堺打刃物

Sakai Uchihamono (Sakai Forged Knives)

堺打刃物 1

画像: Wikimedia Commons

堺打刃物(さかいうちはもの)は、大阪府堺市を中心に作られている包丁や鋏などの刃物です。16世紀にポルトガルから鉄砲とたばこが伝わると、堺ではたばこの葉を刻む「たばこ包丁」が作られるようになりました。江戸幕府はその品質を認め、「堺極(さかいきわめ)」の極印を打って売ることを許したとされます。これが全国に名を広め、やがて出刃包丁などの料理包丁へと発展しました。製作は、刃の形を打ち出す「鍛造」、刃を研ぎ上げる「刃付け(研ぎ)」、柄をすげる「柄付け」の分業で行われます。軟らかい地金に硬い刃金を鍛接した包丁は、折れず曲がらずよく切れるといわれます。プロの料理人が使う和包丁では、国内シェアの約9割を占めるともいわれます。1982年(昭和57年)に国の伝統的工芸品に指定されました。

発祥

堺の鍛冶の技術は、古墳時代に巨大な古墳を築くための道具づくりにさかのぼるとも語られます。16世紀中ごろに鉄砲が伝わると、堺は鉄砲の一大産地となりました。その後ポルトガルからたばこも伝わり、16世紀後半には、たばこの葉を刻む「たばこ包丁」が堺で作られるようになります。大阪府は、安土桃山時代にたばこ包丁の製造が始まったと紹介しています。

歴史

江戸幕府は堺のたばこ包丁に「堺極」の極印を与えて専売を認め、その切れ味は全国に知られました。その後、出刃包丁や料理包丁が作られるようになります。出刃包丁の登場時期は、江戸時代初期とする資料と中期とする資料があります。江戸時代後期には生花鋏や植木鋏も作られ、専業者が株仲間を組んで産地を形づくりました。1982年に国の伝統的工芸品に、2007年に地域団体商標に登録されています。

特徴

堺打刃物は、軟らかい鉄の地金と、炭素を多く含む刃金(はがね)を鍛接して作るのが基本です。焼入れで硬くなった刃先を軟らかい地金が支えるため、折れず曲がらずよく切れるとされます。片刃の和包丁が中心で、柳刃(刺身包丁)や出刃など用途ごとに多くの種類がそろいます。鍛冶・研ぎ・柄付けを別々の職人が担う分業制が今も続き、1本の包丁に何人もの職人の手が入ります。

技法

鍛造(火造り)

地鉄の上に刃金を重ね、約900度で熱して打ち合わせる「先付け」から始まる。打ち延ばして形を整え、なまし、荒たたきを経て、750〜800度から水で急冷する焼入れ、180〜200度での焼戻しで硬さと粘りを与える。

刃付け(研ぎ)

鍛冶屋から届いた刃を、荒研ぎ、本研ぎ、裏研ぎ、小刃合わせへと段階的に研ぎ上げる。伝統工芸 青山スクエアは、歪み取りや霞ぼかしを含めて27の工程があると紹介している。伝統的工芸品の基準では、刃付け・研ぎ・仕上げは手作業と定められている。

本焼き

地金を合わせず、刃物鋼だけで作る包丁。焼入れの前に「土置き」をして急冷するため、割れや反りが出やすく高度な技が求められる。地金と刃金を合わせる包丁では、代わりに「泥塗り」をして焼入れする。

使用される素材

炭素鋼(刃金)軟鉄(地金)木材(柄)

制作工程

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    鍛造

    鋼材を切り、熱して地金と刃金を鍛接する。ベルトハンマーなどで打ち延ばして包丁の形にし、なまし・荒たたきで組織を締める。

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    焼入れ・焼戻し

    泥を塗って乾かした刃を炉で熱し、水で急冷して硬くする。さらに低い温度で熱して自然に冷まし、刃に粘り強さを持たせる。

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    刃付け(研ぎ)

    回転する大きな砥石で荒研ぎと本研ぎを行い、タガネで歪みを直す。裏研ぎで裏のくぼみを整え、小砥石で最後の刃を付ける。

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    柄付け

    包丁の根元にある中子(なかご)を熱して木の柄に差し込み、後端を木槌で叩いて固定する。最後に銘を切って仕上げる。

主な産地
  • 堺市(堺区を中心とする旧市街一帯)
  • 大阪市

職人・工房

水野鍛錬所

堺市堺区桜之町西にある、明治5年(1872年)創業の鍛冶屋。昔ながらのふいごのある工場で、包丁の鍛造や刀の鍛錬を行う。法隆寺の解体修理で小鍛冶に選ばれ、五重塔の魔除け鎌と同じものを店内に展示している。

公式サイト →

芦刃物製作所

堺市堺区並松町の刃物メーカー。機械技術と職人の手仕事を組み合わせ、料理包丁を中心にカスタムナイフや篆刻刀も手がける。焼入れから研ぎ、柄付け、検品までを自社で一貫して行う。予約制で製造工程の見学を受け付けている。

公式サイト →

購入方法

堺伝匠館(堺伝統産業会館)
堺市堺区材木町西1丁1-30にある、堺の伝統産業を集めた施設。1階のショップで包丁や砥石を販売し、2階の堺刃物ミュージアムでは歴史や製造工程を紹介する。入館無料で、第3火曜日(祝日の場合は翌日)と年末年始は休館。購入先を見る →PR
鍛冶屋・刃物店での購入
水野鍛錬所や芦刃物製作所など、工房を兼ねた刃物店で直接購入できる。藤井刃物製作所(堺区北旅籠町西)では、家庭用の文化包丁や出刃包丁を5,000〜2万円程度で販売している。見学は多くが予約制。

体験施設

和田商店 包丁づくり体験(研ぎ・柄付け)

大阪府堺市堺区神明町東1-1-1

創業約150年の刃物店で、職人の指導を受けながら研ぎと柄付けを体験し、仕上げた包丁を持ち帰れる。ペティ・出刃・刺身・万能包丁から選べ、所要90〜120分程度。料金は掲載媒体により1万2,000〜1万8,000円程度と幅がある。要予約。

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よくある質問

Q. なぜ堺の包丁はプロの料理人に選ばれるのですか?

A. 柳刃や出刃など、和食の調理に合わせた片刃の包丁が数多くそろうためです。鍛冶・研ぎ・柄付けの職人が分業し、それぞれの工程を突き詰めてきたことも理由とされます。料理人の細かな要望に応える研ぎ師もいて、プロ用の和包丁では約9割のシェアを持つといわれます。

Q. 「堺極」とは何ですか?

A. 江戸幕府が堺のたばこ包丁に与えた品質証明の極印です。この印を打った包丁は専売が認められ、堺の刃物の名声が全国に広がるきっかけになりました。

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