土佐和紙

Tosa Washi (Tosa Handmade Japanese Paper)

土佐和紙 1

土佐和紙(とさわし)は、高知県のいの町や土佐市を中心に作られている手漉き(てすき)和紙です。仁淀川(によどがわ)流域の清らかな水と、繊維が長く絡みやすい土佐楮(とさこうぞ)に恵まれ、薄くても丈夫な紙を生み出してきました。越前和紙・美濃和紙と並ぶ日本三大和紙の一つに数えられ、平安時代の『延喜式(えんぎしき)』にも紙の産地として土佐の名が記されています。書道用紙や障子紙、美術用紙など約300種類が作られるとされます。なかでも「カゲロウの羽」と呼ばれる土佐典具帖紙(てんぐじょうし)は、国内外の文化財の修復に使われています。幕末から明治にかけては、吉井源太が道具を改良して生産を大きく伸ばし、高知は全国有数の紙の産地になりました。1976年(昭和51年)に国の伝統的工芸品に指定されています。いの町紙の博物館や道の駅土佐和紙工芸村くらうどでは、紙漉き体験ができます。

発祥

現存する最古の記録は、927年(延長5年)に完成した『延喜式』です。朝廷へ紙を納める主要な産地の一つとして、土佐の名が挙がっています。930年(延長8年)に土佐守(とさのかみ)として赴任した歌人の紀貫之(きのつらゆき)が、紙づくりを奨励したとも伝わります。16世紀末には、いの町成山(なるやま)で草木で染めた「土佐七色紙(なないろがみ)」が作られ、土佐藩主の山内一豊に献上されたとされます。

歴史

江戸時代、成山は藩の御用紙漉(ごようかみすき)の地に定められ、土佐は越前・美濃と並ぶ紙の三大産地となりました。藩は紙を専売制で統制し、これに抵抗する一揆も起きています。伊野村に生まれた吉井源太は、1860年(万延元年)ごろ大型の簀桁(すけた)を考案し、道具や技術の改良で生産量を2〜3倍に高めたとされます。インクのにじまない紙なども開発し、技術を全国に広めました。明治時代には県内に7,000軒以上の工房がありましたが、現在は20軒ほどとされます。

特徴

原料には楮(こうぞ)・三椏(みつまた)・雁皮(がんぴ)を使い、薄く繊細でありながら丈夫で、しなやかな風合いに仕上がります。代表的な土佐典具帖紙は楮から作る極薄の紙で、透けるほど薄いのに粘り強いのが特徴です。仁淀川町で漉かれる土佐清帳紙(せいちょうし)とともに、記録作成等の措置を講ずべき無形文化財に選ばれています。三椏からは図面用の図引紙(ずびきがみ)も生まれました。

技法

流し漉きと溜め漉き

簀桁で紙料液をすくい、前後左右に揺すりながら繊維を絡ませて層を重ねるのが「流し漉き」です。紙料液を簀の上にためて水を落とす「溜め漉き」もあります。いの町紙の博物館では、職人による流し漉きの実演を見学できます。

土佐典具帖紙の極薄漉き

楮の細かな繊維を、紗(しゃ)を用いた簀で薄く漉き上げる白い薄紙です。明治時代に吉井源太の指導で作られるようになったとされます。タイプライターの原紙や貴金属の包装、コーヒーのろ過などに使われ、海外にも輸出されました。

使用される素材

楮(土佐楮など)三椏雁皮トロロアオイ(ねり)仁淀川流域の水

制作工程

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    煮熟・さらし

    楮などの皮を、アルカリ性の薬剤を加えた水で煮て、不純物を除きながら繊維をやわらかくします。その後、清水にさらしてアルカリ分を洗い流し、必要に応じて色合いを整えます。

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    ちり取り・打解

    職人が手作業で、繊維に残った表皮や節、異物を一つずつ取り除きます。きれいになった繊維を棒でたたいて細かくほぐします。近年は、たたく工程に機械を使うこともあります。

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    紙漉き

    ほぐした繊維を水槽で均一に分散させ、トロロアオイの根から取る粘液「ねり」を加えます。これを簀桁ですくい、流し漉きや溜め漉きで一枚ずつ紙を漉き上げます。

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    脱水・乾燥

    漉いた紙を重ね、重石をのせて一晩置いてから圧搾機で水を抜きます。干板に張って天日で乾かすか、火力で乾燥させます。最後に大きさをそろえて断裁し、状態を確かめて出荷します。

主な産地
  • 吾川郡いの町(伊野・成山・鹿敷など)
  • 土佐市(高岡町など)
  • 吾川郡仁淀川町

職人・工房

浜田兄弟和紙製作所(HAMADAWASHI)

人間国宝だった濱田幸雄さんの孫、浜田洋直さん・治さん兄弟が4代目として土佐典具帖紙の手漉きを受け継いでいます。紙はボストン美術館の浮世絵などの修復に使われてきました。

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田村和紙工房

いの町で100年以上続く工房で、3代目の田村晴彦さんが図引紙や美術紙を漉いています。刷毛で色を重ねて染める和紙作品で多くの賞を受け、1998年に高知県の「土佐の匠」に認定されました。

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購入方法

いの町紙の博物館のショップ
館内のショップでは、便せんや封筒、半紙、巻紙のほか、手漉きの名刺、インクジェットプリンター対応の和紙、和紙で織ったボディタオルなどを扱っていると紹介されています。品ぞろえは変わることがあります。購入先を見る →PR

体験施設

いの町紙の博物館(土佐和紙伝統産業会館)

高知県吾川郡いの町幸町110-1

土佐和紙の歴史や製造工程を展示しています。紙漉き体験は色紙2枚またははがき8枚で400円、所要約60分(10名以上は要予約)と紹介されています。入館料は大人500円、9時〜17時、月曜休館(祝日の場合は翌日)です。JR伊野駅から徒歩約10分です。

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道の駅 土佐和紙工芸村くらうど

高知県吾川郡いの町鹿敷1226

仁淀川沿いの道の駅で、紙漉き実習館「はた舎」では和紙職人による手漉きの実演を見学し、紙漉きを体験できます。料金は1回400円から、水曜休みと紹介されています。価格は変わることがあります。

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土佐和紙 井上手漉き工房

高知県土佐市高岡町乙2776

仁淀川下流域で明治から続くとされる工房です。初心者向けの2時間プランは1人10,000円(3日前までに予約)です。楮の皮むきから紙漉きまで職人が指導する1日プランは1人40,000円(10日前までに予約)と紹介されています。

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よくある質問

Q. 土佐典具帖紙は、なぜ文化財の修復に使われるのですか?

A. 楮の長い繊維で漉いた極薄の紙で、透けるほど薄いのに粘り強く破れにくいためです。傷んだ紙や絵の裏に貼っても絵柄を損ねにくく、ボストン美術館の浮世絵など、国内外の修復で使われていると紹介されています。

Q. 吉井源太はどのような人物ですか?

A. 伊野村(現在のいの町)に生まれ、「土佐紙業界の恩人」と呼ばれる人物です。2026年3月に生誕200年を迎えました。大型の簀桁「土佐の大桁」を考案して生産性を高めたほか、新しい紙を開発し、その技術を全国に広めました。

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