尾鷲わっぱ

Owase Wappa (Owase Bentwood Lacquerware)

尾鷲わっぱ 1

尾鷲わっぱ(おわせわっぱ)は、三重県尾鷲市で作られている曲げ物の漆器です。良質な尾鷲ヒノキの薄板を曲げ、桜の皮で継ぎ目を綴じて、天然の漆で仕上げます。尾鷲では江戸時代初期から林業が盛んになり、山で働く人々が木の曲げ物を食器として使っていました。同じころ盛んになったカツオ漁の漁師たちも、わっぱを愛用したといわれます。現在の作り手は、1887年(明治20年)創業の「ぬし熊」の四代目・世古効史さんただ一人です。木地づくりから漆塗りまでの45工程を一人で手がけ、一つの完成に1か月以上かかります。注文から1年待ちともいわれますが、「100年もつ」とされる丈夫さが評判です。1994年(平成6年)に三重県指定伝統工芸品となり、2013年(平成25年)には製作技術が尾鷲市の無形文化財に指定されました。

発祥

尾鷲わっぱの製作の起源ははっきりしていません。尾鷲市によると、江戸時代初期に尾鷲の林業が振興すると、山林で働く人が急増しました。その人々の食器として、木製の曲げ物(わっぱ)がすでに使われていたといいます。同じころカツオ漁も盛んになり、漁師たちも食器としてわっぱを愛用しました。山と海の仕事を支える日用の器として、尾鷲の暮らしに根づいてきたのが始まりです。

歴史

ぬし熊は、江戸時代からのわっぱ屋「ぬしや」から分家し、1887年(明治20年)に初代の熊市さんが創業しました。初代が作った丸型の弁当箱は今も残り、使える状態だといわれます。四代目の世古効史さんは22歳で家業に入り、父の仕事を見て技を身につけました。1994年10月に三重県指定伝統工芸品となり、世古さんは2005年に「森の名手・名人」に認定されています。2013年8月には製作技術が尾鷲市の無形文化財に指定されました。

特徴

尾鷲わっぱには、厳選した尾鷲ヒノキの最もよい部分だけが使われます。美しい木目と緻密な年輪を持つ材を薄く割り、水に浸して柔らかくしてから曲げます。継ぎ目は桜の皮で綴じ、接着剤は一切使いません。弁当箱は、普通のものより蓋が大きく深いのが特徴とされます。仕上げには、本漆を刷毛で塗り重ねて光沢を出す「本塗り」と、木の風合いを生かす「摺り漆塗り」があります。ヒノキと漆には殺菌作用があるとされ、ご飯が傷みにくいのも魅力です。

使用される素材

尾鷲ヒノキ桜の皮竹釘天然漆

制作工程

  1. 1

    木取り・削り

    尾鷲ヒノキを荒木取りし、小断ちや荒削り、かんな仕上げを経て、曲げ物に使う薄い板に整える。木目と年輪の状態を見ながら材を選ぶ。

  2. 2

    曲げ

    割った板を水に浸けて柔らかくし、輪の形に曲げる。木目を生かしながら、割れないように力を加えていく。

  3. 3

    とじ

    桜の皮をかんなで削って薄く整え、継ぎ目を縫い合わせる。世古さんは先代までより綴じ穴の数を増やし、強度を高めている。

  4. 4

    底入れ

    底板を削り出して仕上げ、本体にはめて竹釘で留める。釘の頭を切りそろえると木地が完成する。

  5. 5

    漆塗り

    コクソ(隙間を埋める下地材)や錆下地を施し、一番摺りから六番摺りまで漆を重ねる。内側を朱で塗り、縁を付けて仕上げる。

主な産地
  • 尾鷲市

職人・工房

ぬし熊(世古効史)

1887年創業の尾鷲わっぱの工房で、尾鷲市向井に店を構える。東紀州でわっぱを作る唯一の店で、四代目の世古効史さんが45の工程をすべて一人で手がける。丸型や小判型の弁当箱、おひつなどを作っている。

公式サイト →

購入方法

ぬし熊(店舗・オンラインショップ)
尾鷲市向井493-15の店舗のほか、オンラインショップでも注文できる。手作業のため完成まで時間がかかり、1年待ちともいわれる。2023年の報道では、摺り漆塗りの丸型弁当箱(大)が16,500円とされた。地方発送にも対応している。購入先を見る →PR

よくある質問

Q. 尾鷲わっぱの弁当箱は、なぜ蓋が大きいのですか?

A. 林業に携わる人々の弁当箱だったためといわれます。早朝から働く人は蓋と本体の両方にご飯を詰め、先に蓋の分を食べたと伝わります。昼には空いた蓋に水を汲み、焼いた石で湯を沸かして味噌を溶き、その場で味噌汁を作ったという話が残っています。

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