1 / 2西条だんじり彫刻は、愛媛県西条市の秋祭り「西条まつり」で担がれる、だんじり(屋台)を飾る木彫りです。西条まつりは市内の4つの神社の祭礼をまとめた呼び名で、毎年10月にだんじりやみこし、太鼓台など150台余りの屋台が奉納されます。中でも伊曽乃神社(いそのじんじゃ)の祭礼は規模が大きく、77台のだんじりと4台のみこしが奉納されるとされます。だんじりはヒノキで造られた高さ約5メートルの屋台で、神話や中国の故事、武者絵、花鳥などが、透かし彫りの彫刻で表されます。くぎを使わず、込み栓(こみせん)やくさびで組み立てるのも特徴です。この彫刻の技は、2002年(平成14年)に愛媛県の伝統的特産品に指定されました。市内では、江戸時代からだんじりを手がけてきた家の職人が、今も新しいだんじりを造り続けています。
発祥
伊曽乃神社の祭礼は江戸時代中期から続き、約300年の歴史があるとされます。1761年(宝暦11年)の文献に、現在の「御供(おとも)だんじり本町」と思われる屋台が初めて登場します。その後、だんじりやみこしの数は少しずつ増えていきました。だんじりは、神社の御神輿(ごしんよ)のお供をする形で町を練り歩きます。
歴史
現存する古いだんじりには、1853年(嘉永6年)に造られた東光だんじりや、1862年(文久2年)の旧魚屋町だんじりがあります。どちらも棟梁の魚屋町萬吉(うおやまちまんきち)が手がけたとされます。昭和50年代ごろからは、町内ごとにだんじりを新しく造る「新調ブーム」が起こりました。こうして、だんじりづくりの技が受け継がれてきました。祭礼日は、旧西条市が誕生した1941年(昭和16年)に、現在の10月15・16日に定まりました。
特徴
だんじりは二階または三階造りで、白木、黒塗り、朱塗りの3つのタイプがあります。重さは500〜800キロほどです。欄間(らんま)彫刻と呼ばれる透かし彫りで物語の場面を立体的に表し、動物の目にガラスをはめ込むこともあります。だんじりづくりは棟梁、絵師、彫刻師、塗師(ぬし)が分担し、彫刻は町内の思いと作り手の個性が出る部分とされます。
技法
透かし彫り
板の裏まで彫り抜いて、図柄を立体的に浮かび上がらせる技法です。西条だんじりでは、神話や中国の春秋・戦国時代の話、武者絵、花鳥などが表されます。形を整える「荒彫り」や龍の鱗を彫る作業などを、見習いのころから重ねて技を身につけるとされます。
くぎを使わない組み立て
だんじりの組み立てには、くぎなどの金物を使いません。木をつなぐ込み栓やくさびで締め固めます。祭りが終わると解体し、各町内や保存会が専用の収納箱に入れて保管します。毎年、祭りの前に組み立て直して使います。
使用される素材
制作工程
- 1
打ち合わせ・契約
だんじりの新調は、依頼を受けてから二年計画で進めます。最初の一年は町内の代表と話し合いを重ね、形や彫刻の主題を決めます。予算と照らし合わせながら、契約書を作ります。
- 2
製作
設計にもとづいて大工が骨組みを造り、彫刻師が各部の彫刻を彫ります。江戸時代の設計図には、真上から見た図と真横から見た図の2種類があったとされます。石水家には、江戸時代のだんじりの設計図や下絵が今も伝わっています。
- 3
仮組・お披露目
二年目の春から夏にかけて「仮組」を行い、町内の人と不具合や細かな点を確かめます。幕や提灯をつけて最終の調整をし、祭り前の10月初めに「お披露目」の式典を行います。
| 主な産地 |
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職人・工房
石水彫刻所(石水信至)
西条市朔日市にある彫刻所で、石水信至さんはえひめ伝統工芸士のだんじり彫刻師です。市内に130台以上あるだんじりのうち、30台以上を手がけてきました。1997年に地域伝統芸能大賞を受け、2021年には愛媛県知事表彰を受けています。
公式サイト →六代目 石水綱一
石水家の六代目で、2004年(平成16年)に23歳で彫刻師の仕事に就きました。叔父である師匠のもとで「荒彫り」から経験を積みました。2010年には、三国志を題材にした北川だんじりの彫刻を初めて任されています。
石水家(魚屋町萬吉の家系)
元禄期から続く西条の宮大工、山本家の棟梁「魚屋町萬吉」を初代とする家系です。1853年(嘉永6年)に上横町の屋台を建造して以来、だんじりの修理や建造を手がけてきたとされます。家には江戸時代のだんじりの設計図や下絵が伝わっています。
よくある質問
Q. だんじり彫刻はどこで見られますか?
A. 西条まつりの期間中、市内各地を練り歩くだんじりで見られます。伊曽乃神社の祭礼は例年10月15日と16日です。16日夕方の加茂川での「川入り」では、土手に並んだ約80台のだんじりが提灯を灯す様子が見どころとされます。
Q. 西条まつりのだんじりは何台ありますか?
A. 西条まつり全体では、だんじりやみこし、太鼓台を合わせて150台余りが奉納されます。伊曽乃神社の祭礼だけで、だんじり77台とみこし4台が奉納されるとされ、一つの神社に奉納される数としては全国に例がない規模といわれます。