布志名焼

Fujina-yaki (Fujina Pottery of Matsue)

布志名焼 1

画像: Wikimedia Commons

布志名焼(ふじなやき)は、島根県松江市玉湯町で焼かれてきた陶器です。宍道湖の南岸にある布志名の地で、江戸時代中期に舩木与次兵衛村政が窯を開いたのが始まりとされます。その後、松江藩の命で楽山窯から移ってきた土屋善四郎が指導にあたり、品質が高まりました。大名茶人として知られる松江藩7代藩主・松平治郷(不昧)好みの茶道具も焼かれました。黄色い釉薬(黄釉)の上に色絵を施した器が名高く、明治時代には国内だけでなく海外にも販路を広げました。昭和に入ると柳宗悦やバーナード・リーチらの民藝運動に共鳴し、化粧泥で模様を描くスリップウェアなどの技法を取り入れています。現在は舩木窯、雲善窯、湯町窯などがそれぞれの作風で器を作り、島根県ふるさと伝統工芸品にも指定されています。

発祥

布志名焼は、江戸時代中期に舩木与次兵衛村政(与治兵衛とも表記)が窯を開いたのが始まりとされます。開窯の時期については、寛延年間(1748〜1751年)とする説と、明和元年(1764年)とする説があります。その後、松江藩の命で、松江にあった楽山窯から土屋善四郎が布志名に移り住みました。善四郎の指導によって、布志名の焼き物の品質は大きく向上したといわれます。

歴史

松江藩7代藩主の松平治郷(不昧)は、土屋家の雲善窯を御用窯とし、茶道具などを焼かせました。不昧の指導を受けた土屋・永原の藩窯と、舩木系の子孫による民窯がともに栄えます。明治時代には黄釉色絵の器が全盛期を迎え、海外にも販路を広げました。昭和に入ると、舩木窯4代の舩木道忠らが柳宗悦や濱田庄司、リーチらと交流し、民藝の器づくりに取り組みます。この動きは島根県内の陶芸界にも影響を与えました。

特徴

布志名焼を代表するのは、黄釉と呼ばれる黄色い釉薬を掛けた器です。江戸時代の作品には、黄釉の地に草花や唐草を描いた花瓶や杯洗、赤と緑の色絵の重箱などがあり、京焼や織部焼の影響もうかがえます。舩木窯は、来待石を使った独自の布志名黄釉を受け継いでいます。民藝運動以降はスリップウェアの器も作られるようになりました。地域ブランドの事典では、大型の「ぼてぼて茶碗」の産地としても紹介されています。

技法

黄釉色絵

黄色の釉薬を掛けた器に、赤や緑などの上絵の具で草花や唐草の文様を描く技法である。布志名特有の器として明治頃に全盛期を迎え、国内外に販路を広げた。現在の窯でも、黄釉はそれぞれの工夫で受け継がれている。

スリップウェア

器の素地に、色の違う化粧泥(素地を覆うための泥)で線や模様を描く技法である。昭和に入り、民藝運動との関わりの中で布志名焼に取り入れられた。湯町窯のエッグベーカーの底にも、この技法による模様が施されている。

使用される素材

陶土釉薬(黄釉など)化粧泥来待石(舩木窯の布志名黄釉)

制作工程

  1. 1

    成形

    陶土をろくろなどで器の形に整える。

  2. 2

    素焼き

    成形して乾かした器を低めの温度で焼く。

  3. 3

    絵付け

    器に文様を描く。

  4. 4

    釉薬かけ

    黄釉などの釉薬を掛ける。

  5. 5

    本焼き

    高温で焼き上げて仕上げる。

主な産地
  • 松江市玉湯町布志名
  • 松江市玉湯町湯町

職人・工房

布志名焼 舩木窯

松江市玉湯町布志名437にある、江戸時代から続く窯元。4代の舩木道忠が民藝運動の濱田庄司やバーナード・リーチ、柳宗悦らと交流し、西洋の陶技を取り入れた。現在は6代の舩木伸児が、来待石を使った布志名黄釉を守りながら作陶している。

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雲善窯

松江市玉湯町布志名428-8の窯元。江戸時代に松江藩の御用窯として始まり、松平不昧好みの茶器を中心に作り続けてきた。島根県の資料では、代表は10代目善四郎の土屋知久。かつては黄釉の色絵で知られたが、現在は茶席に合う侘びた色合いの器が主流という。

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湯町窯

松江市玉湯町湯町965の窯元で、1922年(大正11年)に開窯した。河井寛次郎、濱田庄司、バーナード・リーチに学び、リーチの指導で生まれたエッグベーカーで知られる。島根県の資料では、雲善窯とともに布志名焼の製造事業者に指定されている。

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購入方法

雲善窯の店頭
高価な茶碗のほか、土産向きの器も扱う。旅行情報サイトでは、湯のみ1,100円、小皿5枚セット3,300円などが紹介されている。営業は8時30分〜17時30分で月曜定休。JR玉造温泉駅から車で約5分。購入先を見る →PR
湯町窯のエッグベーカー
昭和初期から作られている湯町窯の定番品。直火や電子レンジに対応し、卵料理をそのまま食卓に出せる。2022年の記事では大小2サイズが4,500〜5,000円程度で紹介されており、オンラインショップでも扱われている。購入先を見る →PR
舩木窯の窯元ショップ
宍道湖畔の窯元にショップがある。量産品ではないため気軽に買える価格ではない作品も多いが、2019年の記事ではB品が手頃な価格で並んでいたと紹介されている。訪問前に電話(0852-62-0710)で連絡を入れたい。購入先を見る →PR

体験施設

布志名焼 舩木窯(窯元見学)

島根県松江市玉湯町布志名437

事前に連絡すれば見学できる窯元です。当主が在宅していれば、バーナード・リーチが泊まった部屋や、4代・5代の作品を見られる場合があると紹介されています。受付時間は9時〜17時です。

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よくある質問

Q. 楽山焼とはどんな関係ですか?

A. どちらも松江藩とゆかりの深い窯で、布志名焼と松江市内の楽山焼は出雲地方を代表する伝統的な窯とされます。藩の命で楽山窯から布志名に移った土屋善四郎が指導したことで、布志名焼の品質が高まりました。楽山焼も島根県ふるさと伝統工芸品に指定されています。

Q. 湯町窯の器も布志名焼ですか?

A. 湯町窯は玉湯町の湯町地区にあり、布志名地区ではありません。それでも島根県は湯町窯を布志名焼の製造事業者として指定しており、大阪日本民芸館も布志名焼の窯として紹介しています。布志名焼は、布志名周辺の複数の窯元をまとめた呼び名と考えるとよいでしょう。

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