根来塗

Negoro Nuri (Negoro Lacquerware)

根来塗 1

画像: Wikimedia Commons

根来塗(ねごろぬり)は、和歌山県岩出市の根来寺(ねごろじ)にゆかりのある朱塗りの漆器です。黒漆で下塗りをした上に朱漆を塗って仕上げます。長く使ううちに表面の朱がすり減り、下の黒がところどころに現れて、独特の模様になるのが魅力です。中世の根来寺で、僧たちが寺で使う食器や什器、仏具を作ったのが始まりと伝わります。1585年(天正13年)、豊臣秀吉の根来攻めで寺の大半が焼け、根来での漆器づくりは途絶えました。職人は各地に移って技法を伝えたとされ、「根来」は上質で丈夫な朱漆器を指す呼び名にもなりました。地元では1993年、当時の岩出町が復興事業として職人の養成講座を開き、技が再び受け継がれています。2007年(平成19年)には「根来寺根来塗」として、和歌山県知事指定の郷土伝統的工芸品になりました。

発祥

根来寺は、平安時代後期に高野山で活動した覚鑁(かくばん)を祖とする寺院です。1288年(正応元年)に頼瑜(らいゆ)が大伝法院の寺籍を根来へ移し、新義真言宗の本拠となりました。根来塗は、この寺の僧が日々の食器や什器、仏具を自ら作ったことに始まると伝わります。黒と朱の漆を重ねた器は、寺の暮らしの道具として生まれました。

歴史

室町時代の根来寺は、坊舎450(一説に2,700)を数える宗教都市に成長しました。しかし1585年、秀吉の根来攻めで大師堂や大塔などを残して焼け落ち、職人は海南の黒江や輪島などへ移ったとされます。明治の廃仏毀釈で寺の器が世に出ると、朱がすれた古い根来は美術品として評価されました。地元では1993年に復興の養成講座が始まり、2007年に県の指定を受けています。

特徴

根来塗は、文様を描かない簡素な朱塗りの器です。黒漆の上に朱漆を塗り、使い込むほど朱がすれて下の黒が浮かび上がります。この朱と黒のまだらな景色は、茶人にも好まれてきました。全26工程のうち19工程を下地の処理に充てるといわれ、下地を何度も重ねることで丈夫に仕上がります。朱を塗らず黒漆のままのものは「黒根来」と呼ばれます。

技法

下地づくり

根来塗の丈夫さを支える工程。全26工程のうち19工程が下地の処理とされ、漆の下地を何度も重ねて木地を固める。岩出市の池ノ上辰山は2025年、この全工程を一つずつ示した制作工程見本を作った。

黒漆と朱漆の重ね塗り

堅牢な下地の上に黒漆を塗り、最後に朱漆を一度だけ塗って仕上げる。朱の層が薄いため、使ううちに朱がすれて黒が現れる。この経年変化こそが根来塗の見どころである。

研ぎ出し

仕上げた朱の表面を研いで、所々に黒をのぞかせる技法。長年使われた古い根来の風合いを、新しい器で意図的に再現するために行われる。

使用される素材

木材(木地)黒漆朱漆
主な産地
  • 岩出市(根来)

職人・工房

伊藤惠(紀州根来塗初根工房)

岩出市生まれの根来塗師。奈良芸術短期大学で日本画を学び、1993年に始まった岩出町の根来塗指導員養成講座を受講した。根来寺の境内に紀州根来塗初根工房を開き、制作のかたわらワークショップも開いている。

池ノ上辰山

1959年生まれ、岩出市の根来塗の作り手。全26工程を一つずつ示した「根来塗制作工程見本」を2025年に完成させ、岩出市民俗資料館に収めた。同年に大阪で開かれた特別展「NEGORO 根来-赤と黒のうるし」でも紹介された。

購入方法

道の駅 ねごろ歴史の丘「花笑み館」
岩出市根来2020-1にある道の駅の物販施設。根来塗をはじめ、和歌山県内の土産物をそろえる。物販は10時〜18時。根来寺や岩出市民俗資料館の近くにあり、見学と合わせて立ち寄りやすい。
紀州根来塗初根工房
根来寺の境内にある伊藤惠の工房。2022年の販売例では、朱の碗や片口が6万6,000円、盃が2万900円程度〜で、黒檀の箸も扱っていた。工房ではワークショップも開かれている。

体験施設

岩出市民俗資料館(根来塗工房)

和歌山県岩出市根来2306-1

根来塗工房があり、水・土曜には製作工程を見学できる。根来塗の公開講座も開かれている。入館無料で、開館は9時〜16時30分、火曜休館(祝日は開館)。2025年には池ノ上辰山の制作工程見本も収められた。

よくある質問

Q. 朱がはげて黒が見えてくるのは傷みですか?

A. いいえ。黒漆の上に朱漆を塗る根来塗では、使ううちに朱がすれて黒が現れるのが持ち味です。この朱と黒の景色は古くから茶人に好まれ、新しい器でも研ぎ出しで再現されます。

Q. 「根来塗」は根来寺で作られたものだけを指すのですか?

A. もとは根来寺の朱漆器を指しましたが、後には時代や産地を問わず、上質で丈夫な朱漆器の総称としても使われるようになりました。岩出市で作られるものは「根来寺根来塗」として県の指定を受けています。

Q. 根来塗と紀州漆器にはどんな関係がありますか?

A. 1585年の根来攻めの後、根来の職人が海南市黒江に移ったという説があり、紀州漆器は根来塗の流れをくむともいわれます。ただし、紀州漆器の起源には近江系の木地師に始まるという説もあります。

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