肥松木工品

Koematsu Mokkohin (Resinous Pine Woodcraft)

肥松木工品 1

肥松木工品(こえまつもっこうひん)は、樹齢数百年の老松の幹の中心部「肥松」を使った、香川県高松市の木工品です。肥松は松やに(脂)を多く含み、光沢があって、光にかざすと年輪が赤く透けて見えます。彩色をせずに木地のまま仕上げ、使い込むほど艶が増して赤茶色に変わっていきます。温暖で雨の少ない香川では昔から良質な肥松がとれ、江戸時代から木工品が作られてきたとされます。一度は途絶えかけましたが、戦後すぐに木地師の有岡良益が、漆芸家・磯井如真(いそいじょしん)の勧めで復活させました。1990年度(平成2年度)に香川県の伝統的工芸品に指定され、茶器や茶托、食器、盆などが作られています。材料となる老松はほとんど手に入らなくなっており、貴重な工芸品になりつつあります。

発祥

肥松とは、樹齢数百年に及ぶ松の中心部で、特に松やにを多く含む部分を指します。関東では老松、関西では脂松とも呼ばれ、「肥松」は瀬戸内地方独自の呼び方とされます。温暖で雨の少ない香川では、昔から赤みを帯びた美しい木目の肥松が育ち、江戸時代から木工品が作られてきました。香川の肥松は、もっぱら黒松だといわれます。

歴史

肥松の木工は江戸時代から続いていたものの、一時はなくなりかけていました。戦後すぐ、漆芸家・磯井如真の下で漆を塗る前の木地を作っていた木地師の有岡良益が、その腕を見込まれて肥松木工の復活を勧められます。良益が興したクラフト・アリオカは、息子の有岡良員さんに受け継がれました。1990年度(平成2年度)、肥松木工品は香川県の伝統的工芸品の第6次指定品目となっています。

特徴

肥松は脂が多く、漆などを塗っても剥がれてしまいます。そのためクラフト・アリオカでは、仕上げにオリーブオイルを塗るだけにしています。木目が鮮やかに浮き出て、光にかざすと松やにの多い部分が赤く透けます。使った後に乾拭きを続けると、目の詰まった秋目の脂が春目に入り込み、全体の色艶が増していきます。使う人が完成させる器ともいわれます。

技法

長期の自然乾燥

肥松は癖の強い木で、板にしてからも歪んだり曲がったりします。そのため少なくとも20〜30年、長いものは50年ほど自然乾燥させ、癖を出し切ってから使います。乾燥が不十分だと、温度の変化で内部の松やにが蜂蜜のようににじみ出ることがあります。

讃岐式ろくろと木さげ

クラフト・アリオカでは、地面に対して垂直に回転する「讃岐式」「香川式」と呼ばれるろくろで器を挽きます。仕上げには、先代の有岡良益が鋼ののこぎりを改造して考案した刃物「木さげ」を使い、波打ちやすい松の表面を鏡面のように整えます。

使用される素材

肥松(黒松の老木の芯材)オリーブオイル(仕上げ)
主な産地
  • 高松市

職人・工房

クラフト・アリオカ

高松市にある店舗兼工房で、戦後に木地師の有岡良益が興した。現在は息子で香川県伝統工芸士の有岡良員さんが、肥松の茶器や食器、酒器、盆などを作っている。2024年の取材では、手元にある肥松の在庫は、本気で作ればあと2年ほどしか持たないと語られていた。

公式サイト →

購入方法

クラフト・アリオカ(工房・百貨店の展示会)
工房は店舗を兼ねているが、JR高松駅から車で20分ほどの住宅街にある。有岡さんは百貨店の展示会を主な販路としており、会場で実演を行うこともある。2020年の紹介記事では、肥松の小鉢(4.5寸)が10,000円(税抜)で掲載されていた。購入先を見る →PR

よくある質問

Q. 光にかざすと赤く透けるのはなぜですか?

A. 肥松が松やにを多く含んでいるためです。器を光にかざすと、松やにの多い部分がきらめき、年輪が赤く透けて見えます。自然乾燥で数十年寝かせても松やには残るため、手触りはしっとりしており、時間とともに色も濃くなっていきます。

Q. 肥松の器はどう手入れすればよいですか?

A. 使った後はさっと水洗いし、日の当たらない風通しのよい場所で乾かします。最初のうちはできれば毎日乾拭きをすると、松やにが全体に行き渡り、色艶がよくなっていくといいます。木の器なので、落としてもめったに割れません。

Q. なぜ肥松木工品は貴重なのですか?

A. 材料になるのは、樹齢300年を超えて松やにを十分に蓄えた松の老木です。害虫などで老木が減り、残っている黒松も簡単には切れません。さらに乾燥に20年以上かかるため、新たな材料を確保するのが難しくなっています。

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