
宮城伝統こけしは、江戸時代末期に東北地方の温泉地で子どもの土産物として生まれた木地玩具「こけし」のうち、宮城県内で育まれた4つの系統――鳴子系・遠刈田系・弥治郎系・作並系――を総称する呼び名です。1981年(昭和56年)6月22日に経済産業大臣指定の伝統的工芸品となりました。遠刈田こけしは文政年間(1818~1830年)にはすでに作られていたとされ、こけし発祥の地の有力候補とされる一方、近年は仙台市作並温泉を起源とする説も注目されています。頭部を胴にきつく差し込んで首を回すと音が鳴る鳴子系、大きな頭に赤い髪飾りを描く遠刈田系、ベレー帽のようなろくろ模様が特徴の弥治郎系、かに菊模様の作並系。系統ごとに形状や描彩がまったく異なる点が、宮城伝統こけしの大きな魅力です。今も各温泉地では工人が一本一本を手作業で挽き、素朴で温かみのある表情を今に伝えています。
発祥
こけしは江戸末期、東北地方の温泉地で湯治客向けの土産物・子どものおもちゃとして誕生したと伝えられます。宮城県内では遠刈田温泉(蔵王町)が文政年間(1818~1830年)にはすでにこけし作りを行っていたとされ、発祥地の有力候補です。一方、近年の研究では仙台市作並温泉の木地師の技術がすべての系統の源流にあたるとする説も浮上しており、こけしの起源をめぐる議論は今も続いています。
歴史
明治以降、鳴子・遠刈田・弥治郎・作並の各温泉地で工人が世襲や師弟関係を通じて技術を継承し、系統ごとに独自の様式を確立しました。昭和に入るとこけしブームや民芸運動を経て収集の対象としても人気を集め、1981年6月22日には宮城伝統こけしとして国の伝統的工芸品に指定されました。現在も各産地で工人が手挽きの技術を守りながら、新しい意匠にも挑戦しています。
特徴
宮城伝統こけしは系統ごとに形状・描彩が大きく異なる点が特徴です。鳴子系は頭を回すとキイキイと鳴る差し込み構造と重ね菊模様、遠刈田系は大きな頭と赤い髪飾り・八の字状の飾り、弥治郎系はベレー帽のようなろくろ模様の頭部、作並系はかに菊と呼ばれる模様の細い胴が持ち味です。同じ「こけし」でも産地ごとにまったく違う表情を見せる多様性が、宮城伝統こけし最大の見どころとなっています。
技法
鳴子系
大崎市鳴子温泉発祥。頭部を胴にきつくはめ込み、回すと「キイキイ」と音が鳴る構造が特徴。裾がくびれた安定感のある胴に、重ね菊や菱菊など華やかな花模様を描く。約50人の工人が現在も活動しており、桜井こけし店など老舗が技術を継承している。
遠刈田系
蔵王町遠刈田温泉発祥で、こけし発祥の有力候補地とされる。大きな頭に細くまっすぐな胴を組み合わせ、額から頬にかけての赤い髪飾りや八の字状の飾りを描く。菊や梅を重ねた華やかな模様が特徴で、文政年間にはすでに作られていたと伝わる。
弥治郎系
白石市弥治郎地区で発達。頭部はさし込み式で、ろくろで幾重にも線を描いた模様がベレー帽のように頭頂部を彩る。胴はくびれのあるものと寸胴のものがあり、全体に色彩豊かでポップな印象を与える。
作並系
仙台市作並温泉発祥。細い棒状の胴と小さな頭を持つタイプと、安定感のある台状の裾を持つタイプに大別される。「かに菊」と呼ばれる愛らしい模様の描彩が特徴で、現在は平賀こけし店の平賀輝幸氏が唯一の担い手となっている。
使用される素材
制作工程
- 1
木取り
乾燥させた原木を、こけしの寸法に合わせて切り分ける。
- 2
荒挽き
ろくろを使い、頭部と胴体のおおまかな形を削り出す。
- 3
仕上挽き
刃物で細部を整え、系統ごとの形状に応じた滑らかな曲線に仕上げる。
- 4
描彩
筆と染料を使い、系統ごとに定まった表情や模様を描き込む。
- 5
組付け
頭部と胴体を組み合わせ、ろうで磨き上げて艶を出し完成させる。
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職人・工房
購入方法
- 日本こけし館(鳴子温泉)
- 約5,000本の伝統こけしを展示するミュージアムショップ。鳴子系を中心に一点ものの伝統こけしを購入でき、絵付け体験も1,500円で楽しめる。購入先を見る →PR
- みやぎ蔵王こけし館
- 遠刈田温泉にある蔵王町伝統産業会館。工人の実演見学とあわせて遠刈田系こけしを購入でき、絵付け体験は1本1,000円。入館料は大人350円。購入先を見る →PR
体験施設
よくある質問
Q. 宮城伝統こけしとはどのような工芸品ですか?
A. 宮城県内で育まれた鳴子系・遠刈田系・弥治郎系・作並系の4系統の伝統こけしの総称で、1981年に国の伝統的工芸品に指定されました。系統ごとに形状や模様が異なります。
Q. こけし発祥の地はどこですか?
A. 蔵王町の遠刈田温泉が文政年間(1818~1830年)から作られていた記録があり有力候補とされますが、近年は仙台市作並温泉を起源とする説も研究されています。