駿河漆器(するがしっき)は、静岡市で作られている漆器です。江戸時代の寛永年間、静岡浅間神社の造営のために全国から腕のよい漆塗職人が集まりました。造営後も静岡に残った職人たちが技を伝えたことで、漆器づくりが根付いたといわれます。最大の特徴は「変わり塗(かわりぬり)」です。漆塗りの基本技術を応用し、さまざまな材料や技法を用いて独特の模様や手触りを表します。大正時代に考案された「金剛石目塗(こんごういしめぬり)」は、下地に川砂を使う技法で、静岡県の無形文化財に指定されています。幕末から明治にかけて万国博覧会に出品されて海外でも評価され、やがて輸出漆器の一大産地となりました。現在は静岡県郷土工芸品に指定され、2007年には静岡市で初めての地域団体商標に登録されています。
発祥
静岡と漆の関わりは古く、弥生時代の登呂遺跡からは漆を塗った琴が出土しています。今川氏の時代には、御器屋町(ごきやまち)で「中川大工」と呼ばれる職人集団が漆椀を作っていました。江戸時代の寛永年間には、静岡浅間神社の造営のため全国から優れた漆塗職人が集められ、総漆塗りの拝殿が完成します。造営後も静岡に残った職人たちが、漆器産業の基礎を築きました。
歴史
江戸時代の駿河漆器は、竹籠に漆を塗った簡単な日用品などが中心でした。慶応3年(1867年)のパリ万国博覧会には漆塗りの箪笥を出品し、明治6年(1873年)のウィーン万国博覧会でも受賞します。明治から大正にかけては変わり塗や蒔絵の製品が次々と生まれ、輸出漆器の大部分を占めるほどになりました。第一次世界大戦で欧州との貿易が途絶えると、塗下駄づくりに転じる職人も現れます。戦後は洋塗装への転換も進みましたが、変わり塗の技は今も受け継がれています。
特徴
駿河漆器の特徴は、多彩な「変わり塗」にあります。錫粉(すずふん)で金色を表す錫梨子地塗(すずなしじぬり)や、アルミ粉を混ぜて深みのある模様を磨き出す珊瑚塗(さんごぬり)などが知られます。刀剣の研師(とぎし)から漆器商に転じた磯谷利三二は、変わり塗の開発に力を尽くした人物とされます。重箱や椀、盆、箸、花器、菓子器など、暮らしの道具が多く作られています。
技法
金剛石目塗(こんごういしめぬり)
大正13年(1924年)に、静岡市の鳥羽清一が考案した塗りです。漆器の下地に川砂を用い、生漆と交互に塗り固めて堅牢な下地層を作ります。熱や水、酸に強い器に仕上がるのが特長です。他の漆器産地に類例のない技法として、2015年に静岡県の無形文化財に指定されました。
蜻蛉塗(とんぼぬり)
水面に流してできた文様を器の表面に写し取り、粉を蒔いた上から漆を塗る技法です。流れるような模様は偶然に生まれるため、一つとして同じ表情のものはありません。駿河漆器の変わり塗を代表する技法の一つです。
使用される素材
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職人・工房
購入方法
- 鳥羽漆芸 オンラインショップ
- 静岡県の特産品を扱う通販サイトに出店しており、漆塗りのワイングラスやロックグラス、酒盃などを購入できます。価格は5,000円程度からです。グラスは、金剛石目塗の技法を生かして仕上げられています。購入先を見る →PR
- 駿府楽市
- JR静岡駅のASTY静岡西館にある、静岡の工芸品や特産品を扱う売店です。静岡市が駿河漆器の購入先として案内しており、漆の製品を扱っています。竹千筋細工や染めものなど、市内のほかの工芸品もあわせて見比べられます。
体験施設
駿府の工房 匠宿
静岡県静岡市駿河区丸子3240-1
「工房 木と漆」で駿河漆器にちなんだ漆の体験ができます。漆塗りのボールペンは1,500円程度、貝を蒔いた漆の層を砥石で研いで模様を出す「漆研ぎ 粉貝箸」は2,600円程度です。WEBでの事前予約が勧められています。
詳細を見る →よくある質問
Q. 変わり塗とは何ですか?
A. 漆塗りの基本技術を応用し、砂や金属粉、箔などさまざまな材料と技法を組み合わせて、独特の模様や質感を表す塗りの総称です。駿河漆器では金剛石目塗や蜻蛉塗、珊瑚塗など多くの種類が生み出され、産地の最大の特徴となっています。
Q. 駿河漆器は国の伝統的工芸品ですか?
A. 国の伝統的工芸品の指定は受けていませんが、静岡県郷土工芸品に指定されています。2007年には「駿河漆器」が地域団体商標に登録されました。また、技法の一つである金剛石目塗は、静岡県の無形文化財に指定されています。