長崎ハタ

Nagasaki Hata (Fighting Kites of Nagasaki)

長崎ハタ 11 / 2

画像: Wikimedia Commons

長崎ハタは、長崎市に伝わる凧です。長崎では凧を「ハタ」と呼び、凧揚げのことも「ハタ揚げ」といいます。縦横2本の竹骨に和紙を貼ったひし形で、尾がないため空中で自在に動かせます。白地に赤と青の和紙を切り貼りした、シンプルで異国情緒のある紋様が特徴です。高さを競うのではなく、ガラスの粉を塗った糸「ビードロよま」で相手のハタの糸を切り合う「ハタ合戦」を楽しみます。そのため「喧嘩バタ」とも呼ばれます。出島のオランダ商館に来たインドネシア人から伝わったという説が定説とされます。ハタ揚げは「長崎くんち」「精霊流し」と並ぶ長崎の三大行事の一つとして親しまれてきました。長崎凧(ながさきはた)とビードロよまは、1993年(平成5年)に県の伝統的工芸品に指定されたと紹介されています。毎年4月には唐八景公園で長崎ハタ揚げ大会が開かれます。

発祥

現在のハタの形は、出島オランダ商館の従者として来たインドネシア人から伝わったという説が定説とされます。出島ができる前に、ポルトガル人に仕えた従者がすでに伝えていたという説もあります。「ハタ」の語源にも、オランダ船の旗に由来する説と、インドなどで凧を指す「パタン」に由来する説があると紹介されています。

歴史

1797年(寛政9年)の『長崎歳時記』などに、すでに南方系のハタが紹介されています。ハタ合戦は江戸中期から明治時代に最盛期を迎えたとみられます。落ちたハタの奪い合いで田畑を荒らしたり喧嘩になったりしたため、長崎奉行所は何度も禁令を出しました。1816年(文化13年)には市中でのハタ揚げや所有まで禁じられましたが、すぐに盛り返したとされます。

特徴

ひし形で骨は縦横の2本だけと軽く、下の先端に尾がありません。そのため空中で不安定に揺れますが、糸の操り方で自在に向きを変えられます。紋様は描かずに、染めた和紙を切り貼りして作ります。オランダ国旗に似た配色の「丹後縞(たんごじま)」が代表的で、「波に千鳥」「日の丸」など数多くの紋様があります。大きさは一文銭を並べた数で表し、合戦には「24文」が多く使われます。

技法

ビードロよま

麻糸にガラスの粉を塗り付けた糸で、「よま」は糸を指す長崎の言葉です。小川凧店では、竹の柱の間に張った麻糸に、臼で挽いたガラス粉とご飯の糊を混ぜた「ガラス団子」を塗って乾かす作業を3回繰り返すと紹介されています。

紋様の切り貼り

刷毛で染めた和紙を、型紙と紙切り包丁で切り、糊で貼り合わせて紋様を作ります。地の白に赤と青を組み合わせるのが基本で、白が色と色の間を仕切って軽やかに見せます。「切餅」「石畳」「鯨ン皮(くじらんかわ)」など、ユーモラスな紋様名も魅力です。

ハタ合戦

1対1で、ビードロよま同士を絡ませて相手の糸を切る勝負です。糸を一度緩めてから素早く引くと、ハタは頭の向いた方へ進みます。勝負がつくと「ヨイヤー」と声を上げ、切れて落ちたハタは拾った人のものになったとされます。

使用される素材

竹和紙(福岡県八女の百田紙など)麻糸ガラス粉糊(ご飯)

制作工程

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    竹の伐採

    11月に、節の間が長いハタ向きの竹を選んで切り出します。1年以上寝かせて油分や水分を抜いた竹は、硬いうえに粘りがあり、丈夫になるとされます。小川凧店では、翌々年に使う分として毎年20本ほどを伐採すると紹介されています。

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    骨組み

    竹を縦骨と横骨の寸法に割り、粗削り、油抜き・乾燥、仕上げ削りをします。上の先端の「ツンビ」を火であぶって曲げ、縦横の骨を組んで周りに張り糸を掛けます。どの作業もハタの揚がり具合や勝負を左右するとされます。

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    和紙の染め

    湿気や気温で色が変わりやすいため、染めは8月末から9月に行います。小川凧店では、毎年500〜600枚の和紙を赤と青に自ら染めていると紹介されています。染料は京都で求めていますが、配合は明かされていません。

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    紙貼りと仕上げ

    紋様を作った和紙に骨を貼り、のりしろを張り糸に沿って折り返して干します。左右には「ヒュウ」と呼ばれる房飾りを下げます。ヒュウは薄い和紙に切り込みを入れたもので、ハタが傾くときは間引いてバランスを整えます。

主な産地
  • 長崎市

職人・工房

小川凧店(小川ハタ店)

1907年(明治40年)創業の、風頭公園近くにあるハタの店です。店主の小川暁博さんはハタ作りを50年以上続け、和紙の染めも自ら手がけていると紹介されています。モットーは「あがらないハタはつくらない」です。

公式サイト →

購入方法

小川凧店の店頭
長崎市風頭町の店舗でハタを購入できます。観光情報サイトでは、小さな「一銭凧」が300円程度からと紹介されています。ハタ揚げ会場で売る紋様は20種類ほどとされるため、欲しい紋様は事前の確認や注文がおすすめです。購入先を見る →PR
飾りバタの注文
端午の節句の「鯉の滝のぼり」や干支、出産祝いなど、縁起を担いだ「飾りバタ」も作られています。鯉の滝のぼりは、金紙のうろこを一枚ずつ切り貼りして作られます。名前を入れる特注もでき、全国から注文があると紹介されています。購入先を見る →PR

体験施設

小川凧店(長崎凧資料館)

長崎県長崎市風頭町11-2

職人によるハタ作りの実演を見学でき、予約すればハタ作り体験やハタ揚げの指導も受けられます。体験教室は1,800円程度からと紹介されています。料金は変わることがあるため、事前に電話(095-823-1928)で確認してください。

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長崎ハタ揚げ大会(唐八景公園)

長崎県長崎市田上3丁目287

例年4月上旬の日曜日に開かれる春の恒例行事です。2025年は4月6日の10時から15時に行われ、ハタ合戦や自由なハタ揚げを楽しめると案内されています。問い合わせ先は長崎ハタ揚げ振興会(095-823-7423)です。

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よくある質問

Q. なぜ凧を「ハタ」と呼ぶのですか?

A. 語源には、オランダ船の旗や信号旗の「旗」に由来する説と、インドなどで凧を意味する「パタン」に由来する説があると紹介されています。長崎では、ひし形のハタ型のものだけをハタと呼び、ほかの凧はタコと呼び分けるともいわれます。

Q. ハタ揚げはどこで見られますか?

A. 3月末から5月上旬の日曜・祝日を中心に、風頭山、唐八景、金比羅山、稲佐山などで揚げられてきました。長崎ハタ揚げ大会の会場は唐八景公園です。風頭公園の近くには、ハタを作る小川凧店があります。

Q. ビードロよまは素手で扱えますか?

A. ガラス粉が付いた糸は鋭く、素手で扱うのは危険とされます。軍手や革手袋、指サックなどで指を守るのが安心です。高く揚げた後は、ガラス粉の付いていない「根よま」の部分を持って操ります。

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