西嶋和紙は、山梨県南巨摩郡身延町の西嶋地区で漉かれている手漉き和紙です。元亀2年(1571年)、武田信玄の命で伊豆の修善寺で紙漉きを学んだ望月清兵衛が、故郷に製法を持ち帰ったのが始まりと伝わります。三椏(みつまた)を主原料とする滑らかで光沢のある紙は信玄に喜ばれ、「西未」の名を与えられました。江戸時代には富士川流域で広く漉かれ、明治以降も手漉きを守り続けます。第二次世界大戦後は、中国から書画用の紙が入らなくなったことを受け、故紙や稲わらを混ぜた手漉きの画仙紙(がせんし)を全国に先駆けて開発しました。墨の発色やにじみ、筆ざわりに優れ、書道家に愛用されています。平成6年(1994年)に山梨県郷土伝統工芸品に指定されました。2025年には道の駅「にしじま和紙の里 かみすきパーク」が開業し、紙漉き体験もできます。
発祥
西嶋和紙の発祥は、元亀2年(1571年)と記録に残されています。甲斐の国主・武田信玄の命を受け、西嶋生まれの望月清兵衛が、現在の静岡県伊豆市修善寺で和紙づくりの修行を積みました。そして、その製法を故郷の西嶋に持ち帰ったのが始まりです。清兵衛が三椏を主原料に漉いた紙は、平滑で光沢があり、毛筆に適していたといいます。
歴史
清兵衛の紙を大いに喜んだ信玄は、自ら「西未」と名付けたと伝わります。そして武田菱と「西未」の文字を刻んだ朱印を与え、清兵衛を紙役人に任じました。江戸時代には富士川流域で紙漉きが広く行われます。明治以降も手漉きにこだわり、戦後は書家や紙問屋と協力して試作を重ね、昭和30年代に手漉きの画仙紙を完成させました。平成6年(1994年)に山梨県郷土伝統工芸品に指定されています。
特徴
西嶋和紙の主力は、書道用の画仙紙や半紙です。画仙紙の端切れなどの故紙を原料に生かすのが特徴で、ほどよく傷んで油の抜けた繊維が、墨の美しいにじみを生むといいます。マニラ麻や西嶋産の稲わらも混ぜ、渇筆(かっぴつ:墨がかすれた筆跡)やにじみを書き手の思いどおりに表せる紙に仕上げます。こうした画仙紙は「甲州画仙紙」として知られています。
技法
故紙を生かした画仙紙づくり
画仙紙の端切れや高級壁紙の裁ち落とし、破れた画仙紙などの故紙を、原料として再び漉き込みます。一度紙になった繊維はほどよく傷み、油もよく抜けているため、墨のにじみが美しく出る紙になるといいます。
ペダル式の紙料供給
西嶋の工房には、足元のペダルを踏むと紙料が漉き簀(す)に流れ込む仕掛けを使うところがあります。山十製紙の笠井伸二さんの先代が考案したもので、薄く繊細な画仙紙を漉くための工夫です。
使用される素材
制作工程
- 1
煮熟(しゃじゅく)
原料を煮て、繊維を柔らかくする。
- 2
叩解(こうかい)・漂白
繊維を叩いてほぐし、漂白して紙料に整える。
- 3
手漉き抄紙
紙料を簀で汲み、一枚ずつ手で漉き上げる。
- 4
圧搾
重ねた湿紙に圧をかけて、水分を絞る。
- 5
天日乾燥・乾燥
湿紙を一枚ずつはがし、天日などで乾かす。
- 6
検品・断裁
仕上がりを確かめ、寸法に合わせて裁つ。
| 主な産地 |
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|---|
職人・工房
西嶋和紙工業協同組合
身延町西嶋391-1に事務所を置く、西嶋手漉和紙の産地組合。山梨県郷土伝統工芸品の生産者として、望月清兵衛に始まる紙漉きの歴史を伝えながら、書道用紙や画仙紙など産地の和紙を守っている。
山十製紙(笠井伸二)
身延町西嶋1212にある手漉き和紙の工房で、代表は笠井伸二さん。主に画仙紙を漉き、故紙やマニラ麻、西嶋産の稲わらを生かした紙づくりを続けている。工場の見学を受け入れ、和紙グッズも販売している。
西伝製紙
身延町西嶋で手漉きの書道用紙を作る工房で、明治28年(1895年)創業、現在は4代目が営む。マニラ麻や竹、西嶋産のわらなどを原料に、全工程を一人の職人が手作業で漉いている。墨色やにじみ、かすれが書道家に評価されている。
購入方法
- かみすき館(道の駅 にしじま和紙の里 かみすきパーク)
- 道の駅のかみすき館にあるギフト・お土産ショップで、和紙を中心とした特産品を扱う。書道体験コーナーでは、西嶋の書道用紙に試し書きをしてから選べる。購入先を見る →PR
- 身延町ふるさと納税(西伝製紙)
- 身延町のふるさと納税の返礼品として、西伝製紙の「高級手漉書道半紙」1,000枚が寄付額48,000円で選べる。西嶋のわらなどを使い、一枚ずつ手で漉いた書道半紙。購入先を見る →PR
体験施設
道の駅 にしじま和紙の里 かみすきパーク
山梨県南巨摩郡身延町西嶋345
2025年4月に開業した道の駅。かみすき館で字漉き(約20分)1,100円、うちわ1,800円、灯り2,500円などの紙漉き体験ができ、乾燥に約40分かかる。体験受付は9時〜16時で、火曜定休。
詳細を見る →山十製紙
山梨県南巨摩郡身延町西嶋1212
手漉き和紙の工場を見学でき、少人数なら紙漉きや紙干しの体験もできる。見学料は大人500円・小中高生200円、体験は2,000円程度で、1人5分ほど。道の駅のある西嶋和紙の里から徒歩5分ほど。
よくある質問
Q. 画仙紙とはどんな紙ですか?
A. 書や水墨画に使われる紙で、もとは中国産の紙が使われていました。戦後に輸入が途絶えると、西嶋では書家や紙問屋と協力して試作を重ね、昭和30年代に手漉きの画仙紙を完成させました。墨の発色やにじみ、筆ざわりに優れ、今も西嶋和紙の主力です。
Q. 西嶋で今も紙を漉いている工房はありますか?
A. 2017年の取材記事では、西嶋で紙漉きを続ける工房は6軒と紹介されています。かみすきパークのかみすき館には、職人が新商品や技術の開発に使うシェア工房もあり、運がよければ作業の様子を見られます。