香川漆器

Kagawa Shikki (Kagawa Lacquerware)

香川漆器 11 / 2

画像: Wikimedia Commons

香川漆器(かがわしっき)は、香川県高松市を中心に作られている漆器です。香川県の資料によると、江戸時代に高松藩主の松平家が、茶道や書道とあわせて漆芸を振興・保護したことが始まりとされます。江戸後期には、香川漆器の始祖といわれる玉楮象谷(たまかじぞうこく)が、中国や東南アジアから伝わった技法に独自の工夫を加えました。現在は蒟醤(きんま)、存清(ぞんせい)、彫漆(ちょうしつ)、象谷塗(ぞうこくぬり)、後藤塗(ごとうぬり)の5技法が受け継がれています。1976年(昭和51年)には、国の伝統的工芸品に指定されました。色漆を使った華やかな加飾と、使うほどに艶が増す塗りの両方があり、盆や茶托、菓子器から家具まで作られています。伝統工芸士の認定者は20名(2026年2月時点)です。高松市の讃岐漆芸美術館では、彫漆の体験もできます。

発祥

香川漆器の始まりは、江戸時代に高松藩主の松平家が、茶道や書道に付随して漆芸を振興・保護したことにあるとされます。1642年(寛永19年)に高松へ入った初代藩主の松平頼重も、漆器や彫刻に関心が深かったと伝わります。江戸後期には、鞘塗師(さやぬりし)の家に生まれた玉楮象谷が、家業を継いで漆塗りと彫りの技を身につけました。

歴史

玉楮象谷は京都で唐物漆器に触れ、中国の彫漆・存清や、東南アジアの籃胎蒟醤(らんたいきんま)を研究しました。帰郷後は高松藩の宝物の保存修理に携わりながら技法を確立し、藩主から「玉楮」の姓を与えられたとされます。作品は将軍や大名への贈答品にも用いられました。技法は弟や子に受け継がれ、1954年(昭和29年)には全国初の漆芸の研究施設として香川県漆芸研究所が設けられています。

特徴

大きな特徴は、彫りの技術と色漆を組み合わせた加飾です。朱や黄、緑などの色漆で文様を表すため、色彩が豊かで華やかに仕上がります。一方、象谷塗や後藤塗のように、使い込むほど艶や色合いが変わる落ち着いた塗りもあります。香川県漆芸研究所の山下義人氏、大谷早人氏をはじめ、蒟醤の重要無形文化財保持者(人間国宝)も輩出しています。

技法

蒟醤(きんま)

漆を塗り重ねた器の表面に、蒟醤剣(きんまけん)という刃物で文様を彫ります。その溝に色漆を埋め、表面を研いで平らにすると文様が現れます。名前はタイの「キンマ」に由来するといわれ、香川漆器を代表する技法です。

存清(ぞんせい)

色漆で文様を描き、乾いた後に輪郭や細部を剣で線彫りする技法です。彫り口に金粉や金箔を埋める方法もあります。室町時代に日本へ伝わった技法で、香川県では玉楮象谷が用いた「存清」の表記を使っています。

彫漆(ちょうしつ)

色の異なる漆を数十回から数百回塗り重ねて厚い層をつくり、彫り下げて文様を浮き彫りにします。100回塗り重ねると厚さは約3mmになるとされます。彫りの深さによって下の色の層が現れ、立体感と色の対比が生まれます。

象谷塗(ぞうこくぬり)

漆を塗り重ねた後、水辺に生える真菰(まこも)の粉を蒔き、さらに漆を摺り込んで仕上げる技法です。名前は玉楮象谷にちなみます。落ち着いた色合いで、使い込むほどに艶や陰影が増すとされます。

後藤塗(ごとうぬり)

朱漆を用いる塗りで、「たたき後藤」「撫で後藤」と呼ばれる文様があります。江戸末期の高松藩士・後藤太平が考案したとされ、技法名はその名にちなみます。使うほどに朱の色調が変わっていくのが特徴です。

使用される素材

漆色漆木地竹(網代素地)真菰の粉金粉・金箔

制作工程

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    素地づくり

    器の原型となる素地を作ります。木をろくろで挽いたり、曲げたり削ったりした木地のほか、竹ひごを網代に編んだ素地も使われます。木地を作る職人は木地師と呼ばれ、香川県では後継者不足が課題になっています。

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    下地

    生漆(きうるし)を摺り込んで素地を固め、刻苧(こくそ)と呼ぶ詰め物で編み目やすき間を埋めては研ぐ作業を繰り返します。表面を平らに整え、破損や変形を防ぐための大切な工程です。

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    塗り

    漆を何度も塗り重ねて漆の膜を厚くし、表面を滑らかに整えます。漆刷毛には人の毛髪を漆で固めたものが使われます。彫漆のように、色の違う漆を何十回、何百回と塗り重ねる技法もあります。

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    加飾

    蒟醤・存清・彫漆などの技法で表面を装飾します。文様を彫って色漆を埋めたり、塗り重ねた層を彫り下げたりして、香川漆器らしい色彩豊かな文様に仕上げます。工程ごとに専用の剣や彫刻刀を使い分けます。

主な産地
  • 高松市

職人・工房

一和堂工芸

高松市屋島東町に工房と店舗を構える香川漆器の製造元です。創業はおよそ100年前とされ、盆や菓子器、家具など、伝統的な品から現代的なデザインの品まで手がけています。香川県の伝統的工芸品フェアにも出展しています。

中田漆木(中田陽平)

高松市の讃岐漆芸美術館で体験の窓口を担う漆の工房です。伝統工芸士の中田陽平さんは漆に携わって17年以上の職人で、美術館では中田さんの指導による彫漆体験が案内されています。

購入方法

一和堂工芸(高松市屋島東町)
香川漆器の盆や菓子器、家具などを扱う工房兼店舗です。ことでん古高松駅から徒歩約3分とされます。日曜・祝日が休みで土曜は不定休と案内されているため、訪問前に確認すると安心です。
かがわ物産館 栗林庵
栗林公園の東門横にある香川県の物産館です。香川漆器や高松張子などの伝統的工芸品のほか、讃岐うどんや和三盆なども扱っています。工芸品の品ぞろえは時期によって変わります。
香川の漆器 伝統工芸士まつり
香川県漆器工業協同組合なども主催する展示販売会です。2024年10月には栗林公園商工奨励館で第40回が開かれ、伝統工芸士の作品が並びました。開催時期は年によって異なります。

体験施設

讃岐漆芸美術館

香川県高松市上福岡町2017-4

伝統工芸士の指導で、漆を塗り重ねた小皿に好きな絵柄を彫る彫漆体験などができます。2022年の報道では小皿の彫漆体験が3,000円で、電話(087-802-2010)で予約を受け付けていました。料金はプランにより3,000円程度から5,000円程度まであります。

よくある質問

Q. 香川漆器の「三技法」と「五技法」はどう違いますか?

A. 玉楮象谷が確立した蒟醤・存清・彫漆は「香川の三技法」と呼ばれ、香川県漆芸研究所で保存と継承が進められています。これに象谷塗と後藤塗を加えた5つが、国の伝統的工芸品「香川漆器」の技法です。

Q. 玉楮象谷はどんな人物ですか?

A. 江戸後期から幕末に活躍した高松の漆工で、本名は藤川為造です。藩主の松平頼恕(よりひろ)に製作を命じられて藩に仕え、「玉楮」の姓を与えられたとされます。生年は1805〜1807年と資料により異なり、1869年に没しました。

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