二風谷イタ

Nibutani Ita

二風谷イタ 1

二風谷イタは、北海道沙流郡平取町の二風谷地区に古くから伝わるアイヌ民族の木彫りの盆(イタ)です。カツラやクルミなどの北海道産材を数年かけて乾燥させた板を彫り込み、モレウノカ(渦巻文様)やアイウシノカ(棘のような文様)、シクノカ(目のような文様)といったアイヌ文様を彫刻します。文様の合間を埋めるように施される「ラムラムノカ(鱗彫り)」も二風谷イタに欠かせない技法とされています。これらの文様には魔除けや厄除けの意味が込められていると伝えられています。2013年3月8日、二風谷アットゥシとともに北海道で初めて経済産業大臣指定伝統的工芸品に指定されました。長らく日常の盆として使われてきた道具でありながら、彫り手ごとに文様の構成や深浅の表現が異なり、作り手の個性が色濃く表れる工芸品でもあります。現在も平取町二風谷を中心に、地元の工芸家や工房によって技術が受け継がれています。

発祥

二風谷イタは、沙流川流域に暮らすアイヌの人々の間で生活の道具として作られてきた木製の浅い盆です。祭事や日常の食事の場で用いられたほか、和人との交易品としても扱われました。板の表面にモレウノカ・アイウシノカ・シクノカなどのアイヌ文様を彫刻することを特徴とし、これらの文様には魔除けの意味が込められていると考えられています。曾祖父の代から続く彫り手の家系も残るなど、平取町二風谷を中心に技術が世代を超えて受け継がれてきました。

歴史

明治以降も二風谷の職人たちの手によって作り続けられ、地域の重要な生業のひとつとなってきました。長い年月をかけて培われた彫刻技術と文様表現が評価され、2013年3月8日、「二風谷アットゥシ」とともに北海道で初めて経済産業大臣指定伝統的工芸品に指定されました。これは全都道府県に少なくとも一つの指定伝統的工芸品が存在する状態を実現した指定でもあり、アイヌ工芸として大きな節目となりました。現在は平取町アイヌ文化情報センター(二風谷工芸館)などを拠点に、複数の工房・職人が制作と後進の育成に取り組んでいます。

特徴

二風谷イタの最大の特徴は、モレウノカ(渦巻)・アイウシノカ(棘)・シクノカ(目)といったアイヌ文様が組み合わされ、その隙間を埋めるようにラムラムノカ(鱗彫り)が施される点にあります。文様は彫り手により配置や深さが異なり、同じ盆は二つとないといわれるほど個性が表れます。カツラやクルミなど北海道産の木材を数年間乾燥させてから使用し、皮裁ち包丁と呼ばれる独特の道具で丁寧に彫り込む点も特徴です。

技法

モレウノカ(渦巻文様)

渦を巻くような曲線を組み合わせて彫り込む文様で、二風谷イタを代表する意匠のひとつ。彫り手ごとに渦の大きさや流れの表現が異なり、個性が表れやすい部分でもある。

アイウシノカ・シクノカ

棘のような形を連ねたアイウシノカ、目を思わせるシクノカもよく用いられる文様。モレウノカと組み合わせて盆全体の構図を作り上げていく。

ラムラムノカ(鱗彫り)

文様と文様の間に残る余白を埋めるように施される、鱗状の細かい彫り。二風谷イタには欠かせない技法とされ、根気のいる手作業で仕上げられる。

使用される素材

カツラ材クルミ材

制作工程

  1. 1

    木取り・乾燥

    カツラやクルミなどの北海道産材を板状に切り出し、数年かけて自然乾燥させる。十分に乾かすことで彫刻後の反りや割れを防ぎ、安定した仕上がりにつなげる大切な下準備となる。

  2. 2

    荒彫り

    乾燥させた板を彫刻刀で削り、盆としてのおおまかな深さと輪郭を作り出す。この段階で全体の形状のバランスを決める。

  3. 3

    底取り

    皮裁ち包丁と呼ばれる平たい刃物で盆の底面を丁寧に彫り込み、深さを一定に整えながら滑らかな曲面に仕上げていく。

  4. 4

    文様彫刻

    モレウノカ・アイウシノカ・シクノカなどのアイヌ文様を彫り込み、文様の隙間をラムラムノカ(鱗彫り)で丁寧に埋めていく。

  5. 5

    仕上げ

    盆の裏面の角を面取りして手触りを整え、全体を確認しながら仕上げの調整を行い完成させる。

主な産地
  • 北海道沙流郡平取町二風谷

職人・工房

北の工房つとむ(貝澤徹)

曾祖父の代から続く彫り手の家系に生まれ、父・貝澤勉の工房で木彫を学んだ木彫家。大英博物館に作品が収蔵されるなど国内外で高く評価され、2020年に文化庁長官表彰を受けている。

公式サイト →

購入方法

NIBUTANI AINU CRAFT オンラインショップ
平取町の工芸家らが手がけるアイヌクラフトブランドの公式通販サイト。二風谷イタをはじめ、アイヌ文様をあしらった工芸品や生活雑貨を購入できる。購入先を見る →PR
平取町アイヌ文化情報センター(二風谷工芸館)
二風谷イタ・二風谷アットゥシなど地元工芸家による伝統的工芸品を展示・直売する施設。専門書籍も扱っており、産地で直接購入できる。購入先を見る →PR

体験施設

二風谷工芸館(平取町アイヌ文化情報センター)

北海道沙流郡平取町字二風谷61-6

要予約、ムックリ製作(木彫)は2名で1,000円程度、木彫・刺繍のコースター製作は1,300円程度〜で体験できる

詳細を見る →

平取町立二風谷アイヌ文化博物館

北海道沙流郡平取町二風谷55

入館料は大人400円程度、小中学生150円程度。二風谷イタなど伝統的工芸品の展示解説を見学できる

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よくある質問

Q. 二風谷イタはどんな場面で使われていましたか。

A. 本来は食事や祭事の際に食べ物を載せる盆として使われていた日用品です。現在は盆としてだけでなく、飾り物やインテリアとしても親しまれています。

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