの殻が出土していますが、煮貝ではなく、殻に身を盛る別のあわび料理に使われたものと推測されています。

Q. どのように食べるのがおすすめですか?

A. 煮汁を切って薄くそぎ切りにし、刺身のように味わうのが定番です。酒の肴や祝い膳の一品によく合います。切り身を鉄板で焼き、ステーキにして楽しむこともできます。

Q. 日持ちはしますか?

A. 製造元や商品によって異なります。たとえば、みな与の煮貝は保存料や着色料を使っておらず、5℃以下の冷蔵保存で未開封なら1か月ほど日持ちするとしています。購入したら、商品ごとの保存方法の表示を確認しましょう。

#山梨グルメ#あわび#甲府市#贈答品#武田信玄