奥出雲のたたら製鉄

Okuizumo Tatara (Traditional Japanese Iron Smelting)

奥出雲のたたら製鉄 1

画像: Wikimedia Commons

たたら製鉄は、粘土で築いた炉に砂鉄と木炭を入れ、鞴(ふいご)で風を送りながら鉄をつくる、日本で独自に発達した製鉄法です。島根県の奥出雲地方は砂鉄と森林資源に恵まれ、古くから製鉄が盛んでした。島根県の資料によると、明治中期までは日本の鉄需要の約7割をこの地域で賄っていたとされます。近代になると洋式製鉄に押されて途絶えましたが、1977年(昭和52年)に日本美術刀剣保存協会(日刀保)が奥出雲町大呂で「日刀保たたら」として復活させました。現在、日本で唯一伝統のたたら製鉄を続ける操業所で、冬に三昼夜をかけて炉を燃やし、日本刀の材料となる玉鋼(たまはがね)をつくって刀匠に供給しています。2016年には、安来市・雲南市・奥出雲町の鉄づくりの歴史が日本遺産「出雲國たたら風土記」に認定されました。たたら製鉄は工芸品そのものではなく、工芸の素材を生み出す技術です。

発祥

奥出雲地方は、『古事記』に記されたヤマタノオロチ伝説の地として知られ、古くから鉄づくりが盛んでした。原料の砂鉄は、山を切り崩した土砂を水に流し、重い砂鉄を沈めて選り分ける「鉄穴流し(かんなながし)」で集められました。下流の川が濁るため、作業は農閑期にあたる秋の彼岸から春の彼岸の間に行われたといいます。燃料の木炭は、地域の豊かな森林から得られました。

歴史

1800年代後半になると、西洋の製鉄技術の流入と鉄の需要の急増で、たたら製鉄所は競争に勝てず、1920年代に閉鎖されました。1933年に軍刀用の玉鋼をつくるため一時復活しましたが、戦後に再び廃止されます。残った玉鋼は5〜6トンほどしかなく、日刀保は文化庁の支援を受け、1977年に奥出雲の高殿(たたら製鉄の作業場)に粘土の炉を築いて操業を再開しました。以来、技術の保存伝承と刀匠への玉鋼の安定供給を担っています。

特徴

たたら製鉄では、炉に砂鉄と木炭を入れ、鞴で風を送り続けて三日三晩燃やします。日刀保たたらでは、1回の操業で12トンほどの木炭を使い、約2.5トンの鉄の塊「鉧(けら)」ができると紹介されています。この鉧の中の最上級の部分が玉鋼です。玉鋼は粘りが強く、繰り返し打ち返して鍛えられるため、強靭で刃文の美しい日本刀や刃物の材料になります。

技法

村下(むらげ)

たたら操業を統括する技術責任者を村下という。村下は炎の勢いや色を見ながら、砂鉄を入れる量を調整する。技術は長く秘伝とされてきたため、日刀保たたらでは、若い頃に製鉄炉で働いた安部由蔵と久村勧治が村下を務め、木原明と渡部勝彦へ技を伝えた。2024年7月には堀尾薫が村下に就任している。

玉鋼の鍛錬

刀匠が玉鋼を熱しては打ち返して鍛え、鋼の質を整える工程である。島根県は、奥出雲の刀匠である小林貞俊・力夫兄弟について、良質な玉鋼の選び方や脱炭・吸炭の処理に長け、軟らかい鉄を硬い鉄で包む「まくり鍛え」に熟練していると紹介している。

使用される素材

砂鉄木炭粘土(炉の築造)

制作工程

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    準備・築炉

    12月中旬から準備を始め、高殿の中に粘土で炉を築く。

  2. 2

    火入れ

    1月中旬ごろに火入式を行い、炉に火を入れて操業を始める。

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    砂鉄と木炭の装入

    村下の判断で砂鉄と木炭を炉に入れ、鞴で風を送り続ける。

  4. 4

    三昼夜の操業

    三日三晩、炉から目を離さずに燃やし続ける。日刀保たたらでは、これを一冬に3回(三代)行う。

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    鉧出し・選別

    炉の中にできた鉧を取り出し、砕いて品質ごとに分ける。選り分けた玉鋼は全国の刀匠に届けられる。

主な産地
  • 奥出雲町
  • 雲南市
  • 安来市

職人・工房

日刀保たたら(日本美術刀剣保存協会)

奥出雲町大呂にある、日本で唯一伝統のたたら製鉄を続ける操業所。日本美術刀剣保存協会が1977年に復活させた。技術の保存伝承と刀匠への玉鋼の安定供給を目的に、毎年1月中旬から3回の操業を行い、村下代行や養成員が技を磨いている。

小林貞俊・小林力夫

奥出雲町に住む刀匠の兄弟で、島根県の無形文化財「日本刀」の保持者。父のもとで幼少期から作刀に関わった。丁子刃の備前伝を得意とし、奥出雲たたらと刀剣館で作刀の実演も行っている。

購入方法

奥出雲玉鋼工芸組合
奥出雲町稲原63-5にある組合(電話0854-52-1797)。島根県ふるさと伝統工芸品「奥出雲玉鋼工芸品」の製造事業者として登録され、たたらでつくる玉鋼や和鉄を鍛えた日本刀や小柄(こづか)を作る。製品について尋ねる窓口になる。購入先を見る →PR

体験施設

奥出雲たたらと刀剣館

島根県仁多郡奥出雲町横田1380-1

たたら製鉄の歴史や日刀保たたらの操業、玉鋼を紹介する施設で、日本遺産のガイドセンターも兼ねます。入館料は大人530円。毎月第2日曜と第4土曜には地元の刀匠が日本刀の鍛錬を実演し、その日は大人1,270円です。火曜休館。

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菅谷たたら山内

島根県雲南市吉田町吉田

たたら製鉄の作業場である高殿が、当時の姿のまま残る国内唯一の場所とされます。1967年に国の重要有形民俗文化財に指定されました。しまね観光ナビでは、入館料を一般350円、月曜休みとしています。

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和鋼博物館

島根県安来市安来町1058

安来市にある、たたら製鉄と和鋼をテーマにした博物館です。JR安来駅から歩いて行けます。観光情報サイトでは入館料を大人310円としています。

よくある質問

Q. たたら製鉄は工芸品ですか?

A. たたら製鉄そのものは工芸品ではなく、日本刀などの材料となる玉鋼をつくる製鉄の技術です。玉鋼を鍛えて作る日本刀や小柄は、島根県のふるさと伝統工芸品「奥出雲玉鋼工芸品」に指定されています。

Q. 日刀保たたらの操業は見学できますか?

A. 日刀保たたらは、通常は一般に公開されていません。操業の様子は、奥出雲たたらと刀剣館でパネルや映像により紹介されています。同館では、刀匠による日本刀の鍛錬の実演も見学できます。

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