奈良晒は、奈良を中心に生産されてきた高級麻織物です。室町時代後期の記録である「多聞院日記」の天文18年(1549年)の記述に晒しに関する言及が見られ、江戸時代の慶長16年(1611年)には徳川家康の命により、晒された麻布の端に「南都改」の朱印が押されたものでなければ販売できない仕組みが整えられ、幕府御用達の品として全国に流通しました。享保年間(1716〜1735年)には「麻の最上は南都なり」と称されるほど名声を高め、年間30万〜40万疋もの生産量を誇ったと伝えられています。苧麻(ちょま)を手で績んだ糸を用い、機で織り上げた布を晒して純白に仕上げる工程はすべて手作業で行われ、僧侶の袈裟や武士の裃、茶巾など格式の高い品に用いられてきました。明治以降は需要の変化とともに生産規模を大きく縮小させましたが、江戸時代創業の老舗織元が今も手仕事によってその技術を伝えています。
発祥
奈良における麻織物の歴史は古く、戦国時代の記録である「多聞院日記」の天文18年(1549年)の記述に晒しに関する言及があり、室町時代後期にはすでに麻織物の生産が行われていたと考えられています。慶長16年(1611年)には徳川家康の命により、奈良で晒された麻布の端に「南都改」の朱印を押すことが定められ、この印のない晒は販売を禁じられました。これにより奈良晒は幕府の統制のもとで品質を保証された特産品としての地位を確立しました。
歴史
享保年間(1716〜1735年)には「麻の最上は南都なり」と称されるほどの名声を得て、年間30万〜40万疋ともいわれる生産量を誇り、奈良の一大産業となりました。武士の裃や僧侶の袈裟、茶道具の茶巾など格式ある品として重用され、幕府から諸大名への贈答品にも用いられたと伝えられます。明治以降は洋装の普及や産地間競争により生産は大きく縮小しましたが、文久3年(1863年)創業の織元をはじめ、手仕事による生産が今日まで受け継がれています。
特徴
奈良晒の特徴は、苧麻の繊維を手で績んで糸とし、手機で織り上げた生地を晒して純白に仕上げる、すべて手作業による丁寧な工程にあります。麻特有の張りと涼感を持ちながらしなやかな風合いに仕上がり、汗を吸ってもべたつかず、使うほどに肌になじむとされています。かつては袈裟や裃、茶巾などの格式高い品に用いられましたが、現在は暖簾やふきん、衣類など日常づかいの品にもその技術が生かされています。
使用される素材
制作工程
- 1
糸づくり
苧麻(からむし)の繊維を爪先で細く裂き、指先で撚りをかけながら一本ずつ糸につないでいく。熟練の績み手でも糸をそろえるのに約1か月を要する根気のいる工程である。
- 2
織布
撚りをかけた経糸と撚りをかけない緯糸を組み合わせ、手機を使って平織りに織り上げていく。熟練の織り子でも1疋(約24メートル)を織り上げるのに10日ほどかかる。
- 3
晒し
織り上がった生地を天日にさらしたり灰汁で煮たりを繰り返し、繊維に残る不純物や色素を取り除くことで、独特の柔らかさとまばゆいばかりの純白を引き出す。
職人・工房
岡井麻布商店(麻布おかい)
文久3年(1863年)創業の奈良晒織元。苧麻の手績みから手織り、晒しまで一貫して手作業で行い、現在の当主まで代々技術を継承しながら、暖簾やふきんなど現代の暮らしに合う商品づくりにも取り組んでいる。
公式サイト →購入方法
- 麻布おかい オンラインショップ
- 奈良晒の老舗織元・岡井麻布商店の直営店。手織りの麻ふきんや暖簾、衣類、雑貨などをオンラインストアでも購入でき、奈良晒ならではの張りとしなやかさを日常で楽しむことができる。購入先を見る →PR
- 中川政七商店
- 享保元年(1716年)に奈良晒の商いから創業した老舗。現在は麻を中心とした生活雑貨を全国の直営店やオンラインストアで販売し、奈良晒発祥の企業として麻の魅力を発信し続けている。購入先を見る →PR
体験施設
麻布おかい
奈良県奈良市橋本町7-1
奈良晒の手織り体験(ティーマット製作)を実施。料金は1,980円(税別)程度、所要時間は約30分。職人に教わりながら約20cm幅の麻生地を織り、そのまま持ち帰ることができる。
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