遊山箱

Yusanbako (Tokushima Picnic Boxes)

遊山箱 1

遊山箱(ゆさんばこ)は、徳島に伝わる三段重ねの小さな木製の弁当箱で、「阿波の玉手箱」とも呼ばれます。「遊山」とは、野山へ遊びに出かけることです。桃の節句や菖蒲(しょうぶ)の節句になると、子どもたちはこの箱に料理やおやつを詰めて、山や海、野原へ出かけました。中身は、巻き寿司などのご飯もの、煮しめ、ようかんやういろうなどの甘いものが定番でした。箱の枠に三段の重を収め、上下にスライドする蓋で固定し、上の取っ手を持って運びます。江戸時代から使われたとされ、昭和40年代ごろまで徳島の春の風物詩でした。暮らしの変化で一度は姿を消しましたが、研究者や木工職人の取り組みによって再び作られるようになりました。徳島市の江淵鏡台店は、鏡台作りで培った指物(さしもの)の技で遊山箱を作り、絵付け体験も行っています。

発祥

遊山箱は、徳島の農村の暮らしに根ざした道具です。春の訪れを祝い、休みの日に屋外で食事を楽しむ習わしがありました。はじめは家族全員の料理を運ぶ大きな三段の重箱で、子ども用の小さな箱は江戸時代の終わりごろに現れたと考えられています。農林水産省の資料では「江戸時代より徳島に伝わる」と紹介され、江淵鏡台店は江戸中後期からの風物詩としています。

歴史

明治時代には色を塗った遊山箱が人気となり、ひな祭りと結びつきました。小学生はそれぞれ自分の箱を持ち、節句の日だけそれを使ったといいます。中身を食べ終えると家に戻って詰め直してもらったり、近所の家で入れてもらったりしたとも伝わります。戦後の高度成長期に家族が小さくなり、農業を離れる人が増えると、1960年代以降は使われなくなりました。2006年に食文化研究者の三宅正弘氏が本を出したことが、復活のきっかけになったとされます。

特徴

遊山箱は、小さな角型の重を三段に重ね、箱型の枠に収めた形をしています。蓋は上下にスライドして重を固定し、食べるときは蓋を引き上げて重を取り出します。上部の取っ手で、全体を持ち運べます。重の色は上から黄、赤、緑が基本とされ、伝統的なものは漆塗りでした。現在は素木(しらき)のままのものや藍染めのものも作られ、おせちを詰めたり小物入れにしたりと、使い方も広がっています。

技法

釘を使わないほぞ組み

江淵鏡台店の遊山箱は、釘を使わない指物の技法で組み立てます。部材の一方に作った突起(ほぞ)を、もう一方の穴に差し込んでつなぐ「ほぞ組み」です。徳島で鏡台や和家具を作ってきた木工の技術が、小さな箱の細部に生かされています。

使用される素材

杉漆藍
主な産地
  • 徳島市

職人・工房

江淵鏡台店

徳島市末広1丁目1-40にある木工所である。昭和初期に初代の江渕栄が「江淵木工所」を始め、1972年(昭和47年)に2代目の江淵達人が現在の会社とした。達人は鏡台作りの技を生かし、途絶えていた遊山箱を復活させた。現在は3代目の江淵政男も製作を担い、注文を受けてから一つずつ組み上げている。

公式サイト →

購入方法

江淵鏡台店 オンラインショップ
江淵鏡台店のネットショップでは、遊山箱を受注生産で販売している。オリジナル遊山箱が22,000円程度、藍染めの遊山箱が27,500円程度である。遊山箱文化保存協会が監修した、おせち用の遊山箱と折敷(おしき)のセットもある。購入先を見る →PR
菓游 茜庵(遊山箱のお詰め合わせ)
徳島市徳島町3丁目44にある、徳島城山のふもとの和菓子店である。遊山箱に和菓子を詰めた「遊山箱のお詰め合わせ」を扱い、箱は藍と茜の2種類がある。中身が「銘菓いろいろ」で6,588円、「お日保ち長め」で6,804円と紹介されている(2026年1月時点)。購入先を見る →PR

体験施設

遊山箱絵付け体験 江淵鏡台店

徳島県徳島市末広1丁目1-40

素木の遊山箱に、自由に絵を描いて仕上げる体験です。所要時間は2〜4時間ほどです。料金は資料によって異なり、4,000円程度から5,500円程度(箱代込み)と案内されています。前日までの予約制で、日曜と祝日は休みです。

詳細を見る →

よくある質問

Q. 遊山箱には何を詰めましたか?

A. 一般には、下の段に巻き寿司やいなり寿司などのご飯もの、中段に煮しめなどのおかず、上の段に甘いものを入れました。甘いものは、ようかんや、米粉と砂糖で作る蒸し菓子のういろうが子どもたちに人気でした。

Q. 遊山箱はいつ使うものですか?

A. かつては桃の節句(3月3日)や菖蒲の節句(5月5日)に、子どもたちが野山や海へ出かけるときに使いました。今では、子どもの誕生や結婚の祝いに贈られることもあります。おせちを詰める重箱や、飾りを兼ねた小物入れとしても使われています。

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