緋の蕪漬(ひのかぶらづけ)は、愛媛県松山市を中心とする松山地域の郷土料理で、伝統野菜の緋のかぶ(伊予緋かぶ)を使った漬物です。薄塩で下漬けしたかぶを、ダイダイ(橙)の果汁から作るだいだい酢と砂糖で本漬けします。表皮が紫色で中が白いかぶが、酢に漬けると鮮やかな緋色に染まり、甘酸っぱく柑橘の香りがする上品な味わいになります。この色は、かぶに含まれるアントシアニンという色素が酢に反応したもので、着色料によるものではありません。江戸時代初期に、松山藩主の蒲生忠知(がもうただとも)が、先祖の地である近江国日野から日野菜かぶを持ち込んだのが始まりとされます。愛媛の民謡「伊予節」にも名物として歌われ、正岡子規も句に詠みました。11月初めから収穫と漬け込みが始まり、冬に食べ頃を迎えます。おせち料理に欠かせない一品で、松山の土産やお歳暮にも用いられます。
発祥
農林水産省の資料によると、江戸時代初期に蒲生忠知が二代目藩主として松山城に入ったことが起源とされます。忠知は近江国日野城主だった蒲生氏の子孫で、先祖の地の日野菜かぶを移植したのが始まりと考えられています。忠知の松山入封は1627年(寛永4年)とされます。一方、1635年(寛永12年)に松山藩主・松平定行の家臣が郷里の近江から種を取り寄せたとする説もあり、起源には諸説あります。
歴史
持ち込まれたかぶは、松山の気候や風土に合うように改良され、現在の緋のかぶになったとされます。細長い日野菜に対して緋のかぶは丸いことから、飛騨の赤かぶや信州かぶに近いとする見方もあります。「伊予節」に松山の名物として歌われ、道後温泉の名物の一つにもなりました。正岡子規は「緋の蕪や膳のまわりも春景色」と詠んでいます。
特徴
緋のかぶは表皮から茎まで濃い紅色で、紅かぶらとも呼ばれます。皮をむいて水に一晩つけてあくを抜き、輪切りにして4〜5日塩漬けしたあと、だいだい酢と砂糖で1週間ほど本漬けします。だいだい酢の代わりに、かぼす酢やゆず酢を使うこともあります。甘酸っぱい味と、パリッとした歯ざわりが特徴です。
主な食材
食文化
年末に各家庭で漬けられ、おせち料理に欠かせない一品とされてきました。緋色が鮮やかだとその年は縁起が良いという言い伝えがあり、特に初物の色が冴えると喜ぶ習慣もあります。松山城が見える場所でないと育たないという伝説も伝わっています。
家庭料理との違い
家庭では冬に漬け込み、そのまま切って食べるほか、千切りにしてサラダにのせたり、刻んでご飯に混ぜたりして楽しまれてきました。酸味が苦手な人は、醤油をかけるとまろやかになるとされます。年末は需要が高まり、家庭用にはパック詰めの商品が好まれています。
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よくある質問
Q. 鮮やかな赤い色は、着色料で付けているのですか?
A. 着色料ではありません。緋のかぶの皮に含まれるアントシアニンという色素が、だいだい酢の酸に反応して緋色に変わります。皮が紫色で中が白いかぶが、漬けるうちに中まで紅色に染まっていきます。
Q. いつ頃に買えますか?
A. 緋のかぶは11月初めから収穫が始まり、同じ頃に漬け込みも行われるため、冬が食べ頃です。年末はおせち料理やお歳暮用に需要が高まります。市販品には期間限定で販売されるものもあるため、季節を確かめて探すとよいでしょう。