
いかなごのくぎ煮は、イカナゴ(スズキ目イカナゴ科の小魚)の稚魚「新子(しんこ)」を、醤油・砂糖・ショウガなどで甘辛く炊き上げた佃煮です。播磨・摂津・淡路など、兵庫県の瀬戸内海沿岸で古くから作られてきました。煮上がった姿が、曲がって錆びた釘のように見えることから「くぎ煮」と呼ばれます。神戸が発祥の地とされ、もとは漁師の家庭で作られていた料理でした。1980年代以降、一般の家庭にも広く知られるようになりました。新子漁は毎年2月末から3月初めに解禁され、漁期は約1か月と短いものでした。地元では「イカナゴの香りがすると春がやってくる」といわれ、春の風物詩として親しまれています。かつては新子をキロ単位で買って家で炊き、親戚や知人に送る家庭が多くありました。しかし近年は漁獲量が激減し、漁期も短くなって、入手が難しくなっています。
発祥
くぎ煮は、瀬戸内海沿岸の漁師の家庭で作られてきた料理です。昭和10年(1935年)に魚谷常吉が著した『滋味風土記』には、すでにくぎ煮が登場しています。発祥の地としては、神戸市長田区の駒ヶ林や、同市垂水区の垂水が挙げられています。とれたての新鮮な新子を炊くと身がすぐに締まり、くるりと曲がった形になります。この姿が錆びた釘に似ていることが、名前の由来です。
歴史
くぎ煮が一般の家庭に広まったのは1980年代以降です。明石市の漁業協同組合の女性たちが家庭向けにレシピを改良し、料理講習会を開くなどして普及に努めました。平成21年(2009年)には「いかなごのくぎ煮振興協会」が設立され、「くぎ煮文学賞」や「くぎ煮コンテスト」を開いています。一方、兵庫県によると、漁獲量は平成29年(2017年)以降2千トンを下回るまで減りました。県は終漁日を早める資源保護に取り組んでいます。
特徴
材料は新子と醤油、砂糖(ザラメ)、ショウガが基本で、みりんや酒を加えることもあります。煮立てた調味料に新子を少しずつ入れ、箸などでかき混ぜずに煮汁が少なくなるまで炊き上げます。混ぜると身が崩れてしまうためです。鮮度のよい新子ほど、頭や腹が欠けずにきれいな曲線に仕上がります。甘辛い味とショウガの香りがご飯によく合い、日持ちがするのも佃煮ならではの良さです。
主な食材
食文化
解禁の時期になると、兵庫県内のスーパーや鮮魚店に新子の売り場が設けられました。1kg以上を大きな釜で一度に炊き、近所で交換したり遠方の家族へ送ったりするのが春の楽しみでした。令和8年(2026年)は大阪湾が自主休漁となり、播磨灘も2日間で漁を終えました。
家庭料理との違い
くぎ煮はもともと家庭で炊く料理で、醤油や砂糖の割合、ショウガの量に「わが家の味」があります。当初は漁師向けの濃い味付けでしたが、家庭向けに改良されて広まりました。店では、手作りで炊き上げたものを100g単位などで量り売りすることもあります。
有名店
座古海産
兵庫県明石市本町1-1-14
明石の魚の棚商店街にある塩干物の店です。地元明石の干しダコやちりめん、ワカメなどとともに、自家製のくぎ煮を扱っています。地元で評価の高い店として知られ、くぎ煮は120gで860円程度です。JR明石駅から歩いて5分ほどです。
| 伍魚福「いかなごのくぎ煮」 | 神戸市長田区に本社を置く珍味メーカー、伍魚福が手がけるくぎ煮です。「くぎ煮」の名は同社の登録商標になっています。約400種の珍味を扱う同社の看板商品の一つで、神戸の春の味を持ち帰れる土産として親しまれています。 |
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よくある質問
Q. なぜ「くぎ煮」という名前なのですか?
A. 炊き上がったイカナゴが茶色く色づき、曲がって錆びた釘のように見えることから名づけられました。新鮮な新子ほど身がすぐに締まって曲がるため、釘のような形がきれいに出ます。釘そのものを入れて煮るわけではありません。