桜井漆器

Sakurai Shikki (Sakurai Lacquerware)

桜井漆器 1

画像: Wikimedia Commons

桜井漆器(さくらいしっき)は、愛媛県今治市の桜井地区で作られている漆器です。始まりは製造ではなく販売で、江戸時代後期、桜井の商人が紀州黒江(現在の和歌山県海南市)の漆器を船で仕入れ、九州などで売り歩いたことにさかのぼります。この漆器の行商船は「椀舟(わんぶね)」と呼ばれ、行商人は各地で「椀屋さん」と親しまれました。やがて地元でも漆器が作られるようになり、重箱の四隅を櫛の歯のようにかみ合わせる「櫛指(くしざし)」の技法で、丈夫な漆器として知られるようになりました。良質な檜(ひのき)の木地に漆を重ね塗りし、蒔絵(まきえ)や沈金(ちんきん)で仕上げます。行商先で始まった掛け売りや月賦販売は、今日のクレジット商法の起源ともいわれます。愛媛県の伝統的特産品で、今治市の伊予桜井漆器会館で製品を手に取って選べます。

発祥

1765年(明和2年)、桜井地方の大部分が松山藩領から幕府の直轄地(天領)になり、年貢米を運ぶ廻船業者が生まれました。19世紀前半には、大坂の商人の勧めで紀州黒江の漆器を仕入れるようになります。春は唐津・伊万里の焼き物を関西で売り、帰りに仕入れた漆器を秋に九州で売る「混合行商」を経て、漆器だけを扱う椀舟行商へ移っていきました。

歴史

天保年間(1830〜1844年)ごろ、地元で作るほうが利益が大きいとして、桜井で漆器の製造が始まったとされます。1828年(文政11年)の製造記録を挙げる資料もあり、始まりの時期や創始者には諸説あります。明治時代には他の産地から職人を招いて品質を高め、大正中期には400人を超える行商人がいたとされます。その後は陸上交通の発達や素材の変化で衰え、昭和初期には規模が大きく縮小しました。

特徴

良質な檜を木地に使い、漆を何度も丁寧に塗り重ねて仕上げます。製造が始まった当初は、木目を生かす春慶塗(しゅんけいぬり)の技法で作られていたとされます。代表的な品は重箱で、櫛指で角を補強した丈夫な作りが評価されてきました。現在も、全国の漆器産地の中では手頃な価格の品が多いと紹介されています。

技法

櫛指(くしざし)

重箱の中で最も壊れやすい四隅に、櫛の歯のような凹凸を作り、互いにかみ合わせて接合する技法です。月原久四郎が考案したとされ、天保年間に確立しました。この技法によって、堅牢で手頃な桜井漆器として全国に知られるようになりました。

蒔絵・沈金

漆を塗り重ねた器の表面に、加飾を施して仕上げます。蒔絵は漆で描いた文様に金粉などをまく技法で、沈金は表面に文様を彫り、金箔などを埋め込む技法です。桜井漆器では、この両方が用いられています。

使用される素材

檜(ひのき)漆金粉・金箔
主な産地
  • 今治市桜井地区

職人・工房

伊予桜井漆器会館

1989年(平成元年)に開館した、桜井漆器の製造・販売を手がける会社です。代表の鳥井亮良さんの先祖は、和歌山で漆器に携わっていたと紹介されています。職人の高齢化を課題とし、他産地との連携も視野に入れて伝統の継承に取り組んでいます。

購入方法

伊予桜井漆器会館
多数の漆器を展示販売しており、商品が陳列ケースに入っていないため、直接手に取って選べます。全国の産地の中でも手頃な価格の商品が多いと紹介されています。入館は無料です。購入先を見る →PR

体験施設

伊予桜井漆器会館

愛媛県今治市長沢甲340-1

製造工程の見学ができ、併設の喫茶「花ぬり」では漆器で飲み物や料理を味わえます。旅行予約サイトでは、絵付け体験のプランが1人3,800円からと紹介されています。営業は10時〜18時、火曜定休(祝日の場合は翌日)です。

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よくある質問

Q. 「椀舟」とは何ですか?

A. 漆器を積んで各地を売り歩いた行商船のことです。親方と5〜6人の売り子、船頭が乗り込み、西日本各地を回りました。売り子の多くは桜井周辺の農民で、収入は売れた量と価格で決まったとされます。

Q. 桜井漆器と月賦販売にはどんな関係がありますか?

A. 椀舟の主な顧客は農村で、初めは現金で売っていましたが、収穫後の掛け売りや半年払い、月賦販売へと移りました。集金のための店が各地に置かれ、月賦百貨店へ発展したとされます。桜井出身の実業家・田坂善四郎が月賦販売の方法を考案したとも伝わります。

Q. 紀州黒江とはどんな関係があったのですか?

A. 生産量の多い黒江は、桜井の行商人にとって最大の仕入れ先でした。最盛期には、伊予商人の動きが黒江の景気を左右するとまでいわれたとされます。黒江と九州の直接取引が進むと行商は衰え、1942年(昭和17年)を最後に黒江の伊予問屋も姿を消しました。

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