みみは、山梨県富士川町の十谷(じっこく)地区に伝わる郷土料理です。小麦粉を練って薄くのばし、5cmほどの正方形に切ります。その片側の二つの角を合わせて三角にし、農具の「箕(み)」の形に整えます。これを大根や里芋、ごぼうなどの野菜と一緒に、煮干しのだしで煮て味噌で味をととのえます。生地はほうとうと似ていますが、形がまったく違い、下ゆでも必要ありません。名前は箕の形に似ていることに由来するとされ、耳に似ているからという説もあります。箕には「福をすくう」意味が込められ、「福箕(ふくみ)」が転じて「みみ」になったとも伝わります。縁起のよい料理として、十谷では今も元旦の朝に歳神様(としがみさま)に供えてから家族で食べます。地元の施設では、みみ作りの体験もできます。
発祥
始まりには諸説あります。十谷では、源氏の武将が戦勝を祝ってみみを食べたという言い伝えがあります。また山梨県の紹介では、昔、隣村との境界争いに勝ったら福箕を奉納すると神様に約束したという話が伝わります。それ以来、毎年正月の朝に箕になぞらえた「みみ」を供え、食べるようになったとされます。
歴史
十谷は南アルプスに近い山あいの集落です。米が貴重だった山梨では、ほうとうをはじめとする粉食が暮らしを支えてきました。家庭の日常食として伝わったほうとうと違い、みみは主に正月などのハレの日に神様に供え、食卓にも並ぶ料理として受け継がれてきました。近年は町おこしの題材としても注目され、由来の説明とともに給食で出す学校もあります。
特徴
生地は小麦粉にぬるま湯を加えてよくこね、ぬれぶきんをかけて30分ほど休ませます。のし棒で薄くのばして正方形に切り、二つの角に水をつけて合わせます。箕の形にすると汁がよく絡み、煮込んでも形が崩れにくいといわれます。具は大根、人参、里芋、ごぼう、しいたけ、長ねぎなどです。野菜が柔らかくなったらみみを加えて煮込み、最後に味噌を入れます。
主な食材
食文化
十谷では毎年元旦の朝食に、みみを歳神様に供えてから家族でいただくのが習わしです。祭りや祝い事など、親戚や大勢の人が集まるときにも作られてきました。各家庭でふるさとの味として受け継がれているほか、地元の施設で開かれる体験教室を通じても伝えられています。
家庭料理との違い
家庭では元旦や祝い事の日に、家族や親戚が集まって大鍋で作るのが一般的です。地元の施設では、みみに煮物や野菜の天ぷらを添えた御膳も用意されています。汁はほうとうほど味噌味が濃くなく、特製の薬味を加えて味を変えながら食べることもできます。
有名店
つくたべかん
山梨県南巨摩郡富士川町十谷2294-7
十谷に伝わるみみ作りを通して、伝承料理を味わえる施設です。小麦粉を箕の形にしたみみを、地元で採れた野菜と手作り味噌で煮込みます。予約制の「みみ御膳」もあり、体験教室も開かれています。木曜定休です。
よくある質問
Q. 「みみ」という名前の由来は何ですか?
A. 生地の形が、穀物をふるうのに使う農具の「箕(み)」に似ていることに由来するといわれます。福をすくう縁起物として「福箕」と呼ばれ、それが「みみ」に転じたとも伝わります。人の耳に似ているからという説もあります。
Q. ほうとうとはどう違うのですか?
A. どちらも小麦粉の生地を野菜と味噌で煮込みますが、ほうとうは幅広の麺、みみは箕の形をした一口大の生地です。また、ほうとうが家庭の日常食として伝わってきたのに対し、みみは主に正月などのハレの日の料理として受け継がれてきました。
Q. 栃木県の耳うどんと同じ料理ですか?
A. 別の料理です。栃木県佐野市などに伝わる耳うどんは、生地を人の耳の形に作るものです。十谷のみみは、農具の箕の形をまねて作り、野菜と一緒に味噌で煮込みます。形が似ていても、名前の由来や食べ方が異なります。