牛ノ戸焼

Ushinoto Yaki (Ushinoto Ware)

牛ノ戸焼 1

牛ノ戸焼(うしのとやき)は、鳥取市河原町牛戸(うしと)の窯で焼かれている陶器です。江戸時代末期に始まった窯で、天保年間(1830〜1844年)の開窯とする資料もあります。もとは地元の土で梅模様の徳利(とっくり)などの日用雑器を焼いていましたが、昭和初期には衰えていました。1931年(昭和6年)、4代目・小林秀晴が民藝運動家の吉田璋也(よしだしょうや)の指導を受けます。そして緑と黒の釉薬(ゆうやく)を半分ずつ掛けた「染分皿(そめわけざら)」を作りました。窯出しに立ち会った柳宗悦がこれを高く評価し、牛ノ戸焼は吉田が進めた「新作民藝」の出発点となりました。素朴で太く堅牢な日用の器が特徴で、今も代々の登り窯で焼かれています。鳥取県郷土工芸品に指定され、現在は6代目・小林孝男と7代目・小林遼司が作陶を続けています。

発祥

牛ノ戸焼は江戸時代末期に始まったとされ、天保年間の開窯とする資料もあります。石見(いわみ、現在の島根県西部)の陶工・小林梅五郎が職人を連れ、良い土を求めて牛戸に移り住んだのが始まりと伝えられます。最盛期には60人ほどの職人が働き、器のほかに瓦も焼いたといいます。製品は曳田川(ひけたがわ)の水運で賀露(かろ)港へ運ばれ、北前船で各地に送られました。

歴史

昭和初期の牛ノ戸焼は衰えていました。転機は、吉田璋也が鳥取市内の瀬戸物屋で、牛ノ戸焼の「五郎八茶碗(ごろはちぢゃわん)」に出会ったことです。1931年、吉田の指導を受けた4代目・小林秀晴が緑と黒の染分皿を作りました。同年5月11日の窯出しには柳宗悦が立ち会い、「形極めて美しい」と評しています。吉田はその後も販売を支え、牛ノ戸焼は鳥取の新作民藝を代表する窯となりました。

特徴

素朴な民芸調で、太く堅牢な日用雑器が中心です。代表作の染分皿は、茶系の釉薬と緑釉で掛け分けていたものを、吉田の助言で緑と黒に改めたものです。英国の陶芸家バーナード・リーチの指導で作り始めた、手付きの杯「リーチ杯」も知られます。6代目の小林孝男は「芸術品ではなく、生活のための工芸品」と語ります。今は食器のほか、時計などのインテリア製品も手がけています。

技法

染分(そめわけ)

甕(かめ)に入れた釉薬に皿を半分まで浸し、緑釉と黒釉を一枚の皿に掛け分ける技法。浸かり過ぎても浅すぎても失敗になるため、職人が一枚ずつ手作業で繰り返す。1931年に吉田璋也の指導で生まれ、今も牛ノ戸焼の代表的な仕事である。

登り窯での焼成

斜面に焼成室を連ねた連房式の登り窯で焼く。1931年の新作民藝の初窯出しも、この登り窯で行われた。窯元の軒先には燃料の薪が整然と積まれ、登り窯や作業場は今も代々受け継がれている。

土づくり

牛ノ戸焼は、牛戸の土を求めて開かれた窯と伝えられる。掘り出した荒土を陶土に整えるまでには、多くの手間と時間がかかる。窯元は今も土にこだわった作陶を続けている。

使用される素材

陶土(地元の粘土)緑釉黒釉薪(登り窯の燃料)
主な産地
  • 鳥取市河原町牛戸

職人・工房

牛ノ戸焼窯元(小林孝男・小林遼司)

鳥取市河原町牛戸185にある窯元。4代目・小林秀晴が吉田璋也の指導で染分皿を生んだ窯で、現在は6代目・小林孝男と7代目・小林遼司が作陶する。伝統を守りながら、今の暮らしに合う食器や時計などのインテリアも作っている。

公式サイト →

購入方法

牛ノ戸焼窯元
鳥取市河原町牛戸185の窯元で器を購入できる。営業は9時〜17時ごろで休みは不定のため、訪問の際は事前に電話(0858-85-0655)で予約が必要である。購入先を見る →PR
鳥取たくみ工芸店
1932年に吉田璋也が鳥取市で開いた、日本初とされる民藝店。現在は鳥取市栄町651にあり、JR鳥取駅から歩いて5分ほど。鳥取の新作民藝の品を扱い、店頭に牛ノ戸焼の器が並ぶこともある。営業は10時〜18時、水曜休み。購入先を見る →PR

よくある質問

Q. 新作民藝とは何ですか?

A. 民藝運動に共鳴した吉田璋也が、地元の職人と材料を生かし、今の暮らしに合う新しい民藝品を生み出した取り組みです。1931年の牛ノ戸焼の染分皿がその始まりとされます。吉田は陶器のほか、木工や染織、和紙などの職人にも働きかけました。

Q. 牛ノ戸焼と中井窯はどんな関係ですか?

A. 中井窯は1945年に開かれた河原町中井の窯で、1952年に吉田璋也から「牛ノ戸焼脇窯」の名を受けました。どちらも吉田の指導で新作民藝に取り組んだ窯です。ただし、吉田は両窯を異なる形で指導していたことが、県の調査で分かってきています。

Q. 窯元を見学できますか?

A. 訪問には事前の予約が必要です。敷地には代々受け継がれてきた登り窯や作業場があり、窯元のたたずまいに歴史を感じられます。休みは不定なので、電話で確認してから出かけましょう。

Q. 古い牛ノ戸焼の名品はどこで見られますか?

A. 鳥取市の鳥取民藝美術館で見られます。吉田璋也が1949年に鳥取民藝運動の拠点として創設し、1957年に今の建物が新築されました。所蔵品は5,000点を超え、1957年作の牛ノ戸焼の三方掛皿(さんぽうかけざら)なども収められています。

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