太鼓台刺繍飾り幕

Taikodai Shishu Kazarimaku (Embroidered Curtains for Festival Drum Floats)

太鼓台刺繍飾り幕 11 / 2

画像: Wikimedia Commons

太鼓台刺繍飾り幕(たいこだいししゅうかざりまく)は、愛媛県東予地方の秋祭りで担がれる太鼓台を飾る刺繍の幕です。太鼓台は、やぐらの中に太鼓を据えた祭礼用の山車で、新居浜太鼓祭りや四国中央市の秋祭りで知られます。四方に下がる幕や、布団屋根を締める「布団締め」には、金糸を使った立体的な刺繍で龍や鷹、獅子、武者などが表されます。愛媛県東予地方から香川県、兵庫県にかけての太鼓台は、こうした豪華な立体刺繍で飾られるのが特徴とされます。飾り幕は一人の職人がほぼすべての工程を担い、一つずつ受注で作られます。愛媛県の伝統的特産品に指定されており、問い合わせ先は四国中央市の縫師(ぬいし)とされています。2024年(令和6年)には、飾り幕に使われる「縫箔(ぬいはく)製作」の技術が、四国中央市の無形文化財に指定されました。

発祥

太鼓台は、四本柱の上に布団屋根を重ねた祭礼屋台の一種で、「布団太鼓」などとも呼ばれます。江戸時代に上方で生まれ、19世紀前半に今の形が西日本各地へ伝わったとされます。愛媛県内では、西条市より東の地域で「太鼓台」と呼ばれます。太鼓台の分布は三重県を東の端として、近畿や山陽、四国に多く、九州にも点在します。

歴史

新居浜市の資料によると、明治初期の太鼓台は高さ約3メートルで、今の子ども太鼓台ほどの大きさでした。別子銅山の発展で地域が豊かになると、各地区が豪華さや大きさを競うようになります。明治中期から昭和初期にかけて今とほぼ同じ大きさになり、飾り幕も縫いの技術の発達とともに豪華になりました。新居浜の太鼓台は、はじめ「神輿太鼓(みこしだいこ)」と呼ばれていたとされます。

特徴

新居浜の太鼓台では、布団屋根の四面に2枚一対の龍の布団締めが計8枚付き、その下に上幕(うわまく)と高欄幕(こうらんまく)が四面で計8枚付きます。図柄は龍や鷹、獅子などの禽獣(きんじゅう)、御殿、物語や芝居を題材にした武者絵などです。図柄には、太鼓台を持つ地区の思いが込められています。

技法

立体刺繍(高縫い)

下地を盛り上げてから金糸をかけ、図柄を立体的に浮かび上がらせる刺繍です。「高縫刺繍」と呼ばれる伝統技法とされます。龍の鱗は綿で作るのが従来の方法で、鱗を一枚ずつ別に縫って取り付ける「差し鱗(さしうろこ)」という技法もあります。

縫箔(ぬいはく)製作

太鼓台の飾り幕に使われる伝統技術で、2024年に四国中央市の無形文化財に指定されました。旧伊予三島市の縫師・山下八郎さんは、それまでの常識を覆す立体感と迫力で、新居浜の太鼓台の幕を発展させたとされます。

天幕・房と幕の取り合わせ

新居浜の太鼓台では、頂上の天幕(てんまく)は宇宙を、黒い「くくり」は雲を、房は雨を表すとされます。四本柱は東西南北を表し、その間を刺繍の上幕と高欄幕が飾ります。太鼓台は高さ約5.5メートル、重さ約3トンにもなります。

使用される素材

金糸(本金糸を含む)色糸布地綿
主な産地
  • 四国中央市
  • 新居浜市

職人・工房

縫師 高橋直孝

四国中央市川之江町の縫師です。2005年(平成17年)にえひめ伝統工芸士、2020年(令和2年)に「現代の名工」に認定され、2023年には黄綬褒章を受けました。2024年に、市指定無形文化財「縫箔製作」の技術保持者に認定されています。

株式会社金鱗(きんりん)

新居浜市大生院(おおじょういん)に本社を置く縫屋で、2000年に設立されました。代表の合田武史さんは、子どものころから独学で立体刺繍に取り組んできたと紹介しています。太鼓台の飾り幕や、だんじり・布団太鼓の水引幕の製作と修理を手がけています。

公式サイト →

購入方法

縫師・縫屋への注文
飾り幕は一点ずつの受注製作です。金鱗では、太鼓台の飾り幕の納期を2〜3年としています。個人の自宅用の飾り幕は1枚50万円程度から、ミニチュアの房は1本15,000円程度からと紹介されています。購入先を見る →PR

体験施設

あかがねミュージアム(太鼓台ミュージアム)

愛媛県新居浜市坂井町2-8-1

市内各地で実際に運行されている太鼓台を、入れ替えながら展示しています。ほぼ一年中、実物の太鼓台と飾り幕を間近で見られます。運行時の写真や法被(はっぴ)も展示されています。月曜日は休館です。

よくある質問

Q. 太鼓台はいつ、どこで見られますか?

A. 新居浜太鼓祭りは例年10月16日から18日に行われ、市内には50台余りの太鼓台があります。四国中央市では、川之江地区の秋祭りが例年10月13日から15日に開かれます。祭りの時期以外は、新居浜市のあかがねミュージアムで実物を見られます。

Q. 飾り幕を1枚作るのに、どのくらいかかりますか?

A. 縫屋の金鱗では、太鼓台の飾り幕の納期を2〜3年、水引幕を1〜3年としています。一人の職人がほぼすべての工程を手がけるため、長い時間がかかります。個人の自宅用の飾り幕でも、1年から1年半ほどかかるとされています。

Q. 古い飾り幕は残っていますか?

A. 愛媛県歴史文化博物館は、明治時代後期の太鼓台の布団締め8枚を保管しています。香川県坂出市の祭りで使われていたもので、大正10年ごろに新居浜方面から買い入れたと伝わります。今の新居浜の太鼓台より小ぶりで、太鼓台の移り変わりを知る資料とされます。

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