
戸隠竹細工は、長野市戸隠で作られる竹細工です。材料は、戸隠の山に自生するチシマザサで、根元が曲がっていることから地元では「根曲竹(ねまがりだけ)」と呼ばれます。この竹は細くても硬くしなやかで、冬の豪雪にも折れずに曲がる強さを持っています。標高が高く稲作に向かない戸隠では、江戸時代に米の代わりに竹を年貢として納めることが認められていたと伝わります。明治以降は養蚕用の大きな籠の需要が高まり、やがてざるやかごなど、暮らしの道具が作られるようになりました。代表的な製品は、戸隠そばを盛り付けるそばざるです。山での竹の伐り出しから竹ひご作り、編み上げまでを1人の職人が一貫して手がけるのが特徴です。1983年には、山ノ内町・伊那市の竹細工とともに「信州竹細工」として長野県知事指定の伝統的工芸品になりました。戸隠神社の門前には、竹細工の店や体験のできる施設が点在しています。
発祥
戸隠では、少なくとも江戸時代の初めから竹が刈り取られてきたとされます。冬は雪に覆われ、一年を通して気温の低い戸隠は稲作に向きませんでした。そのため、徳川幕府への年貢を納める際に、米の代わりに竹で納めることが許されたと伝わります。江戸時代の人々は、この竹で穀物をふるい分ける籠など、農作業に使う道具を作っていました。
歴史
明治時代に養蚕業が盛んになると、戸隠では蚕を育てるための大型の籠が多く作られ、需要が高まりました。その後、ざるやかご、器など、戸隠ならではの暮らしの竹細工が作られるようになり、戸隠そばの器としても使われてきました。1983年には「信州竹細工」として長野県知事指定の伝統的工芸品になっています。近年は担い手が減り、技の継承が課題となっています。
特徴
チシマザサは高さ2mを超えますが、太さは3cmを超えることがまれな細い竹です。特有の光沢と滑らかさがあり、使い込むほど飴色に変わっていきます。ざるの縁や持ち手など部位によって年数の異なる竹を使い分け、そばざるは厚さや太さの違う3種類の竹で編み上げます。丈夫さに加え、編み目が描く幾何学模様の美しさも評価されています。
技法
一貫生産
竹の採取から竹ひごの加工、編み上げ、仕上げまで、すべての工程を1人の職人が手がけます。よい材料を作れるようになることが一人前の大前提とされ、材料の出来具合が作品の美しさを大きく左右するといわれます。
竹ひご作り
秋から冬に刈り取った竹を縦に4つに割り、丈夫な外側の層を切り出して竹ひごにします。竹は数年間寝かせて自然に色を深めたり、煙でいぶして濃い茶色に仕上げたりすることもあります。
そばざる
戸隠そばを盛るざるは、水切れのよさでそばのおいしさを引き立てます。硬い根曲竹を平らに編み上げるには熟練の技が必要で、ベテランの職人でも1日に2枚ほどしか作れないといわれます。
使用される素材
制作工程
- 1
竹の採取
秋から冬にかけて、山に自生する根曲竹を刈り取る。
- 2
竹割り
竹を縦に4つに割り、丈夫な外側の層を切り出す。
- 3
ひご作り
編む部位に合わせて、厚さや幅をそろえた竹ひごに整える。
- 4
編み
竹ひごを編み上げ、ざるやかごの形を作る。
- 5
縁付け・仕上げ
縁や持ち手を取り付け、形を整えて仕上げる。
| 主な産地 |
|
|---|
職人・工房
井上竹細工店
戸隠神社中社の門前で代々竹細工を営む店。そばざるや椀籠などの伝統的な品に加え、少ない材料で作れ、若い世代も手に取りやすい竹細工のコーヒードリッパーなどの開発にも取り組んでいる。
公式サイト →中社竹細工生産組合
戸隠の竹細工職人でつくる産地団体で、長野県が「信州竹細工」の産地組合として案内している。戸隠竹細工センターと同じ所在地に連絡先を置き、根曲竹の竹細工の生産と継承に取り組んでいる。
購入方法
- 井上竹細工店
- 長野市戸隠中社3416にある竹細工店で、ウェブショップでも購入できる。蕎麦ざる(小)は9,500円程度、深ざる(大)は14,000円程度。手仕事のため数に限りがあり、品切れになる場合も多い。購入先を見る →PR
- 戸隠竹細工センター
- 戸隠神社奥社の参道入口近くにある施設で、そばざるやかごなど多種多様な戸隠竹細工を取りそろえている。竹細工の工程を見学することもできる。営業は4月下旬から11月中旬までで、期間中は無休。購入先を見る →PR
体験施設
よくある質問
Q. 戸隠竹細工と戸隠そばにはどんな関わりがありますか?
A. 戸隠そばは、根曲竹で編んだざるに盛って出されるのが定番です。水切れが絶妙で、そばの食感や風味を引き立てます。戸隠のそば店で使われる器もこの竹細工の技術で作られており、そばと竹細工は門前の暮らしを支える二つの伝統になっています。
Q. 竹細工を長く使うにはどうすればよいですか?
A. 洗うときは網目に沿ってやさしく洗い、陰干しでしっかり乾かします。丁寧に使えば何十年も使い続けることができ、年月とともに色が深まり、艶やかな飴色に変わっていきます。親から子、孫へと受け継がれる道具でもあります。