雲州そろばん(うんしゅうそろばん)は、島根県仁多郡奥出雲町で作られているそろばんです。江戸時代後期の天保年間、亀嵩の大工・村上吉五郎が、広島のそろばんを手本に地元の材料で作ったのが始まりとされます。その後、横田の職人たちが技法を公開して伝習に努め、明治時代には多くの職人が育って産地が形づくられました。珠の動きがよく、はじくと冴えた高い音がする、堅牢で使いやすいそろばんとして知られ、「質の雲州」とも称されます。現在は珠にツゲやカバ、枠に黒檀などの堅い木を使い、180を超える工程を経て仕上げます。兵庫県小野市の播州そろばんと並んで全国に知られる産地で、1985年(昭和60年)に経済産業大臣指定伝統的工芸品(国の伝統的工芸品)に指定されました。
発祥
雲州そろばんの祖とされるのは、亀嵩の大工・村上吉五郎です。島根県の資料では天保元年(1830年)頃、ほかの資料では天保年間に、吉五郎が広島(安芸地方)のそろばんを手本として作ったのが始まりとされます。当初は梅の木の芯を珠に、煤竹(すすだけ)を珠を通す芯竹に、樫の木を枠に使っていました。地元で手に入る材料を生かしたそろばんだったのです。
歴史
吉五郎の技は一子相伝とされていましたが、のちに横田の高橋常作や村上朝吉らが道具や加工法を工夫し、技法を公開して伝習に努めました。こうして明治時代には多くの職人が育ちます。行商人が「雲州算盤」の名で全国に売り歩き、明治の土地調査の際に官庁へ広く販売されたことで、名が知られるようになりました。昭和30年代には工程の機械化が進み、1985年に国の伝統的工芸品に指定されています。
特徴
雲州そろばんは、珠と軸になる芯竹の仕上げに特に気を配って作られます。よいそろばんとは、珠の動きがよく、はじくと冴えた高い音がするものだとされます。珠の形や穴の大きさをそろえ、珠と軸の間隔を均一に仕上げることで、どの珠も同じように動きます。職人の名をそろばんに刻むことが品質の証しとされ、実用品でありながら精緻な工芸品としての美しさも備えています。
技法
珠削り
ツゲやカバなどの堅い木材を1年以上自然乾燥させ、荒珠の状態でさらに乾かしてから、一つずつ削って菱形の珠に仕上げる技法である。木の硬さに応じて手の力加減を変える必要があり、機械では珠が割れることがあるため手作業が重んじられる。
珠入れと仕上げ
組み立ての工程で、珠の穴に軸の竹を通す作業である。雲州そろばん協業組合では、3.15mmの珠穴に2.93mmの軸を通し、熟練の職人が手の感覚で凹凸を平らに仕上げている。珠と軸の間隔をそろえることが、軽やかな珠はじきにつながる。
手回しろくろ
横田の村上朝吉が考案したとされる、珠を削るための手回しのろくろである。これが開発されて生産量が増えたとされる。この地の製法は雲州式と呼ばれ、手回しろくろなどの製作用具は2006年に国の登録有形民俗文化財となった。
使用される素材
制作工程
- 1
乾燥
珠や枠に使う堅い木材を、長い期間をかけて自然乾燥させる。
- 2
珠作り
木材を荒珠に加工してさらに乾かし、削って菱形の珠に仕上げる。
- 3
軸作り
竹を寸法に合わせて切り、珠がなめらかに動くよう丸く磨く。
- 4
枠作り
枠材を切り出し、軸を通す穴をあけるなど部位ごとに加工する。
- 5
組み立て
珠を軸に通して枠に組み、仮組みと微調整を重ねて仕上げる。
| 主な産地 |
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職人・工房
雲州そろばん協業組合
奥出雲町下横田に工場を置くそろばんメーカー。1997年5月、5社が合併してそろばんの生産販売を一本化した。製作から販売・修理までを一貫して行う。珠作りは、2013年に「現代の名工」に選ばれた伝統工芸士の内田文雄らが担ってきた。
公式サイト →雲州算盤協同組合
奥出雲町横田992-2にある雲州そろばんの産地組合。島根県のふるさと伝統工芸品の製造事業者として登録されている。所在地は雲州そろばん伝統産業会館と同じで、JR出雲横田駅の隣にある。
購入方法
- 雲州そろばん協業組合のオンラインショップ
- 雲州そろばん協業組合は、公式サイトで製品を紹介し、Yahoo!ショッピングの店舗で販売している。公式サイトの掲載では、23桁のスタンダードそろばんがカバ玉で税込6,050円程度から、ツゲ玉で8,800円程度。修理の相談も受け付けている。購入先を見る →PR
- 雲州算盤協同組合
- 奥出雲町横田992-2の産地組合(電話0854-52-0369)。島根県の伝統工芸の紹介ページで製造事業者として案内されており、生産者や製品について尋ねる窓口になる。購入先を見る →PR
体験施設
雲州そろばん伝統産業会館
島根県仁多郡奥出雲町横田992-2
JR出雲横田駅の隣にある展示施設です。名人から現代の名工までの雲州そろばんや、国登録有形民俗文化財の製作道具、日本各地や世界のそろばんを展示しています。予約サイト「じゃらん」では入館料310円程度〜と掲載。開館は9時〜16時30分で、休館日は資料により異なるため事前に確認すると安心です。
詳細を見る →よくある質問
Q. 播州そろばんとはどう違いますか?
A. どちらも国の伝統的工芸品で、並び称される二大産地です。兵庫県小野市の播州そろばんは、農家の職人が部品作りを分担する分業体制で量産してきました。雲州そろばんは、職人が品質にこだわって一貫生産することを特徴とし、「質の雲州」と呼ばれています。