
なれずしは、塩漬けにした魚とごはんを葉で包み、桶に漬けて乳酸発酵させる和歌山県の郷土料理です。酢に頼らず発酵の力で酸味を生む、寿司の原形とされる食べ方を今に伝えています。県中部の有田地方や日高地方ではサバを、新宮市など県南部の熊野地方ではサンマを使うのが代表的です。包む葉は地域ごとに異なり、有田市や日高郡ではアセ(暖竹〈だんちく〉というイネ科の植物)の葉が使われてきました。農林水産省によると、和歌山のなれずしは日本三大なれずしの一つともいわれ、約800年以上の歴史があるとされます。秋祭りのごちそうとして家々で漬け込まれ、重箱に詰めて親類に配る習わしもありました。漬け込みが短く食べやすい「早なれ」と、長く発酵させて強い香りと酸味を持つ「本なれ」があります。新宮市の東宝茶屋では、30年熟成させたサンマのなれずしも味わえます。
発祥
農林水産省「うちの郷土料理」では、平家の落人・平維盛(たいらのこれもり)にまつわる伝承が紹介されています。有田にこもった維盛が兵を率いて村を出る際、米が乏しいなか、村人は炊いたごはんと塩サバを葉に包んで持たせました。数日後に包みを開けると、発酵して独特の香りを放ち、とてもおいしくなっていたといいます。これがなれずしの始まりと伝わりますが、あくまで伝説の一つです。
歴史
なれずしは、ごはんの発酵を利用して魚を長く保存する食べ物です。稲作とともに東南アジア方面から伝わったとする説があり、平安時代の『延喜式』には各地から納められたなれずしが記されています。のちに酢を使う早ずしが広まり、今の寿司へとつながりました。和歌山では祭りの行事食として受け継がれ、秋祭りの夜宮から翌日まで、家族一人に1本ずつ出されたといいます。
特徴
サバは1か月以上塩漬けにし、1日かけて塩抜きします。ごはんは粘りがあって硬く握れる古米が好まれます。魚の上に棒状に握ったごはんをのせて葉で巻き、桶に詰めて重しをのせて漬け込みます。現在は数日で食べられる「早なれ」が主流で、酢を使ってクセを抑えたものもあります。酢を使わず塩と米だけで長く発酵させる「本なれ」は、ヨーグルトにたとえられる強い酸味が特徴です。
主な食材
食文化
なれずしは秋祭りのごちそうとして作られてきました。盆が終わるころに大きなトロ箱で何十匹もの魚が届き、各家庭でたくさん漬け込みます。できあがると重箱に入れて親類に配りました。現在は地元の飲食店や直売所でも買えるようになっています。
家庭料理との違い
家庭では秋祭りに合わせ、数日から1週間ほど漬けた食べやすいものが中心です。一方、新宮市の東宝茶屋のように、数週間漬けたものから30年熟成させたものまで、発酵の段階が違うなれずしを食べ比べられる店もあります。
有名店
東宝茶屋
和歌山県新宮市横町2-2-12
昭和22年(1947年)創業と紹介される、熊野の郷土料理を出す店です。創業当初から漬け続けるサンマの「本馴れ鮓」が名物で、米が液状になった30年物も味わえます。さんま・あゆ・さばの馴れ鮓は1,080円〜1,300円程度です。営業は夜のみで、木曜定休です。
詳細を見る →| 御菓子司 御寿司 つるや「なれずし」 | 湯浅町で約100年続くとされる店の、アセの葉で包んだサバのなれずしです。酢を使う「早熟れ」と、塩で自然発酵させる「本熟れ」があります。1本1,300円(税込)程度で、販売は5月〜11月ごろに限られます。電話やFAXで全国発送にも対応しています。 |
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| ふみこ農園「紀州本場なれずし」 | 紀の川市のふみこ農園が販売する、サバのなれずしです。漬け込み期間の違う「早なれ」「中なれ」「本なれ」から選べ、2本入りで通信販売されています。添加物を使わず、塩と米で自然発酵させるとしています。 |
よくある質問
Q. 「早なれ」と「本なれ」は何が違うのですか?
A. 漬け込む期間と作り方が違います。早なれは漬け込みが短く、酢を使ってクセを抑えたものもあり、初めての人でも食べやすい味です。本なれは酢を使わず、塩と米だけで長く発酵させます。香りと酸味が強く、慣れた人に好まれます。