紀州へら竿

Kishu Herazao (Kishu Bamboo Fishing Rods)

紀州へら竿 1

紀州へら竿(きしゅうへらざお)は、和歌山県橋本市と九度山町で作られている、ヘラブナ釣り用の竹竿です。ヘラブナは釣りの対象として人気の高い淡水魚で、紀州へら竿はこの釣りのための道具として発展しました。真竹(まだけ)、高野竹(こうやだけ)、矢竹(やだけ)の3種類の天然竹を部位ごとに使い分け、継ぎ合わせて1本の竿に仕上げます。細かく分けると約130もの工程があり、竿師(さおし)と呼ばれる職人が1人でほぼすべてを手作業で進めます。1本の完成までには半年から1年ほどかかります。明治時代に大阪で始まった竿づくりの流れをくみ、昭和初期に竿師が橋本へ拠点を移したことで産地が生まれました。130年以上の歴史を持ち、竹製のへら竿では全国の約9割を占める産地とされます。2013年(平成25年)に国の伝統的工芸品に指定されました。

発祥

紀州へら竿のルーツは、明治時代に大阪で竿づくりを始めた竿師「竿正」にあるとされます。その流れをくむ竿師「源竿師」が、昭和初期に故郷の伊都郡橋本へ生産の拠点を移しました。これが橋本のへら竿づくりの始まりです。高野山のふもとで材料の竹が得られることもあり、橋本周辺に竿師が集まる産地が形づくられていきました。

歴史

ヘラブナ釣りの広まりとともに産地は成長し、1960〜1980年代の最盛期には約150人の竿師が組合に所属していました。紀州製竿組合は竿の試験研究のための釣り池「隠れ谷池」も設けています。2006年には後継者を育てる「匠工房」を開き、2013年3月に国の伝統的工芸品に指定されました。一方で竿師は減り、近年は30人台となっています。

特徴

紀州へら竿は、性質の異なる3種類の竹を組み合わせるのが特徴です。穂先には真竹、その下の穂持(ほもち)には高野竹(スズタケ)、手元側には矢竹を使います。竿師は竹の乾燥から火入れ、漆塗り、握りの仕上げまでを1人で担い、竿には作者の竿銘が入ります。握りに卵殻を施すなど、釣り道具としての機能美に加えて工芸品としての美しさも追求されています。

技法

火入れ

竹を火であぶり、曲がりを直しながら竹を締める工程。竿のしなり具合を左右する大切な作業で、荒火入れなどの段階を経て仕上げる。紀伊清水駅の匠工房では、この火入れを体験できる。

穂先削り

竿の先端にあたる穂先を、竹を削って細く仕上げる工程。竿の中でも特に繊細な部分で、竿師の技量が表れる。匠工房では火入れとともに体験メニューになっている。

絹糸巻き・漆塗り

竿の継ぎ口などに絹糸を巻き、漆を塗って仕上げる。名匠の竿には、握りの部分に卵殻を貼るなど漆芸の手法を取り入れたものもあり、使う道具でありながら工芸品としての美しさを備える。

使用される素材

真竹高野竹(スズタケ)矢竹絹糸漆

制作工程

  1. 1

    原竹の乾燥

    材料の竹を十分に乾燥させる。乾燥には3年ほどかけるとされる。

  2. 2

    生地組み

    乾かした竹から穂先・穂持・元などに使う竹を選び、組み合わせを決める。

  3. 3

    火入れ

    竹を火であぶり、曲がりを直しながら締める。

  4. 4

    中抜き・込み削り

    竹の節を抜き、継ぎ口(込み)を削って、竿同士がしっかりはまるように整える。

  5. 5

    絹糸巻き・漆塗り

    継ぎ口などに絹糸を巻き、漆を塗って仕上げる。

  6. 6

    差し込み・握り

    継ぎを差し込んで竿をつなぎ、手元に握りを付ける。

  7. 7

    穂先削り・胴拭き・仕上げ

    穂先を削って仕上げ、胴に漆を塗って拭き上げる「胴拭き」を行い、全体を仕上げる。

主な産地
  • 橋本市
  • 九度山町

職人・工房

山上寛恭(竿銘「こま鳥」)

橋本市の竿師。名人といわれた父・山上高司の竿銘「こま鳥」を2代目として継ぐ。約130の工程を約1年かけて1人で手がけ、握りに卵殻を施すなど意匠にもこだわる。2018年に伝統工芸士に認定され、令和2年度の和歌山県名匠に選ばれた。

紀州製竿組合

橋本市を拠点とする紀州へら竿の竿師の組合。2006年に後継者を育てる「匠工房」を開き、2021年には南海電鉄・橋本市と共同で紀伊清水駅の駅舎に工房を構えた。工房の職人は駅の清掃など駅業務の一部にも協力している。

購入方法

紀州へら竿工房「匠工房」
南海高野線紀伊清水駅の駅舎を改装した紀州製竿組合の工房。展示・販売エリアがあり、紀州へら竿を自由に見て、気に入った竿を購入できる。工房見学は無料。営業は火・水・木・土曜で、月・金・日曜は休み。

体験施設

紀州へら竿工房「匠工房」

和歌山県橋本市清水(南海高野線 紀伊清水駅 駅舎内)

約12の主な工程のうち「火入れ」と「穂先削り」を体験できる。料金は1回1時間2,000円程度〜(税別)。営業は火・水・木・土曜の8時30分〜16時30分で、体験は9時〜16時。修行中の職人の作業も見学できる。

隠れ谷池

和歌山県橋本市清水(紀伊清水駅から徒歩約10分)

へらぶな釣りの聖地と呼ばれる釣り池。紀州へら竿の研究の場であると同時に一般にも開放されており、へらぶな釣りを体験できる。匠工房と合わせて訪れると、竿づくりと釣りの両方に触れられる。

よくある質問

Q. へら竿はどんな釣りに使う竿ですか?

A. 淡水魚のヘラブナを釣るための竿です。主に二つの針が付いた仕掛けを使う釣りに用いられます。紀州へら竿は3種類の竹を組み合わせた竹竿で、全国のへらぶな釣り愛好家に親しまれています。

Q. 1本の竿を作るのにどれくらいかかりますか?

A. 細かく分けると約130の工程があり、1人の竿師がほぼすべてを手作業で進めます。そのため1本の完成までに半年から1年ほどかかります。

Q. 竿づくりを体験できますか?

A. 橋本市の紀伊清水駅にある匠工房で、火入れと穂先削りを体験できます。料金は1時間2,000円(税別)からで、工房の見学は無料です。

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