
松葉がに(まつばがに)は、山陰地方でズワイガニの雄を呼ぶ名前で、鳥取県の冬を代表する味覚です。県内では境漁港(境港市)、鳥取港(鳥取市)、網代(あじろ)漁港(岩美町)などに水揚げされます。漁は毎年11月6日に解禁され、松葉がにの漁期は翌年3月20日までです。県内の沖合底びき網漁船が水揚げした甲羅幅11センチ以上の松葉がにには、鳥取県産を示すタグが付けられて出荷されます。2015年の漁期からは、最上級ブランド「特選とっとり松葉がに五輝星(いつきぼし)」の販売が始まりました。初競りでは五輝星1匹に500万円の値がついたこともあると報じられています。一方、雌のズワイガニは地元で「親ガニ(おやがに)」と呼ばれます。卵を抱えた親ガニは、大根と煮込む「親ガニのみそ汁」として家庭で親しまれてきました。
発祥
「松葉がに」の名の由来には諸説あります。脚の形や身が松葉のように見えるという説や、漁師が浜で松葉を燃やしてカニを焼いて食べたことによるという説などが伝わります。鳥取県によると、名称が出てくる古い文献に、弘化2年(1845年)の鳥取藩「町目付日記」があります。若桜(わかさ)町の御用座敷の棟上げ祝宴の献立に記されています。さらに天明2年(1782年)の鳥取藩の公文書控えにも、津山藩への贈答品の目録とみられる記載が見つかっています。
歴史
平成12年(2000年)、鳥取県松葉がにPR推進協議会(現・鳥取県産魚PR推進協議会)が、11月の第4土曜日を「松葉がにの日」と定めました。この日には鳥取市や岩美町の漁港でイベントが開かれます。平成27年(2015年)の漁期からは、最上級の松葉がにを「五輝星」として販売しています。初競りでは2016年に130万円、2018年に200万円、2019年に500万円の値がつき、記録の更新が話題になってきました。
特徴
松葉がにの旬は11月から3月です。甲羅に付く黒い粒は、十分に成長した目安とされます。脱皮して間もない「若松葉がに」は身入りが少なめですが、殻がやわらかく比較的手ごろです。五輝星は、甲幅13.5センチ以上、重さ1.2キロ以上、脚がすべてそろっていること、鮮やかな色合い、身が詰まっていることの5つの基準をすべて満たすものです。10人の目利き人が選び、全体の0.1%に満たない希少なカニとされています。
主な食材
食文化
鳥取市を中心とする県東部では、雌の親ガニが冬の家庭の味として親しまれています。親ガニを半分に割って大根と煮込み、みそで味付けする「親ガニのみそ汁」は、内子や外子(卵)、カニみそのコクが味わえる料理です。漁期が短い冬だけの味で、学校給食や地域のイベントでも出されます。
家庭料理との違い
家庭では、比較的手ごろな親ガニをみそ汁にするのが定番です。一方、カニ料理店では、松葉がにを刺身や焼きがに、ゆでがに、鍋などに仕立て、締めの雑炊までを続けて味わうコース料理で出すことが多くあります。
有名店
かに吉
鳥取県鳥取市末広温泉町271
JR鳥取駅から歩いて5分ほどのカニ料理店で、予約制です。冬は主人が目利きした松葉がにを、カニみそや刺身、焼き、ゆで、鍋などで味わうコースを出します。締めの雑炊は「魂炊(たますい)」と名付けられています。2020年の紹介記事では、コースが25,000円程度から(税・サービス料別)とされています。
鳥取港海鮮市場かろいち
鳥取県鳥取市賀露町西3丁目27-1
鳥取港(旧・賀露港)のそばにある市場で、扱う魚介の異なる鮮魚店が並びます。冬は松葉がにや親ガニが目玉とされ、店ごとに見比べて買うことができます。通販も行っており、松葉がには解禁前から予約注文を受け付けていると紹介されています。
鳥取県立とっとり賀露かにっこ館
鳥取県鳥取市賀露町西3-27-2
かろいちの近くにある入館無料のカニの水族館です。松葉がにについて学べる「松葉がに牧場」があり、ベニズワイガニやタカアシガニなども展示しています。開館時間は9時から17時(入館は16時45分まで)とされています。
よくある質問
Q. 鳥取の松葉がにと、越前がにや但馬の松葉ガニは違うカニですか?
A. いずれも同じズワイガニの雄で、水揚げされる地域によって呼び名やブランドが異なります。山陰地方では松葉がに、福井県では越前がにと呼ばれます。鳥取県では県産を示すタグを付けて出荷し、兵庫県の但馬地方でも漁港ごとのブランドタグが使われています。
Q. 親ガニとセコガニは同じものですか?
A. どちらもズワイガニの雌を指します。雄より小型で、鳥取県など山陰地方では親ガニと呼ばれます。ほかの地方ではセコガニやセイコガニ、コウバコガニなどと呼ばれます。卵を抱えていることから親ガニの名が付いたとされます。