
丹波立杭焼(たんばたちくいやき)は、兵庫県丹波篠山市今田町の立杭地区を中心に焼かれている陶器で、一般には「丹波焼」とも呼ばれます。発祥は平安時代末期から鎌倉時代初めといわれ、瀬戸・常滑・信楽・越前・備前と並ぶ「日本六古窯」の一つに数えられます。中世は穴窯で壺や甕を焼き締めていましたが、江戸時代初めの慶長16年(1611年)ごろに登窯が導入され、同じころ左回転の「蹴ロクロ」も取り入れられました。登窯で焼くと、松薪の灰が器に降りかかって釉薬と溶け合い、一つひとつ異なる色や模様が生まれます。この窯変(かまの中で起こる色や質感の変化)の多彩さから、「丹波の七化け」とも呼ばれます。立杭の里には今も50軒ほどの窯元が集まり、日常の器から花器・茶器まで幅広く作っています。1978年(昭和53年)に「丹波立杭焼」の名で国の伝統的工芸品に指定されました。
発祥
丹波焼の発祥は、平安時代の終わりから鎌倉時代の初めとされます。兵庫県は、800年以上の歴史を持つ日本六古窯の一つとして紹介しています。当初は山の斜面を掘った穴窯で焼かれ、紐状の粘土を積み上げて形を作る「紐土巻き上げ」の技法で、釉薬をかけない壺や甕、すり鉢などが主に作られました。古くは「小野原焼」と呼ばれていたとされ、登窯で大量生産が可能になると「丹波焼」の名が広まりました。
歴史
穴窯の時代は桃山時代の末まで約400年続きました。慶長16年(1611年)ごろに朝鮮式の半地上式登窯が導入され、蹴ロクロや釉薬も使われるようになります。寛永年間(1624〜1644年)ごろからは鉄分の多い泥を塗る「赤土部」が約100年にわたって用いられました。江戸時代には上方(京都・大坂)向けに茶入や水指などの茶陶も焼かれ、後期には白い化粧土をかけた「白丹波」も生まれています。1978年に国の伝統的工芸品に指定されました。
特徴
丹波立杭焼の魅力は、登窯の炎と灰が生み出す素朴で力強い風合いです。長時間の焼成で松薪の灰が器に降りかかり、釉薬と溶け合って緑や茶の自然な景色をつくります。これを「灰かぶり」(窯の中で薪の灰が降りかかってできる模様)と呼びます。ロクロは日本では珍しい左回転の蹴ロクロが伝わります。釘彫りや印花、筒描きなどの装飾技法も多彩で、同じ窯で焼いても一点ごとに表情が異なります。
技法
登窯(蛇窯)焼成
山の傾斜を利用し、8〜9の焼成室を連ねた登窯で焼く。細長い姿から地元では「蛇窯」と呼ばれる。火の通りがよく、穴窯に比べ焼成時間が3分の1程度で済むため量産に向く。近年は焼成室4つほどのミニ登窯が主流である。
蹴ロクロ
登窯の導入と同じころ取り入れられた足で蹴って回すロクロ。日本では珍しい左回転(反時計回り)で、立杭独特の技法とされる。これにより紐土巻き上げから、ロクロで器形を挽き上げる作り方へと移った。
装飾技法
江戸時代以降、灰釉や赤土部釉などの釉薬が使われるようになった。器の表面には、釘彫り、木の葉を押し当てる葉文、印花、流し釉、筒描き、墨流しなどの技法で模様を施す。釉薬と窯変の組み合わせで多様な表情が生まれる。
使用される素材
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職人・工房
市野伝市窯
丹波篠山市今田町上立杭の窯元。先代の市野伝市が山野草用の鉢を手がけたのを機に、約60年前から本格的に植木鉢を作り始めた。土と砂の配合や厚みを工夫し、水はけと通気性を高めた「伝市鉢」で知られ、アパレルブランドとの協業でも話題になった。
昇陽窯
丹波篠山市今田町下立杭の窯元。大上裕樹が営み、隣接する空き工房を改修したギャラリー兼工房を開いた。音楽ライブなど異分野との交流にも取り組み、工房に泊まって土づくりから作陶を体験する宿泊プランも展開している。
公式サイト →購入方法
- 丹波伝統工芸公園 立杭陶の郷(窯元横丁)
- 丹波篠山市今田町上立杭3にある丹波焼の拠点施設。「窯元横丁」では約50軒の窯元の作品を一度に見比べて購入できる。営業は10時〜17時で、火曜(祝日は営業)と年末年始が休み。公式サイトでは2026年4月から入園料を無料化すると案内している。購入先を見る →PR
- 丹波焼陶器まつり「秋の郷めぐり」
- 毎年秋に立杭一帯で開かれる丹波焼の祭り。会場は立杭陶の郷や各窯元、兵庫陶芸美術館などで、陶の郷では「焼き物うつわ市」が開かれ、各窯元でも催しを行う。2026年は10月9日〜18日の開催で、前年は約3万800人が訪れた。
体験施設
立杭陶の郷 陶芸教室
兵庫県丹波篠山市今田町上立杭3
手でこねて皿や湯呑を作る「粘土細工」と、器に絵を描く「絵付け」が選べる。料金は粘土細工が2,420円程度〜(500g)、絵付けが1,320円程度〜。焼成は窯元が行い、完成品は後日送付(送料別)。受付は10時〜15時30分で、20名以上は要予約。
詳細を見る →よくある質問
Q. 「丹波焼」と「丹波立杭焼」は違うものですか?
A. 同じ焼き物を指します。一般には「丹波焼」と呼ばれ、国の伝統的工芸品には「丹波立杭焼」の名で指定されています。立杭は窯元が集まる丹波篠山市今田町の地名です。
Q. 古い登窯を見ることはできますか?
A. 立杭陶の郷の近くに、明治28年(1895年)に築かれた全長約47mの「丹波焼立杭登窯」が残ります。現存する立杭最古の登窯で、兵庫県の有形民俗文化財に指定されています。