長崎べっ甲

Nagasaki Bekko (Nagasaki Tortoiseshell Craft)

長崎べっ甲 1

画像: Wikimedia Commons

長崎べっ甲は、海亀の一種であるタイマイの甲羅を加工して作る長崎の伝統工芸品です。江戸時代、鎖国のもとで長崎港だけがオランダや中国との貿易港となり、原料のタイマイを手に入れやすかったことから、長崎でべっ甲細工が発達したとされます。長崎の技法は、のちに江戸などへ伝わったと紹介されています。開国後は外国人にも人気を集め、技術とデザインが磨かれました。最大の特徴は、接着剤を使わず、水と熱と圧力だけで甲羅を貼り合わせる技法です。このため「水と熱の芸術」とも呼ばれます。かんざしやブローチなどの装身具のほか、宝船などの置物も作られています。2017年に国の伝統的工芸品に指定されました。一方、タイマイはワシントン条約で国際取引が禁じられ、日本は1992年をもって輸入を止めました。職人は過去に輸入した原料を大切に使いながら、技を受け継いでいます。

発祥

べっ甲細工は飛鳥・奈良時代に中国から伝わったとされ、正倉院にも品が残ります。長崎では17世紀以降、外国の商船がタイマイを運び込んだことでべっ甲細工が始まりました。1603年に長崎で編まれた『日葡(にっぽ)辞書』には、タイマイが「中国人が細工物を作る亀の甲」と記されていると紹介されています。

歴史

享保年間(1716〜1735年)には、中島川沿いの酒屋町や袋町などにべっ甲職人がいたとされます。江戸時代は高価なぜいたく品で、元禄期には奢侈(しゃし)禁止令の対象にもなりました。安政の開国後は外国人居留地の人々やロシア人にも人気となり、明治期には船の模型など精巧な注文に応えて技術が高まったとされます。2017年1月、国の伝統的工芸品に指定されました。

特徴

タイマイの背中の甲、爪、腹の甲など、部位ごとに色や質感が異なり、職人はそれを見極めて生地を選びます。飴色の部分や漆黒の部分が特に高価とされます。べっ甲は髪や爪と同じたんぱく質でできており、熱を加えると柔らかくなるため、曲げて立体的な作品を作れます。現在は過去に輸入した原料しか使えず、希少性が高まっています。

技法

貼り合わせ(水と熱の技法)

薄いべっ甲を何枚も重ね、水と熱を加えながら圧をかけて、厚みのそろった1枚の板にします。熱した鉄板で仮付けした後、万力でプレスする方法が紹介されています。接着剤を使わないことから「水と熱の芸術」と呼ばれます。

彫刻と曲げ加工

切り出した生地を削り、細かな模様を彫り込んで立体感を出します。熱で柔らかくして曲げることもできます。長崎市べっ甲工芸館には、胴や足の関節を曲げてポーズを変えられる伊勢海老の作品があると紹介されています。

使用される素材

タイマイの甲羅(背甲・爪・腹甲)卵白(木型に貼る際の接着)

制作工程

  1. 1

    デザイン・生地選び

    原料の大きさや厚みを考えながらデザインを描きます。背甲・爪・腹甲の中から、色や模様の合う生地を選びます。

  2. 2

    切りまわし・きさぎ

    糸鋸(いとのこ)で生地を切り出し、小刀ややすりで表面の不純物を削って滑らかにします。

  3. 3

    火ばし・プレス

    熱した鉄ばさみで生地を仮付けし、水と熱を加えて圧をかけ、均一な厚みの板にします。接着剤は使いません。

  4. 4

    押しごて・彫刻

    熱したこてで生地を木型に押し当てて形を作り、卵白で接着します。続いて模様を彫り込みます。

  5. 5

    みがき・組立て

    表面を磨いて飴色のつやを出し、金具などの部品を組み立てて仕上げます。

主な産地
  • 長崎市
  • 諫早市

職人・工房

鼈甲屋たがわ

長崎市今博多町にあるべっ甲店で、長崎で三代にわたって技を磨いてきたと紹介されています。ネックレスやブローチ、かんざし、縁起物の置物などの製作・販売に加え、修理や磨き直しも受け付けています。営業は10時〜16時で、土日祝日は休みです。

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喜山(藤田誠さん)

長崎市上小島の自宅工房で制作する、べっ甲の彫刻細工師です。大正時代から続く家の3代目で、日本で唯一のべっ甲専門の彫刻細工師とされ、職人歴は約60年と紹介されています。店舗は持たず、作品は販売店に卸しています。

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購入方法

鼈甲屋たがわ
店頭のほか、オンラインショップやふるさと納税でも商品を扱っています。ふるさと納税のサイトには、176,000円のブローチや550,000円のかんざしなど、本べっ甲ならではの品が掲載されています。価格は変わることがあります。購入先を見る →PR
長崎歴史文化博物館の貸工房
博物館2階の工房では、職人がべっ甲細工を作る様子を見学でき、ペンダントやブローチなどを購入できると案内されています(水曜日を除く)。購入先を見る →PR

体験施設

長崎市べっ甲工芸館

長崎県長崎市松が枝町4-33

国の重要文化財「旧長崎税関下り松派出所」(1898年建築)を使った展示館です。宝船や伊勢海老など全国の名品を展示し、製作工程のビデオも上映しています。入館料は大人100円、9時〜17時と紹介されています。

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よくある質問

Q. べっ甲の原料は今どうなっているのですか?

A. タイマイはワシントン条約で最も保護が必要な附属書Ⅰに分類され、日本は1992年をもって輸入を止めました。業界は2001年から国内での陸上養殖の研究を進め、2017年にはタイマイの陸上養殖を事業化したと紹介されています。

Q. 長崎のべっ甲店は今も多いのですか?

A. 約60年前には長崎県内にべっ甲関連の業者が約300件ありましたが、現在は約20件に減ったと紹介されています。それでも長崎は、日本べっ甲協会が本部を構える、べっ甲細工ゆかりの地とされています。

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