画像: Wikimedia Commons兵庫県
兵庫県は、日本海から瀬戸内海までを県域とし、摂津・播磨・但馬・丹波・淡路の旧五国からなる広い県です。土地ごとに異なる手仕事と食の文化が今も息づいています。経済産業大臣指定の伝統的工芸品は、丹波立杭焼、出石焼、播州三木打刃物、播州そろばん、豊岡杞柳細工、播州毛鉤、大阪唐木指物の7品目です。丹波立杭焼は日本六古窯の一つに数えられ、北播磨の三木や小野では大工道具やそろばんの分業が受け継がれています。県独自の指定品目にも、杉原紙や名塩紙、明珍火箸、赤穂緞通、有馬の人形筆があります。食では、神戸ビーフや明石の玉子焼(明石焼)、春のいかなごのくぎ煮が広く知られます。揖保川流域の手延べ素麺、出石の皿そば、丹波篠山のぼたん鍋、冬の但馬の松葉ガニも名物です。姫路おでんや加古川かつめし、有馬温泉の炭酸せんべいなど、町ごとの味もそろいます。
兵庫の伝統工芸

丹波立杭焼
Tamba Tachikui-yaki (Tamba Tachikui Ware)
丹波立杭焼(たんばたちくいやき)は、兵庫県丹波篠山市今田町の立杭地区を中心に焼かれている陶器で、一般には「丹波焼」とも呼ばれます。発祥は平安時代末期から鎌倉時代初めといわれ、瀬戸・常滑・信楽・越前・備前と並ぶ「日本六古窯」の一つに数えられます。中世は穴窯で壺や甕を焼き締めていましたが、江戸時代初めの慶長16年(1611年)ごろに登窯が導入され、同じころ左回転の「蹴ロクロ」も取り入れられました。登窯で焼くと、松薪の灰が器に降りかかって釉薬と溶け合い、一つひとつ異なる色や模様が生まれます。この窯変(かまの中で起こる色や質感の変化)の多彩さから、「丹波の七化け」とも呼ばれます。立杭の里には今も50軒ほどの窯元が集まり、日常の器から花器・茶器まで幅広く作っています。1978年(昭和53年)に「丹波立杭焼」の名で国の伝統的工芸品に指定されました。
出石焼
Izushi-yaki (Izushi Porcelain)
出石焼(いずしやき)は、兵庫県豊岡市出石町で作られている磁器です。最大の特徴は「雪よりも白い」と形容される透き通るような白さで、国内では珍しい白磁を中心とした産地として知られます。原料には、出石町の柿谷(かきたに)で見つかった、濁りのない白さを持つ「柿谷陶石」が使われます。始まりは江戸時代後期の天明4年(1784年)で、出石の豪商・伊豆屋弥左衛門が土焼の窯を開きました。寛政5年(1793年)には肥前の陶工によって磁器の焼成に成功し、のちに出石藩の窯として発展します。明治時代には白磁に浮き彫りや透かし彫りを施す精緻な作品が作られ、1904年のセントルイス万国博覧会で金賞を受けました。現在も城下町の窯元で、日用食器から花瓶、置物まで作られています。城下町名物の出石皿そばも、出石焼の小皿に盛って出されます。1980年(昭和55年)に国の伝統的工芸品に指定されました。

播州三木打刃物
Banshu Miki Uchihamono (Banshu Miki Forged Blades)
播州三木打刃物(ばんしゅうみきうちはもの)は、兵庫県三木市で作られている鋸(のこぎり)・鑿(のみ)・鉋(かんな)・鏝(こて)・小刀の5品目の打刃物です。三木の鍛冶の起源は約1500年前、土地の「大和鍛冶」と百済から渡来した「韓鍛冶」の技術交流にさかのぼるといわれます。大きな転機は、天正6年(1578年)に始まった羽柴秀吉の三木城攻めでした。焼け野原となった町を復興するため、秀吉は税を免除して人々を呼び戻し、集まった大工とその道具を作る鍛冶が町を活気づけます。のちに大工が各地へ出稼ぎに出ると、持参した道具の良さが評判になり、「金物のまち三木」の名が広まりました。和鉄・和鋼の鍛錬で培われた鋭い切れ味が持ち味で、今も手仕事の鍛冶屋が30軒ほど残るとされます。1996年(平成8年)に国の伝統的工芸品に指定されました。
明珍火箸
Myochin Hibashi (Myochin Fire Tongs)
明珍火箸(みょうちんひばし)は、兵庫県姫路市で作られている鉄製の火箸です。火箸は、火鉢や囲炉裏で炭をつかむための金属の箸のことです。作り手の明珍家は、平安時代末期から続くと伝わる甲冑師(よろいやかぶとを作る職人)の家柄で、江戸時代には姫路にも一家がありました。武士の時代が終わって甲冑の需要がなくなると、鉄を鍛える技術を生かして火箸を作るようになります。火箸どうしが触れ合ったときに響く、澄んだ高い音色が最大の特徴です。暖房の主役が石油ストーブに移って火箸の需要が減ると、1965年に4本の火箸を吊るした「火箸風鈴」が考案され、全国に広まりました。その音色は国内外の音楽家にも愛されています。現在は火箸風鈴やドアチャイムなどの音を楽しむ品が中心です。1993年(平成5年)に兵庫県の伝統的工芸品に指定されました。

播州そろばん
Banshu Soroban (Banshu Abacus)
播州そろばん(ばんしゅうそろばん)は、兵庫県小野市を中心に作られているそろばんです。そろばんは室町時代の末期に中国から長崎へ伝わったとされます。播州でのそろばんづくりは、天正年間(1573〜1592年)の豊臣秀吉による三木城攻めがきっかけと伝わります。戦火を逃れて近江の大津に移った住民が、そこで大津そろばんの製法を学び、帰郷後に三木・小野周辺で作り始めたといわれます。農閑期の手仕事として広まり、江戸時代に寺子屋で読み書きそろばんが普及すると大きく発展しました。製作は、珠を削る人、珠を仕上げる人、軸の竹ひごを作る人、組み立てる人の分業で行われ、工程は100を超えます。小野市は全国のそろばん生産の約7割を占める日本一の産地です。1976年(昭和51年)に国の伝統的工芸品に指定されました。

豊岡杞柳細工
Toyooka Kiryu Zaiku (Toyooka Wickerwork)
豊岡杞柳細工(とよおかきりゅうざいく)は、兵庫県豊岡市で作られている、コリヤナギ(杞柳)の枝を編んだ細工物です。コリヤナギはヤナギ科の低木で、円山川(まるやまがわ)流域の湿地に自生していました。兵庫県によると奈良時代に始まり、正倉院には当時の但馬国産の柳箱が残ります。江戸時代には豊岡藩主の京極家の保護を受け、衣類などを収める「柳行李(やなぎごうり)」の産地として全国に知られました。明治時代には行李に取っ手や錠を付けた「行李かばん」が生まれ、今日の「鞄の町・豊岡」の原点となりました。底編・縄編・縁編・蓋編などの技法を組み合わせ、一つひとつ手で編み上げるのが特徴です。製品は柳行李・小行李・柳や籐(とう)の籠の3部門に分かれます。1992年(平成4年)に国の伝統的工芸品に指定されました。

杉原紙
Sugiharagami (Sugihara Washi Paper)
杉原紙(すぎはらがみ)は、兵庫県多可町(たかちょう)加美区で漉かれている手漉き和紙です。原料には楮(こうぞ。クワ科の低木で、和紙の代表的な原料)だけを使い、やさしい白さと柔らかな手ざわりが特徴です。奈良時代の「播磨紙」の流れをくむと考えられ、平安時代には藤原氏の荘園・椙原庄(すぎはらのしょう)で紙が作られていました。鎌倉時代には幕府の公用紙となり、室町時代には「武家は杉原でなければ文を書かぬ」と記されるほど重んじられました。明治以降は洋紙に押されて衰え、1925年(大正14年)にいったん途絶えます。1970年に紙漉きが再現され、1972年に町営の杉原紙研究所が設けられて復活しました。1983年に兵庫県重要無形文化財、1993年に兵庫県伝統的工芸品に指定されています。

名塩紙
Najio-gami (Najio Gampi Paper)
名塩紙(なじおがみ)は、兵庫県西宮市塩瀬町名塩で漉かれている手漉き和紙です。雁皮(がんぴ。ジンチョウゲ科の低木で、和紙の原料)の繊維に、地元で採れる泥土を混ぜて漉く独特の技法で知られます。泥を含むため虫がつきにくく、日焼けや変色をしにくく、紙の伸び縮みも少なくなるといわれます。技術は越前(福井県)から伝わったとされ、江戸時代には「名塩千軒」と呼ばれるほど紙漉きで栄えました。藩札や襖・屏風の紙として重宝され、現在も金箔などを打ち延ばす「箔打紙(はくうちがみ)」の原紙や、襖用の「間似合紙(まにあいし)」が作られています。二条城や西本願寺などの文化財修復にも使われてきました。1983年に兵庫県の無形文化財、1993年に県の伝統的工芸品に指定されました。2002年には谷野武信氏が国の重要無形文化財「名塩雁皮紙」の保持者に認定されています。
赤穂緞通
Ako Dantsu (Ako Hand-woven Carpets)
赤穂緞通(あこうだんつう)は、兵庫県赤穂市で手織りされている木綿の敷物です。緞通とは、縦糸に毛足となる糸を結び付けて織る厚手の敷物のことです。江戸時代後期、中村(現在の赤穂市中広)の児島なかが、高松で見た中国の緞通に魅せられ、長い試行錯誤の末に生み出しました。明治時代に商品化され、塩田で働く女性の副業としても広がり、大正時代にかけて隆盛を極めます。佐賀の鍋島緞通、大阪の堺緞通とともに「日本三大緞通」に数えられます。みっしり詰まった木綿の毛足と、握り鋏で色の境目を切り摘んで文様を際立たせる「摘み」が特徴です。茶・青・白を基調に、亀甲や蟹牡丹などの吉祥文様が織り出されます。生産は昭和に入って途絶えかけましたが、1999年に「赤穂緞通を伝承する会」が結成されて技が受け継がれています。2007年に兵庫県伝統的工芸品に指定されました。
有馬人形筆
Arima Ningyo Fude (Arima Doll Brushes)
有馬人形筆(ありまにんぎょうふで)は、神戸市北区有馬町の有馬温泉で作られている、からくり仕掛けの筆です。字を書こうと筆を持つと、軸の端から小さな人形がひょっこり顔を出します。軸には色とりどりの絹糸が巻かれ、美しい模様を描いています。兵庫県によると起源は室町時代といわれ、1678年(延宝6年)刊の『有馬名所鑑』にも有馬の名産として記されています。古くから作られてきた実用の有馬筆をもとに考案されたとされ、有馬温泉の土産として親しまれてきました。子宝の引き出物としても人気があります。1970年の日本万国博覧会では地方民芸館に出展され、入選作品となって広く知られるようになりました。1993年(平成5年)に兵庫県伝統的工芸品に指定されています。現在は有馬温泉の「灰吹屋西田筆店」が唯一の工房です。
兵庫の郷土料理

明石焼
Akashiyaki
明石焼(あかしやき)は、卵をたっぷり使った生地にタコを入れて丸く焼き、温かいだしにつけて食べる兵庫県明石市の郷土料理です。地元では古くから「玉子焼(たまごやき)」と呼ばれています。生地は小麦粉にじん粉(小麦粉からグルテンを取り除いたでんぷん。浮き粉とも)を混ぜて作り、ふわふわとやわらかい食感に仕上げます。見た目はたこ焼きに似ていますが、ソースではなくだしで味わう点が大きな違いです。銅製の焼き鍋で焼き、あげ板と呼ばれる少し傾いた木の板にのせて出されます。由来は、卵白で作る模造さんご「明石玉」の製造で余った卵黄を、明石でよくとれるタコと合わせて焼いたことにあるといわれます。明石市内には約70店舗(2021年現在)があり、普段の昼食やおやつとして子どもから大人まで親しまれています。

神戸ビーフ
Kobe Beef
神戸ビーフは、兵庫県産の但馬牛(たじまうし/たじまぎゅう)のうち、厳しい基準を満たした牛肉だけに与えられるブランド名です。「神戸肉」「神戸牛」とも呼ばれ、平成27年(2015年)には国の地理的表示(GI)に登録されました。基準は昭和58年(1983年)に設立された「神戸肉流通推進協議会」が定めています。素牛(もとうし)となる但馬牛は、約1200年前から兵庫県北部の但馬地方で農耕に使われてきた牛が起源です。明治元年(1868年)の神戸港開港後、外国人がその味を高く評価したことから「神戸ビーフ」の名が世界に広まりました。きめ細かな霜降りと、口の中でとろけるような脂の甘さが特徴です。認定された肉には兵庫県の花ノジギクをかたどった「のじぎく判」が押されます。ステーキやすき焼きのほか、海外でも高級和牛の代名詞として知られています。

いかなごのくぎ煮
Ikanago no Kugini (Simmered Sand Lance)
いかなごのくぎ煮は、イカナゴ(スズキ目イカナゴ科の小魚)の稚魚「新子(しんこ)」を、醤油・砂糖・ショウガなどで甘辛く炊き上げた佃煮です。播磨・摂津・淡路など、兵庫県の瀬戸内海沿岸で古くから作られてきました。煮上がった姿が、曲がって錆びた釘のように見えることから「くぎ煮」と呼ばれます。神戸が発祥の地とされ、もとは漁師の家庭で作られていた料理でした。1980年代以降、一般の家庭にも広く知られるようになりました。新子漁は毎年2月末から3月初めに解禁され、漁期は約1か月と短いものでした。地元では「イカナゴの香りがすると春がやってくる」といわれ、春の風物詩として親しまれています。かつては新子をキロ単位で買って家で炊き、親戚や知人に送る家庭が多くありました。しかし近年は漁獲量が激減し、漁期も短くなって、入手が難しくなっています。

播州素麺(揖保乃糸)
Banshu Somen (Ibonoito Hand-stretched Noodles)
播州素麺(ばんしゅうそうめん)は、兵庫県南西部の播磨地方で作られる手延べそうめんです。たつの市や宍粟市、太子町、佐用町、姫路市など、揖保川(いぼがわ)流域が主な産地です。小麦粉と塩と水を原料に、生地をよりながら少しずつ細く延ばす「手延べ製法」で作られます。茹でても伸びにくく、なめらかな舌ざわりとコシのある歯切れのよさが特徴です。代表的なブランドが、兵庫県手延素麺協同組合の「揖保乃糸(いぼのいと)」です。手延べそうめんとして日本一の生産量を誇り、令和6年(2024年)には国の地理的表示(GI)に登録されました。播州でのそうめん作りは約600年の歴史があり、室町時代の寺の記録に「サウメン」の文字が残っています。播州平野の小麦、揖保川の清流、赤穂の塩という恵まれた条件のもと、冬の農閑期の仕事として受け継がれてきました。夏は冷やしそうめん、冬は温かいにゅうめんとして、一年を通して食べられています。

出石皿そば
Izushi Sara Soba
出石皿そば(いずしさらそば)は、兵庫県豊岡市出石町に伝わる、小皿に盛り分けて出すそばです。城下町の出石では、白い磁器の出石焼の小皿に、ゆでたそばを少量ずつ盛って出します。一人前は5皿が基本で、食べたい分だけ1皿ずつ追加できます。とっくりに入っただしと、ねぎ・わさび・卵・山芋(とろろ)などの薬味が添えられます。始まりは宝永3年(1706年)とされます。信州上田(今の長野県上田市)から出石へ国替えになった藩主・仙石政明が、そば職人を連れてきたことがきっかけと伝わります。小皿に盛るようになったのは幕末の頃で、屋台で持ち運びやすいよう小さな浅い皿を使ったのが始まりとされます。300年以上にわたって職人たちが改良を重ね、今では町内に約40の店(2021年現在)が並ぶ出石の名物になりました。

ぼたん鍋
Botan Nabe (Wild Boar Hot Pot)
ぼたん鍋は、猪肉(ししにく)を野菜と一緒に味噌仕立てのだしで煮込む、兵庫県丹波篠山市(たんばささやまし)の郷土料理です。薄く切った猪肉を大皿に牡丹(ぼたん)の花びらのように並べて出すことが、名前の由来の一つとされます。丹波篠山は全国有数の猪の猟場として知られ、猟が解禁される11月中旬から3月中旬ごろが食べごろです。農林水産省によると、明治41年(1908年)ごろ、篠山町に駐屯した陸軍歩兵第70連隊が、訓練中に捕らえた猪の肉を味噌汁に入れて食べたのが始まりとされます。当初は「いの鍋」と呼ばれていました。昭和6年(1931年)、民謡「篠山小唄」の歌詞に「ぼたん鍋」の言葉が使われ、この名が広まったといわれます。地元の料理旅館などが冬の名物として出し、正月や特別な日のもてなし料理にもなりました。2022年には文化庁の「100年フード」に認定されています。

姫路おでん
Himeji Oden (Oden with Ginger Soy Sauce)
姫路おでんは、おでんに生姜醤油(しょうがじょうゆ)をかけたり、つけたりして食べる兵庫県姫路市のご当地グルメです。一般的なおでんは辛子を添えますが、姫路では濃口醤油におろし生姜を混ぜたものを使います。特別なだしや具材ではなく、この食べ方そのものが姫路おでんの決まりです。姫路には、濃く甘い味付けの「関東煮(かんとうだき)」と薄味のおでんの2種類がありますが、生姜醤油で食べればどちらも姫路おでんと呼ばれます。もとは姫路を中心に、加古川から相生あたりまでの限られた地域の食べ方でした。昭和の初めごろ、甘辛い関東煮に生姜醤油をかけて味を調えたのが始まりともいわれます。平成18年(2006年)、まちおこしの一環として「姫路おでん」と名付けられました。今では市内の100軒ほどの店で味わえるといわれ、家庭でも秋祭りなどの祝いの席でも食べられています。

加古川かつめし
Kakogawa Katsumeshi (Beef Cutlet on Rice with Demi-glace)
加古川かつめしは、洋皿に盛ったご飯の上にビーフカツ(牛カツ)をのせ、デミグラスソース系のたれをかけ、ゆでキャベツを添えた兵庫県加古川市(かこがわし)のご当地グルメです。丼ではなく平たい洋皿で出し、スプーンやフォークではなく箸で食べるのが決まりです。終戦直後の昭和22年(1947年)、加古川町寺家町で創業した「いろは食堂」が最初に出したといわれます。ビーフカツレツを出す際に皿が足りず、ひとつの皿にご飯とカツを盛ってたれをかけたのが始まりと伝わります。「ナイフとフォークがなくても箸で気軽に食べられる洋食」として、市内の食堂や喫茶店に広まりました。現在は豚カツやチキンカツ、エビカツを使った店もあります。加古川観光協会の「かつめしマップ」には、市内外の94店が載っています。2023年には文化庁の「100年フード」に認定されました。

炭酸せんべい
Tansan Senbei (Carbonated Spring Water Crackers)
炭酸せんべいは、小麦粉やでんぷん、砂糖、塩に温泉の炭酸泉(たんさんせん)の水を加えて、薄く焼き上げた兵庫県の温泉地の名物菓子です。卵やバターを使わない、軽くてさっくりとした食感と素朴な甘さが特徴です。発祥の地とされる神戸市北区の有馬温泉では、明治8年(1875年)、炭酸泉の水が飲み水にも適していることが国の検査で分かりました。この水を生かしたせんべいが考案され、明治40年(1907年)創業の三津森本舗(みつもりほんぽ)が元祖の店として知られます。有馬温泉のほか、同じく炭酸泉が湧く宝塚温泉や城崎温泉でも作られ、それぞれ温泉みやげとして定着しました。有馬の温泉街には炭酸せんべいの店が点在し、職人が鉄板で1枚ずつ焼く様子を見られる店もあります。チェコの温泉地カルロヴィ・ヴァリの焼き菓子をもとにしたという説もありますが、元祖については定かでない部分も残ります。

但馬の松葉ガニ
Tajima Matsuba Gani (Snow Crab of Tajima)
松葉ガニ(まつばがに)は、山陰地方でズワイガニの雄を呼ぶ名前です。兵庫県北部の但馬(たじま)地域では、新温泉町、香美町(かみちょう)、豊岡市の漁港で水揚げされ、冬を代表する味覚になっています。県の北西端にある浜坂漁港をはじめ5つの漁港に揚がり、全国有数の水揚げ量を誇ります。漁港ごとにブランドがあり、「津居山かに」「柴山がに」「香住港まつばがに」「浜坂産松葉がに」として脚にタグを付けて出荷されます。漁は毎年11月6日に解禁され、雄の松葉ガニは翌年3月20日まで、雌のセコガニは資源を守るため12月末までしかとれません。塩ゆでにして二杯酢で食べるほか、炊き込みご飯や雑炊、味噌汁などにも使われます。なお、香住漁港は紅ズワイガニ(ベニズワイガニ)の県内唯一の水揚げ地でもあり、こちらは「香住ガニ」と呼ばれ、松葉ガニとは別のカニです。
モデルコース
丹波篠山で丹波焼の窯元をめぐり、ぼたん鍋を味わうコース
まずは今田町上立杭の立杭陶の郷へ向かいます。「窯元横丁」では、約50軒の窯元の作品を見比べて選べます。陶芸教室では、粘土細工や絵付けを体験できます(粘土細工は2,420円程度〜)。午後は篠山城跡近くの城下町へ移り、猪肉専門店おゝみやの城下町店や、料理旅館の近又でぼたん鍋を味わいましょう。ぼたん鍋は冬が旬で、提供期間や予約の要否は店ごとに確認が必要です。
城下町・出石で白磁の出石焼と皿そば、杞柳細工にふれるコース
出石の城下町では、まず出石焼の店や窯元をのぞいてみましょう。八木の上田陶磁器店では、江戸期の「古出石」の展示も見られます。内町の永澤兄弟製陶所では、白磁の器への絵付けを体験できます。昼は近又やさらそば甚兵衛で、出石焼の小皿に盛った皿そばをいただきます。出石城跡近くの伝統工芸館 杞柳では、豊岡杞柳細工の製品を手に取れます。
冬の城崎温泉と浜坂で、タグ付きの松葉ガニを味わうコース
松葉ガニの漁期は、雄が11月6日から3月20日までです。城崎温泉の温泉街にあるおけしょう鮮魚の海中苑では、2階の食事処でカニのフルコースを味わえます(13,500円程度〜、2人前から)。温泉街の店では、豊岡杞柳細工の小さなかごやバッグも探せます。泊まりがけなら、浜坂の割烹旅館・荒岩で、港に揚がるタグ付きの松葉ガニを楽しむのもよいでしょう。
明石の魚の棚で、玉子焼といかなごのくぎ煮を味わうコース
JR明石駅から南へ歩くと、魚の棚商店街に着きます。本町の座古海産では、自家製のいかなごのくぎ煮を買えます(120gで860円程度)。昼は大正13年(1924年)創業の本家きむらやや、ふなまちで、だしにつけて食べる玉子焼(明石焼)を味わいましょう。駅前のパピオスあかしにも、こんがりと焼き色をつける松竹があります。
姫路で明珍火箸を選び、生姜醤油の姫路おでんと加古川かつめしを味わうコース
JR姫路駅を出てすぐのじばさんびる内、播産館では、明珍火箸の風鈴をはじめ播磨の工芸品を選べます。夜は駅近くの停主や十七八で、生姜醤油をかけて食べる姫路おでんを楽しみましょう。翌日はJRで加古川へ向かい、駅から歩いて2〜3分の洋食エデンで、箸で食べる加古川かつめしをいただきます。
有馬温泉で人形筆と炭酸せんべいの老舗を訪ね、神戸ビーフで締めるコース
有馬温泉の灰吹屋西田筆店は、有馬人形筆を作る唯一の工房とされます(1本3,300円程度)。有馬玩具博物館では、人形筆づくりも体験できます(5,000円程度、要予約)。湯本坂の三津森本舗本店では、職人がせんべいを手焼きする様子をガラス越しに見られます。夕方は神戸・三宮へ下り、明治18年(1885年)創業のモーリヤ本店で、神戸ビーフのステーキを味わいましょう。
北播磨で三木の金物、小野のそろばん、杉原紙の紙すきを体験するコース
三木市立金物資料館では、大工道具を中心に三木の金物の歴史を学べます。入館は無料です。道の駅みきの金物展示即売館では、約2万点の金物を手に取って選べます。小野市のそろばんビレッジでは、枠や珠の色を選んでオリジナルのそろばんを作れます(9桁で1,800円程度〜、要予約)。北へ足を延ばし、多可町の杉原紙研究所で紙すきを体験しましょう(はがき2枚450円程度〜、要予約)。
揖保乃糸のそうめんの里から、赤穂緞通の工房ギャラリーへ向かう西播磨コース
たつの市の揖保乃糸資料館 そうめんの里では、手延べそうめんの歴史や製造工程を学べます。1階のレストランでは、揖保乃糸を使ったそうめん料理を味わえます。午後は赤穂へ向かい、東浜町の赤穂緞通工房ギャラリー東浜を訪ねましょう。見学は公式サイトから申し込みます。赤穂市立歴史博物館は、赤穂緞通の資料も所蔵しています。
西宮・名塩で、泥を漉き込む名塩紙の歴史にふれるコース
名塩和紙学習館は、西宮市郷土資料館の分館です。2階では名塩紙の歴史や紙すきの道具を展示しており、入館は無料です(月曜休館)。名塩紙は、雁皮に地元の泥土を混ぜて漉く和紙です。今も金箔を打ち延ばす箔打紙の原紙や襖紙が作られ、二条城などの文化財修復にも使われてきました。紙すき講座(700〜1,000円程度)は事前の申し込みが必要です。