
田舎寿司(いなかずし)は、高知県の山間部で受け継がれてきた、野菜や山菜をネタにしたすしです。酢飯には、高知特産の柚子(ゆず)の果汁を使った柚子酢を合わせ、しょうがのみじん切りやいりごまを混ぜて、さわやかな香りに仕上げます。ネタは、甘酢に漬けたみょうがやりゅうきゅう(ハスイモの茎)、甘く煮たしいたけ、たけのこ、こんにゃくなどです。こんにゃくは稲荷寿司のように、切り込みに酢飯を詰めます。海の幸が手に入りにくかった山里で、身近な山の幸を使ったごちそうとして生まれたとされます。魚介や肉、卵を使わないため、近年は菜食の人に向けた料理としても注目されています。宴会「おきゃく」で出される皿鉢(さわち)料理に欠かせない一品で、高知市の日曜市や県内の直売所、スーパーなどで買うことができます。
発祥
高知県は山地が多く、海が近くても山が迫る地形のため、山間部では海産物が手に入りにくい時代がありました。そこで人々が、身近な山の幸を使ってごちそうのすしを作ったのが始まりとされます。当時は米も貴重だったため、冠婚葬祭や祭りなどの行事で食べられていました。魚のすしより安く、日持ちもしたことから、やがて日常の食事にも広まりました。
歴史
かつては「みょうがの寿司」「たけのこの寿司」などとネタごとに呼ばれ、共通の呼び名はなかったとされます。「土佐田舎寿司」という名前は、1986年(昭和61年)に「全国ふるさとおにぎり百選」へ出品された際に付けられました。手作りする家庭は減っていますが、高知県は2018年(平成30年)に「土佐寿司を盛り上げる会」を立ち上げ、PRに取り組んでいます。
特徴
酢飯は柚子酢に砂糖としょうがを合わせ、いりごまを加えるのが特徴で、醤油をつけずにそのまま食べます。ネタは季節や地域で変わり、春のたけのこに加えて、秋には高知特産の四方竹(しほうちく)も使います。塩漬けのイタドリを使う地域もあります。りゅうきゅうは琉球(沖縄)から伝わったとされるハスイモの茎で、皮をむいて塩でアクを抜き、甘酢に漬けて使います。
主な食材
食文化
田舎寿司は、宴会「おきゃく」で出される皿鉢料理に欠かせない一品です。家庭では、ネタを仕込んで冷凍しておき、食べたいときに酢飯と合わせて手軽に作る方法がよく取られています。高知では、祖母の味として親しまれてきた料理だと紹介されています。
家庭料理との違い
手作りする家庭は減っていますが、県内の飲食店で出されるほか、スーパーや観光地、直売所でも買えます。郷土料理の知識と技術をもつとして県が選んだ「土佐の料理伝承人」による販売会では、地域ごとに受け継がれた田舎寿司を味わえます。
有名店
日曜市
高知県高知市追手筋
高知城追手門から東へ約1kmにわたり、300軒ほどの露店が並ぶ街路市です。1690年(元禄3年)に土佐藩が場所と日取りを定めた市を起源とし、1876年(明治9年)から日曜の開催になりました。田舎寿司を売る露店もあり、人気の店は早くに売り切れると紹介されています。
詳細を見る →JAファーマーズマーケットとさのさと
高知県高知市北御座10-46
高知市北御座にある農産物の直売所です。2026年5月3日・4日には、県が選んだ「土佐の料理伝承人」による土佐田舎寿司の販売会が開かれ、津野町や南国市、高知市の団体が出店しました。営業は9時〜19時と紹介されています。
詳細を見る →NPO法人 日高わのわ会
高知県高岡郡日高村下分1889-1
仁淀川沿いの日高村で活動する団体で、地元の人と一緒に田舎寿司を作る料理教室を開いています。しいたけやナス、みょうがをのせ、柚子としょうがで味付けした酢飯で握ります。農林水産省の「EAT! MEET! JAPAN」2020年の受賞体験として紹介されました。
詳細を見る →| 田舎寿司のもと | 高知のスーパー「末広」が通販で扱う冷凍のセットで、ネタ5種と調味酢、柚子酢が入り、自宅で田舎寿司を作れます。1セットで米1合分、2セット入りで4,666円(送料別)と紹介されています。価格は変わることがあります。購入先を見る →PR |
|---|
よくある質問
Q. 「田舎寿司」という名前は、昔からあったのですか?
A. 農林水産省の資料によると、「土佐田舎寿司」の名前は、1986年に「全国ふるさとおにぎり百選」へ出品された際に付けられたものです。それ以前は「みょうがの寿司」「たけのこの寿司」など、ネタごとの名前で呼ばれていたとされます。
Q. ネタの「りゅうきゅう」とは、どんな野菜ですか?
A. ハスイモという里芋の仲間の葉柄(ようへい、茎のように見える部分)です。琉球(沖縄)から四国に伝わったとされ、その名が付きました。徳島県でも同じ名前で呼ばれています。皮をむいて塩でアクを抜き、甘酢に漬けてネタにします。