大洲和紙(おおずわし)は、愛媛県喜多郡内子町の五十崎(いかざき)地区を主な産地とする手すき和紙です。清流・小田川(おだがわ)のほとりで、伝統の「流し漉き(ながしずき)」の技法によって作られています。江戸時代には大洲藩の保護を受け、藩の専売品として発展しました。元禄年間(1688〜1704年)に、越前(現在の福井県)から来た人物が紙すきを指導したと伝わります。薄くてもしなやかで、漉きむらが少ないとされ、書道用紙や障子紙、地元の大凧合戦で揚げる凧の紙などに使われています。かな書道用の紙は「日本一」と評されることもあります。1977年(昭和52年)10月に国の伝統的工芸品に指定されました。明治時代には400軒以上あった手すきの家は激減し、現在は五十崎に2軒、西予市に1軒の工房が残るとされます。天神産紙工場では、工房見学や紙すき体験ができます。
発祥
起源ははっきりせず、平安時代の『延喜式』にも記述が見られるとする説があります。元禄年間には、大洲藩が越前和紙の技術者を招いたという記録が残っています。越前出身の宗昌禅定門(そうしょうぜんじょうもん)が藩の紙すきの師として技術を指導したと伝わり、香林寺には「大洲領紙漉師越前国人」と刻まれた墓碑があるとされます。藩主の奨励によって、紙すきが産業として根付いていきました。
歴史
江戸時代には大洲藩の専売品として生産され、五十崎には楮(こうぞ)役所や紙役所が置かれました。明治時代には、農家の副業も含めて400軒以上が紙すきに携わったとされます。一時は品質の低下で評判を落としましたが、明治中期に三椏(みつまた)を使った良質な書道用紙が開発され、名声を取り戻したとされます。昭和に入ると洋紙の普及で需要が減り、1977年に国の伝統的工芸品に指定されました。
特徴
原料には楮や三椏、麻などを使います。薄くてもしなやかで、保存性や耐久性に優れるとされます。書道用紙は全国の書家に使われ、障子紙は寺院や茶室にも用いられてきました。丈夫さを生かし、五十崎の伝統行事「大凧合戦」の凧紙にもなっています。2枚を重ねた厚手の泉貨紙(せんかし)は、東大寺二月堂のお水取りで使う紙子(かみこ)の材料になっているとされます。
技法
流し漉き
紙料(しりょう)を溶かした水を簀桁(すけた)ですくい、前後に揺らしながら繊維を絡ませて紙を漉く技法です。大洲和紙は、小田川の豊かな水を使い、この流し漉きで一枚ずつ手で作られています。紙すきには大量の水が要るため、産地は川沿いに発展しました。
ギルディング和紙
ギルディングは、金属箔で装飾する西洋の技法です。五十崎では2008年(平成20年)設立の五十崎社中が、この技法を手すき和紙に取り入れました。金属の酸化による独特の色合いを生かし、壁紙や小物として国内外に発信されています。
使用される素材
| 主な産地 |
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職人・工房
天神産紙工場
1919年(大正8年)創業の和紙工房で、最盛期には25槽の漉き舟を備えていたとされます。障子紙や書道用紙、雲竜紙、はがきなどの大洲和紙を、今もすべて手すきで作っています。所在地は内子町平岡甲1240-1です。
公式サイト →五十崎社中
2008年に五十崎で設立された和紙の工房です。創業者の齋藤宏之さんがギルディングの技法を和紙に取り入れ、壁紙や小物などに使えるギルディング和紙を手がけています。所在地は内子町五十崎甲1620-3です。
購入方法
- 大洲和紙会館(天神産紙工場併設)
- 天神産紙工場に併設された和紙製品の直売所で、書道半紙や手もみ和紙などを扱っています。和紙は1枚100円ほどからと紹介されています。工場が休みの土・日曜、祝日も営業しています(お盆と年末年始は休み)。購入先を見る →PR
- 五十崎社中
- 内子町五十崎甲1620-3に拠点を置き、金属箔で装飾したギルディング和紙や、齋藤宏之さんが考案した「こより和紙」などを手がけています。カードケースなどの小物にも加工され、伝統的な書道用紙や障子紙とは異なる大洲和紙の楽しみ方ができます。
体験施設
天神産紙工場
愛媛県喜多郡内子町平岡甲1240-1
約40×55cmの和紙を漉く紙すき体験は1人1,650円(小中高生1,100円)で、平日のみ、2名からの予約制です。工場見学は550円で予約不要です。金属箔を使うギルディング体験(1,650円)もあります。
詳細を見る →五十崎凧博物館
愛媛県喜多郡内子町五十崎甲1437
世界各地の凧を集めた博物館で、大洲和紙とともに歩んできた五十崎の凧文化を紹介しています。2022年の紹介記事では、入館料は一般300円、凧作り体験は2,000円とされていました。月曜休館(祝日は開館)です。
よくある質問
Q. 内子町で作られているのに、なぜ「大洲和紙」と呼ぶのですか?
A. 産地の五十崎は、江戸時代には大洲藩の領内でした。紙は藩の専売品「大洲和紙」として扱われたため、その名が今も使われています。
Q. 大洲和紙と「いかざき大凧合戦」にはどんな関係がありますか?
A. 五十崎の伝統行事「いかざき大凧合戦」は400年の歴史を持つとされ、愛媛県の無形民俗文化財に指定されています。凧には丈夫な大洲和紙が使われ、五十崎の凧文化は和紙づくりとともに歩んできたとされます。