
皿鉢料理(さわちりょうり)は、高知県で宴会のときに振る舞われる大皿料理です。特定の料理の名前ではなく、直径36〜39cmほどの大皿に、山や川、海の幸を盛り付ける様式を指します。刺身やカツオのたたきを盛る「生(なま)」、すしを並べる「すし」、煮物や揚げ物、甘味、果物などを盛り合わせる「組み物」が基本の構成です。高知では客を招いて開く宴会を「おきゃく」と呼び、皿鉢料理はその主役です。大皿を大勢で囲み、好きなものを好きなだけ小皿に取って食べる、堅苦しい決まりのない料理です。江戸時代には武家の宴席で出され、明治時代以降に県内の人々へ広まりました。2021年度には文化庁の「100年フード」に認定されています。高知市内の料理店では、少人数向けの皿鉢も注文できます。
発祥
皿鉢は皿と鉢の中間のような形の器で、「さはち」とも読まれます。農林水産省の資料によると、皿鉢料理の起源は藩政時代にさかのぼり、武士の宴会の終わりに出されたものとされます。一方で、豊作祈願や収穫祭など農村の神事で神に供えた料理を、神事の後に参加者で分け合う「直会(なおらい)」から発展したという見方もあります。
歴史
倹約を重んじた土佐藩は、1674年(延宝2年)や1748年、1768年、1857年に、皿鉢の売買や使用を禁じました。皿鉢がぜいたく品と見なされていたためです。明治時代に販売が自由になると、皿鉢料理は「おきゃく」の料理として県内に広まりました。明治中期には仕出しの専門店が現れ、昭和30年代には県内各地に広がったとされます。近年は、ローストビーフやエビフライなど洋風の料理を盛ることもあります。
特徴
基本は生・組み物・すしの3枚で、祝いの席では活け造りが加わることもあります。組み物は、ハランの葉で仕切りながら、煮物や酢の物、甘いものなどを隙間なく盛り合わせます。器は丸形や楕円形などで、標準は約39cm(1尺3寸)です。かつて裕福な家では、伊万里や九谷、有田の高価な皿をそろえていました。1皿でおよそ3人分とされ、皿の数が宴の規模を表しました。
主な食材
食文化
皿鉢料理は日常の食事ではなく、婚礼や葬儀、誕生祝い、還暦祝い、節句、新築祝いなど、人が集まる席で用意されます。かつては男性が魚をさばき、女性が煮炊きを担い、準備に2日がかりのこともあったといいます。毎年3月には、高知市で「食の祭典南国土佐皿鉢祭」が開かれます。
家庭料理との違い
かつての農村では、「結(ゆい)」と呼ばれる助け合いの仲間が集まり、調理から配膳、片付けまで手分けして皿鉢を整えました。昭和30年代ごろからは仕出し店に頼む家が増え、料理も豪華になりました。料理店では、2〜4人向けの小ぶりな皿鉢も用意されています。
有名店
土佐料理 司 高知本店
高知県高知市はりまや町1-2-15
1917年(大正6年)創業の郷土料理の老舗で、カツオ料理を中心に皿鉢料理や会席を出しています。2020年には、20種類以上の料理を大皿に盛り付けて楽しむ皿鉢料理のセット「おとどけ皿鉢」(3〜6人前)を発売し、発売時の価格は16,000円(税・送料込み)でした。価格は変わることがあります。
詳細を見る →得月楼
高知県高知市南はりまや町1-17-3
1870年(明治3年)創業の料亭で、宮尾登美子の小説『陽暉楼(ようきろう)』の舞台としても知られます。山海の幸を盛った「土佐名物 皿鉢料理」が看板料理の一つで、昼は16,200円からと紹介されています。内容によって価格が変わるため、事前に店へ問い合わせてください。
詳細を見る →土佐ノ國 二十四万石
高知県高知市帯屋町1-2-2
皿鉢料理と、藁で焼くカツオのたたきが自慢の店です。旅行ガイドでは、土佐珍味皿鉢(2〜4人前)が8,100円、伝統皿鉢(3〜5人前)が13,500円と紹介されています。価格は変わることがあります。
とさ市場
高知県高知市はりまや町1-3-11
皿鉢料理や海賊料理など、約250種類の料理をそろえる店です。旅行ガイドでは、少人数向けの「おもいで皿鉢」が3,180円、藁焼きタタキ定食が1,680円と紹介されています。価格は変わることがあります。
とさごはん 酔鯨亭
高知県高知市南はりまや町1-17-25
はりまや橋に近い南はりまや町にある、高知の郷土料理を出す店です。旅行ガイドでは、2〜4人向けのミニ皿鉢(要予約)が8,800円と紹介されています。少人数で訪れても皿鉢料理を味わえます。価格は変わることがあります。
よくある質問
Q. 「皿鉢」はなんと読むのですか?
A. 高知では一般に「さわち」と読みます。農林水産省の資料では「さわち・さはち」と併記されており、「さあち」「さらち」などと呼ばれることもあります。土佐藩の文書には「砂鉢」と書かれた例もあるとされます。
Q. 皿鉢料理の「生(なま)」とは何ですか?
A. 高知では刺身のことを「なま」と呼び、刺身を盛った皿鉢を「生」といいます。伝統的には1皿に1種類の魚を盛り付けるものとされ、カツオのたたきを盛ることもあります。弔事の席では、生の代わりに別の料理を盛る習わしがあったとされます。