讃岐のり染

Sanuki Norizome (Sanuki Paste-Resist Dyeing)

讃岐のり染 1

讃岐のり染(さぬきのりぞめ)は、もち米で作った糊(のり)で模様を防染し、色を差して染め上げる香川県の染物です。糊を置いた部分には染料が入らず、色同士が混ざらないため、くっきりと鮮やかな色彩に仕上がります。香川県によると、江戸時代に高松の城下で発展したとされます。現在はのれんや旗、幟(のぼり)、法被(はっぴ)のほか、獅子舞の胴を覆う布「油単(ゆたん)」などが作られています。1986年度(昭和61年度)に香川県の伝統的工芸品に指定され、産地は高松市、琴平町、観音寺市です。高松市の大川原染色本舗は1804年(文化元年)創業と伝わる老舗です。琴平町の染匠吉野屋は、四国こんぴら歌舞伎大芝居の幟を第1回から染めています。

発祥

香川県は、讃岐のり染が江戸時代に高松の城下で発展したと紹介しています。高松市の大川原染色本舗の歩みによると、1804年(文化元年)に初代が高松に出て、町の紺屋(こうや:染物屋)で学び、型による藍染めを生業にしました。同店は、米を食べる文化から生まれた糊の技法が、香川の獅子舞やうどんの文化に支えられて育ってきたと説明しています。

歴史

大川原染色本舗では、3代目の久次郎が初めて筒描きを手がけ、4代目の熊造が本格的に始めたと伝わります。戦後は5代目が仕事場を高松市築地町に移して復興を図り、6代目の静雄は1978年に米国ワシントン大学へ客員講師として招かれました。琴平町の染匠吉野屋は1912年(大正元年)の設立で、1985年に始まったこんぴら歌舞伎の幟を染め続けています。讃岐のり染は昭和61年度に県の伝統的工芸品となりました。

特徴

大きな特徴は、渋紙(しぶがみ)の筒袋に入れた糊を絞り出し、布に直接模様を描く「筒描き(つつがき)」です。手の動きがそのまま線になるため、のびやかで温かみのある仕上がりになります。糊で囲んだ内側には刷毛で色を差し、藍がめに浸けて染める方法も使われます。獅子舞の油単のような大きなものは、部分ごとに染めてから縫い合わせて仕立てます。

技法

筒描き(糊置き)

渋紙で作った筒袋に糊を入れ、先から絞り出して布に模様の輪郭を描きます。染匠吉野屋の大野篤彦さんは、一定の太さで線を引くには熟練の技が要り、糊の硬さを決める原料の配合にも職人ごとのこだわりがあると話しています。

色差しと蒸し

糊で囲んだ部分に、形や大きさの違う刷毛を使い分けて色を差します。大川原染色本舗では、乾き方が色の出方に影響するため、エアコンを使わずに自然な状態で色差しと乾燥を行います。その後、高温で蒸して染料を定着させます。

使用される素材

もち米(糊の主原料)石灰・食塩・糠(糊に混ぜる材料)渋紙(糊を入れる筒袋)染料・藍布地

制作工程

  1. 1

    精練とのり置き

    布を染まりやすくするため、あらかじめ精練(せいれん)しておきます。次に、染め残したい部分に、箇所ごとに合った筒を使い分けて糊を置きます。この糊の線が模様の輪郭になります。

  2. 2

    色差し

    糊で囲んだ内側に、刷毛で色を差していきます。のり置きと同じく、さまざまな形や大きさの刷毛を使い分けます。藍がめに浸けて藍色に染める方法もあります。

  3. 3

    乾燥と蒸し

    乾いたときの色の出方に影響するため、エアコンなどを使わず、できるだけ自然な状態で乾かします。乾いたら高温で布を蒸し、染料を定着させて発色をよくします。

  4. 4

    水洗いと天日干し

    糊と余分な染料を水で洗い落とすと、糊を置いていた部分が白く浮かび上がります。大川原染色本舗では、天気のよい日を選んで作業場の中庭で干しています。

  5. 5

    縫製

    乾いた布を、のれんや旗、法被、油単などに仕立てます。油単のような大きなものは部分ごとに染めておき、最後に図柄がずれないよう縫い合わせて一枚に仕上げます。

主な産地
  • 高松市
  • 琴平町
  • 観音寺市

職人・工房

大川原染色本舗

高松市築地町にある染物店で、1804年(文化元年)創業と伝わる。7代目の大川原誠人さんは香川県伝統工芸士。のれん、のぼり、旗、神社幕、法被、獅子舞の油単などを染めており、油単に使う糊には香川県産の米を使っている。

公式サイト →

染匠 吉野屋

琴平町の染物店で、1912年(大正元年)の設立。4代目の大野篤彦さんは香川県伝統工芸士。2019年の取材では、四国こんぴら歌舞伎大芝居の幟を毎年80〜150本ほど手がけ、1本の完成に1週間ほどかかると紹介されていた。法被や大漁旗、暖簾も一点ずつ手作業で染めている。

購入方法

大川原染色本舗(店舗・注文)
高松市築地町9-21の店舗で注文を受け付けている。のれん、のぼり、旗、横断幕、法被、壁掛け、獅子舞の油単のほか、小物も扱う。公式サイトでは、注文の流れやデザインデータの入稿方法も案内している。購入先を見る →PR
染匠 吉野屋(琴平町)
琴平町旭町286に店舗がある。2019年の取材時点では、こんぴら歌舞伎の幟を仕立て直したトートバッグ「KONBAG」や、セレクトショップとの共同企画の商品も作っていた。幟の鮮やかな柄を日常で楽しめる品である。

よくある質問

Q. 獅子舞の「油単(ゆたん)」とは何ですか?

A. 香川の獅子舞で、獅子頭に付けて胴を覆う大きな布のことです。昔は油を染み込ませた和紙を使っていたことが、名前の由来とされます。香川県は今も多くの獅子舞が残る土地で、油単づくりが讃岐のり染の技術を支えてきました。

Q. 讃岐のり染の体験はできますか?

A. 常設の体験教室は確認できませんでしたが、催しで体験できる機会があります。2023年秋には大川原染色本舗によるハンカチの色差し体験(3,300円)が高松市内で開かれました。2026年3月に栗林公園商工奨励館で開かれた県の伝統工芸の催しにも、同店が出展しています。

#染物#筒描き#防染#もち米の糊#獅子舞#油単#のれん#こんぴら歌舞伎#高松市#琴平町