紀州高野組子細工(きしゅうこうやくみこざいく)は、世界遺産・高野山のふもとで受け継がれてきた木工の装飾技法です。細かく割った木材を、釘などを一切使わずに手作業で組み合わせ、さまざまな紋様を編み込むように作り上げます。材料には、強く光沢があって加工しやすい地元の「高野六木(こうやりくぼく)」を中心に用います。高野六木とは、松・モミ・ツガ・杉・桧・高野槙の6種の木のことです。江戸時代、高野山の寺院を復興するため京都から招かれた腕利きの組子職人が伝えた技術が、この地で発展したといわれます。三本の薄い木材を正三角形に組む「三ツ組手(みつくで)」で幾何学紋様を組み上げ、衝立や欄間、額、置物などを飾ります。橋本市・かつらぎ町・九度山町・高野町が産地で、2010年(平成22年)に和歌山県知事指定の郷土伝統的工芸品となりました。
発祥
紀州高野組子細工は、江戸時代に高野山の寺院復興のため京都から招かれた、腕の良い組子職人が伝えた技術に由来するといわれます。組子とは、細く割った木を組み合わせて模様を作る技法で、障子や欄間などの建具を飾るのに使われてきました。高野山のふもとで、地元の木材を生かしながらその技が受け継がれていきました。
歴史
高野山麓では、強く光沢があり加工しやすい高野六木を使って技が磨かれてきました。伝統的な幾何学模様に加え、山形や波状の表現といった新しい技術も生み出されています。2010年(平成22年)には、橋本市・かつらぎ町・九度山町・高野町の工芸品として、和歌山県知事指定の郷土伝統的工芸品となりました。近年は職人が地元の小中学校で木工教室を開くなど、技の普及にも力を入れています。
特徴
最大の特徴は、釘や金具を一切使わず、手作業だけで木片を組み上げる点です。三本の薄い木材を正三角形に組む「三ツ組手」を基本に、精緻な幾何学紋様を描き出します。材料は高野六木が中心です。橋本市の職人・池田秀孝は、三ツ組手の中に材質や色の濃淡が異なる木片をはめ込み、人物や風景まで描き出す独自の技法を編み出しました。
技法
三ツ組手
三本の薄い木材を正三角形に組み合わせる組手(くみて)。これを連ねて幾何学紋様を組み上げる、紀州高野組子細工の基本となる技法である。釘や金具を使わず、木と木の組み合わせだけで形を保つ。
きのくに・千切れはめ込め技法
池田秀孝が独自に編み出した技法。三ツ組手の中に材質や色の濃淡が異なる木片を組み付け、紋様だけでなく人物や風景などの複雑な絵柄を表す。その独自性と芸術性から、総本山金剛峯寺より高野山伝統技術として承認されている。
使用される素材
制作工程
- 1
小割り
丸太や太い材を一定の板に製材し、昇降盤(刃の高さを調整できる木工機械)を使って、目的の寸法の細い材に小割りする。
- 2
クデ取り
自家製の型台を使い、仕上げた材と材がかみ合うよう、組み合わせる部分を欠き取る。この工程を「クデ取り」と呼ぶ。
- 3
素地組み・仮組み
用意した部材で、紋様を編み込むための枠を組み上げる。下絵に合わせて木片の桟(さん)を一つずつはめ込み、仮に組んでいく。
- 4
本組み
仮組みで見つかったずれなどを修正したうえで本組みし、作品を完成させる。
| 主な産地 |
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職人・工房
池田秀孝(号 秀峯)
1946年(昭和21年)橋本市生まれ。組子細工師の父・池田清吉の影響で幼いころから組子に親しみ、二十歳過ぎに家業を継いだ。池田清吉建具の二代目で、紀州高野組子細工師の七代目とされる。2023年度(令和5年度)に和歌山県名匠に選ばれた。
よくある質問
Q. 高野六木とは何ですか?
A. 松・モミ・ツガ・杉・桧・高野槙の6種の木を指します。紀州高野組子細工では、強く光沢があって加工しやすい、これら地元の木材を中心に使います。
Q. 組子細工はどんなものに使われますか?
A. 衝立や欄間、額、置物などを美しく飾るのに使われます。池田秀孝は、アルミサッシに組子を施すという依頼をきっかけに、本格的に父の後を継いで組子を作り始めたといいます。
Q. 組子細工に触れる機会はありますか?
A. 池田秀孝は橋本市の小中学校で、組子を使った木工教室や卒業記念制作を指導してきました。熟練が必要な道具に独自の補助器具を組み合わせ、経験がなくても組子細工を作れるよう工夫しています。