野鍛冶刃物

Nokaji Hamono (Shingu Hand-Forged Blades)

野鍛冶刃物 1

野鍛冶刃物(のかじはもの)は、和歌山県新宮市で作られている鍛造(たんぞう)の刃物です。野鍛冶とは、農具や山仕事の道具など、暮らしに使う刃物を打ち、修理もする鍛冶屋のことです。新宮市は熊野川の河口にあり、かつては川の舟運で運ばれる木材や炭の集積地として栄えました。林業に携わる山師が集まり、その道具を作る鍛冶屋が町に軒を連ねました。1910年ごろには30軒ほどの鍛冶屋があったといわれます。作られるのは、斧や鉈(なた)、下刈鎌(したかりがま)など林業向けの刃物が中心です。「山で使う道具は木の節に負けないよう硬くないといけない」という考えのもと、鉄と鋼を炉で熱して鎚で打ち鍛えます。2002年(平成14年)に和歌山県知事指定の郷土伝統的工芸品となりました。

発祥

新宮市は熊野川の豊かな水運に支えられ、熊野材と呼ばれる木材の集積地として製材業が大いに栄えました。そのため林業に従事する山師がこの地に集まり、彼らが使う道具を作る鍛冶屋が軒を連ねるようになりました。山仕事に欠かせない斧や鉈を打つ野鍛冶が、こうして町の暮らしに根づいていきます。

歴史

1910年ごろには30軒ほどの鍛冶屋が並び、大正5年(1916年)には約30軒が加わる鍛冶職人の組合もあったといいます。林業の最盛期には、鍛冶屋は桶屋の日当を朝飯前に稼ぐといわれるほどでした。昭和30年ごろからチェーンソーが普及し、手打ちの刃物が使われる機会は次第に減りました。市内に残る元鍛冶町・新鍛冶町という地名が、往時のにぎわいを伝えています。

特徴

斧や鉈、下刈鎌など、林業で使う刃物が中心です。斧の両面には細い溝が彫られ、片面に3本、もう片面に4本あります。3本の側は「ミキ」と呼ばれてお神酒を表し、4本の側は「ヨキ」と呼ばれて山海の収穫物を表すとされます。木を伐る前に斧を木に立てかけ、山への感謝と作業の安全を祈ったといいます。裏表で7本の溝を北斗七星に見立てる説もあります。

技法

鍛接

鉄材と鋼材を、熱と圧力を加えて一つに接合する技法。スプリングハンマーと手槌を使って打ち合わせる。刃となる鋼を鉄と組み合わせることで、山仕事に耐える刃物の土台ができる。

焼き入れ・焼き戻し

730〜850℃の炭火で熱して水で急冷し、刃を硬くする。さらに150℃で焼き戻して粘りを出す。大川鍛冶では、父の代に同時に行っていた焼き入れと焼き戻しを分けて行い、より確実に仕上げているという。

使用される素材

鉄鋼コークス・炭(燃料)

制作工程

  1. 1

    切断・鍛接

    鉄鋸(てつのこ)とたがねで鉄材や鋼材を切り分ける。続いてスプリングハンマーと手槌を使い、鉄材と鋼材を熱と圧力で接合する。

  2. 2

    鍛造成型

    コークス炉で真っ赤に熱した鉄を引き出し、スプリングハンマーと手槌で打って形を作る。機械を使っても、最後は職人が鎚を振るう手仕事である。

  3. 3

    仕上げ

    半日かけて素材を冷ましたあと、やすりとグラインダーで削って形を整える。

  4. 4

    焼き入れ・焼き戻し

    730〜850℃の炭火で熱してから水で急冷し、硬くする。さらに150℃で焼き戻し、刃物に粘りを出す。

  5. 5

    刃付け

    30分ほどかけて砥石で刃を立て、刃物として仕上げる。

主な産地
  • 新宮市

職人・工房

大川鍛冶(大川治)

新宮市相筋にある野鍛冶。大川治は2004年度(平成16年度)に和歌山県名匠に選ばれ、2013年の論文では新宮市最後の鍛冶職人と紹介された。斧や鉈、鍬・鎌などの農林業の刃物から、鰻掴みのような漁具まで手がける。

購入方法

大川鍛冶(新宮市の工房)
和歌山県新宮市相筋1丁目にある工房で、日本伝統文化振興機構の紹介では野鍛冶刃物の展示場所として案内されている。斧や鉈の注文や修理の相談は、電話(0735-22-5066)で問い合わせるとよい。

よくある質問

Q. 野鍛冶とは何ですか?

A. 農具や山仕事の道具など、地域の暮らしに使う刃物を打ち、修理も引き受ける鍛冶屋のことです。新宮では林業が盛んだったため、斧や鉈など林業向けの刃物が中心になりました。

Q. 今も手で打って作っているのですか?

A. 以前は手で鎚を持って鉄や鋼を叩き伸ばしていましたが、現在はスプリングハンマーなどの機械も使います。それでも最後は、燃え盛る炉から真っ赤に焼けた鉄を引き出し、鎚で打つ職人の手仕事です。

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