ぼてぼて茶は、松江市を中心とする出雲地方に伝わる、泡立てた番茶に具を入れて食べる郷土の軽食です。乾燥させた茶の花とともに煮出した番茶を、穂先の長い茶筅で泡立てると「ぼてぼて」と音がすることが、名前の由来とされます。泡の中におこわや煮豆、刻んだ高野豆腐、漬物などを少しずつ入れ、箸を使わずにいただきます。茶碗の底をとんとんとたたいて具を片寄せ、お茶とともに口へ流し込むように食べるのが独特です。飲むお茶というより、食べるお茶といえます。由来には諸説あり、たたら製鉄の作業場や漁に出る人々の朝食だったという説や、松江藩主・松平治郷(不昧)が飢饉の際に非常食として勧めたという説が伝わります。茶処として知られる松江では、城下町の茶屋で味わえるほか、茶の花入りの番茶も茶舗で売られています。
発祥
由来ははっきりせず、いくつかの説があります。島根の郷土史家・太田直行は、出雲の砂鉄を使うたたら製鉄の作業場や、日本海へ漁に出る人々が、重労働に耐えるために朝食にしたものとしています。また、享保年間(1716〜1736年)に凶作が続いた際、冷や飯に簡素なおかずを加え、泡立てた塩番茶で流し込む食べ方が、領民の食糧対策として広まったともいわれます。
歴史
古くは「桶茶」と呼ばれ、庶民の簡単な食事だったと考えられています。修験者の旅日記『日本九峰修行日記』には、石見・出雲地方の風習として、煎茶を泡立てる記事が見えます。松江藩主・松平不昧の抹茶趣味と結び付けて語られることも多い料理です。いったん忘れられた桶茶は、昭和初期に盛んになった民藝運動とともに出雲名物としてよみがえり、ぼてぼて茶と名付けられたとされます。
特徴
番茶には、10月頃に摘んだ硬い葉を軒先で陰干ししたものを使います。やかんで煎じ、陰干しした茶の花を5〜6個加えて煮立てます。腰の高い茶碗に少し注ぎ、竹を割ったようなささら形の長い茶筅の先に塩をつけて点てると、抹茶のように泡立ちます。具は小さなにぎり飯や赤飯、煮豆、椎茸、高野豆腐、ぜんまいなどを好みで入れます。
主な食材
食文化
松江は茶処・菓子処として知られます。2013年の島根県の指針によると、松江市の緑茶購入額は1世帯当たり年6,036円で、全国平均の4,591円を大きく上回ります(2011年の家計調査)。同じ指針は、ぼてぼて茶のような独自の茶文化が、茶の消費量が多い背景にあると説明しています。
有名店
塩見茶屋
島根県松江市北堀町319
小泉八雲記念館の前、松江城の堀に面した茶屋です。松江名物のぼてぼて茶を出し、テラスから堀川めぐりの遊覧船を眺めながら味わえます。2018年の記事では、十穀米と刻んだ漬物を入れる形で470円と紹介されています。しじみ汁や割子そばもあります。
| 中村茶舗「ぼてぼて茶」 | 明治17年(1884年)に松江で創業した茶舗・中村茶舗が扱う、乾燥させた茶の花入りの番茶です。60g入りで、通販サイトでは432円と表示されています。茶筅で泡立て、漬物や煮豆、ご飯を入れて食べるよう案内しています。購入先を見る →PR |
|---|
よくある質問
Q. 茶道の抹茶と同じものですか?
A. 違います。抹茶ではなく、茶の花を入れて煮出した番茶を使います。茶筅で泡立てる点は似ていますが、ご飯や煮豆などの具を入れて食べる、庶民の軽食として伝わってきました。茶筅の先に少量の塩をつけると、よく泡立つといわれます。