
碁石茶(ごいしちゃ)は、高知県長岡郡大豊町(おおとよちょう)で作られている後発酵茶です。後発酵茶とは、茶葉を加熱したあとに微生物の働きで発酵させたお茶のことです。蒸した茶葉にカビを付ける発酵と、桶に漬け込む乳酸発酵という二段階の発酵を経て作られます。発酵した茶葉を四角く切って天日に干す様子が、黒い碁石を並べたように見えることから、この名が付いたとされます。乳酸発酵による爽やかな酸味が特徴です。江戸時代には瀬戸内海の塩飽(しわく)諸島などへ運ばれ、茶粥(ちゃがゆ)に使われました。昭和50年ごろには生産農家が1軒にまで減りましたが、その後に復活しました。2026年(令和8年)3月には「大豊の碁石茶製造技術」が国の重要無形民俗文化財に指定されています。町内の道の駅大杉などで購入できます。
発祥
碁石茶がいつ、どのように作られ始めたのかは、はっきりしていません。江戸時代の土佐の地誌『南路志(なんろし)』の記述から、18世紀には作られていたと考えられています。ルーツは中国雲南省の山岳地帯に伝わる酸茶(さんちゃ)にあるという説があり、製法は室町時代に倭寇(わこう)が伝えたとも語られますが、諸説あります。土佐では、塩と交換される貴重な特産品だったとされます。
歴史
碁石茶は地元ではあまり飲まれず、江戸時代から瀬戸内海の塩飽諸島などへ出荷されました。明治時代後期には、生産量が約2万貫(約75トン)に達したとされます。戦後は生産が縮小し、1966年(昭和41年)には13戸、昭和50年ごろには大豊町の1戸だけになりました。健康によい茶としてテレビで紹介されたことなどから再開する農家が現れ、2010年には大豊町碁石茶協同組合が設立されました。
特徴
原料は山に自生していた山茶(やまちゃ)の流れをくむ茶樹の葉で、現在はヤブキタ種も使われます。茶葉が厚くなる6月末から7月ごろに、若葉だけでなくほとんどの葉を刈り取り、桶で1〜2時間ほど蒸します。蒸した茶葉はむしろの上に積んで1週間から10日ほど寝かせ、カビを付けて空気に触れさせながら発酵させます(好気発酵)。続いて桶に詰め、蒸したときに出た茶汁を加えて重しをし、空気を遮って10〜20日ほど乳酸発酵させます(嫌気発酵)。漬け上がった茶葉は2.5〜4cmほどの四角に切り、晴れた日に数日かけて天日で干します。国内で二段階発酵の茶は、碁石茶と愛媛県西条市の石鎚黒茶(いしづちくろちゃ)だけとされます。発酵は天候や気温に左右されるため、作り手の経験と勘が欠かせません。
主な食材
食文化
瀬戸内海の塩飽諸島にある志々島(ししじま)などでは、碁石茶で季節の野菜と米を炊く「塩飽茶粥」が古くから作られてきました。茶のかすは、渋の成分を生かして漁網や綱の補強にも使われたとされます。産地の大豊町では、碁石茶で炊いたご飯や碁石茶うどんを出す「碁石茶膳」が道の駅で提供されています。
有名店
道の駅 大杉
高知県長岡郡大豊町杉743-1
碁石茶の産地、大豊町にある道の駅で、碁石茶を購入できます。碁石茶で炊いたご飯と碁石茶うどんを組み合わせた「碁石茶膳」も味わえると紹介されています。営業時間は8時〜17時とされます。
詳細を見る →大豊町碁石茶協同組合
高知県長岡郡大豊町黒石343-1
伝統の製法を守るため、町内の生産者がつくった協同組合です。「本場の本物」碁石茶の名で商品を出しており、通販サイトでは50g入りが3,000円台、ティーバッグ6包入りが500円ほどで売られています。価格は変わることがあります。
よくある質問
Q. 碁石茶はどのような味ですか?
A. 乳酸発酵による爽やかな酸味が特徴です。同じ後発酵茶のプーアル茶や阿波晩茶に近い味わいとされ、赤ワインにたとえられることもあります。最初はくせを感じても、飲み続けるうちに慣れる人が多いと紹介されています。
Q. 阿波晩茶や石鎚黒茶とは、どう違うのですか?
A. いずれも四国山地に伝わる後発酵茶です。徳島県の阿波晩茶は、茶葉を煮てもみ、桶に漬ける一段階の発酵で作ります。碁石茶と愛媛県の石鎚黒茶は、蒸した茶葉にカビを付けてから桶に漬ける二段階の発酵で作る点が異なります。
Q. 碁石茶は文化財に指定されているのですか?
A. 2018年に、阿波晩茶や石鎚黒茶とともに「四国山地の発酵茶の製造技術」として、記録作成などの措置を講ずべき無形の民俗文化財に選ばれました。さらに2026年3月24日には「大豊の碁石茶製造技術」として、国の重要無形民俗文化財に指定されています。