川尻筆

Kawajiri-fude (Kawajiri Brushes)

川尻筆 1

画像: Wikimedia Commons

川尻筆(かわじりふで)は、広島県呉市川尻町で作られる毛筆です。2004年(平成16年)に国の伝統的工芸品に指定されました。江戸時代末期に、他の産地の筆を仕入れて売ったことから川尻と筆との関わりが始まり、やがて村で筆づくりが根づきました。穂首には獣毛を使い、毛を湿らせて混ぜ合わせる「練り混ぜ(ねりまぜ)」の技法で作るのが一般的です。手間がかかるため大量生産には向きませんが、そのぶん品質の高い筆に仕上がります。広島県は、京筆の流れをくむ川尻筆のしなやかな穂先を、草書やかな、日本画の精密な描写に向くと紹介しています。工房では一人の職人が最初から最後まで一貫して作る体制が守られており、その工程は70を超えるといわれます。

発祥

天保9年(1838年)、川尻の菊谷三蔵が摂津国有馬(兵庫県)から筆を仕入れ、寺子屋などに置いて売ったのが、川尻と筆の関わりの始まりとされます。三蔵は村人に筆づくりも勧めましたが、すぐには広まらなかったといわれます。19世紀半ばになると、上野八重吉が農閑期の副業として筆づくりを広めました。八重吉は有馬で筆づくりを学び、出雲(島根県)から職人を招いて製造を始めたといわれ、川尻筆の祖とされています。

歴史

明治時代に学校教育が広まると、習字に使う筆の需要が増え、川尻の筆づくりは大きく発展しました。明治末から昭和初期にかけて最盛期を迎えたといわれます。戦時中は原料不足や職人の出征で生産が落ち込みましたが、戦後に持ち直しました。1967年には川尻毛筆事業協同組合が組織され、2004年8月31日に国の伝統的工芸品に指定されています。2014年にはグッドデザイン賞も受賞しました。広島県の資料では、職人の数は60年前の約10分の1にまで減ったとされます。

特徴

穂首の主原料は獣毛で、軸には竹や木が使われます。川尻筆の特徴は、毛を湿らせて混ぜる練り混ぜの技法が一般的なことです。工程は穂首製作、軸製作、仕上げに大きく分かれ、いずれも昔ながらの技法で一本ずつ手作業で作られます。野呂山には川尻筆づくり資料館があり、川尻の筆づくりの工程や歴史を資料や模型で紹介しています。

技法

練り混ぜ

原毛を水で湿らせて薄く延ばし、折り返しては重ねる作業を繰り返して、性質の違う毛を均一に混ぜ合わせる技法である。手間がかかり量産には向かないが、高い技術を要するぶん品質の高い穂首ができる。川尻では今もこの技法で筆が作られている。

一貫生産

川尻の工房では、原毛の選別から穂首づくり、軸への取り付け、仕上げまでを一人の職人が受け持つ。機械に頼らず一本ずつ作るため数は作れないが、書家や日本画家の細かな注文にも応えられる。工程は70を超えるといわれる。

使用される素材

獣毛(羊毛・イタチ毛など)竹・木(軸)

制作工程

  1. 1

    穂首製作

    原毛を選り分け、練り混ぜで混ぜ合わせて穂首を形づくる。

  2. 2

    軸製作

    竹や木で軸を作り、穂首をはめる部分を整える。

  3. 3

    仕上げ

    穂首を軸に取り付け、形を整えて一本の筆に仕上げる。

主な産地
  • 呉市川尻町

職人・工房

文進堂 畑製筆所

呉市川尻町原山の筆工房で、1930年創業と紹介されている。三代目の畑義幸は川尻筆の伝統工芸士で、8歳から父のもとで筆づくりを学び、一子相伝の技で70を超える工程を一人で手がける。四代目の畑幸壯が技を受け継いでいる。羊毛筆やイタチ筆のほか、赤ちゃん筆や化粧筆も作る。

公式サイト →

購入方法

文進堂 畑製筆所のオンラインストア
文進堂は公式サイトのオンラインストアで筆を販売している。1970年頃に中国・揚子江付近で選別した雄ヤギの毛を使う書道筆「義巧(ぎこう)」は、広島市の紹介ページで税込38,500円からと案内されている。県外の書道用品店でも扱われている。購入先を見る →PR
川尻毛筆事業協同組合
呉市川尻町西1-2-2-401にある川尻筆の産地組合(電話0823-87-2395)。「川尻筆」の地域団体商標の権利者でもあり、産地の筆や製造者について尋ねる窓口になる。購入先を見る →PR

体験施設

文進堂 筆づくり体験

広島県呉市川尻町原山1-5-35

伝統工芸士の指導で、筆づくりの道具や工程、新旧の原料による仕上がりの違いを体験できます。広島県の公式観光サイト「Dive! Hiroshima」では、料金26,800円(英語ガイドは別)、所要約80分、2〜4人で申し込むと案内されています。予約は体験予約サイトから行います。JR安芸川尻駅から歩いて15分ほどです。

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よくある質問

Q. 熊野筆と川尻筆はどう違うのですか?

A. どちらも広島県で作られる国の伝統的工芸品の筆です。熊野筆は1975年に指定された大きな産地で、書筆のほか画筆や化粧筆も大量に作ります。川尻筆は2004年に指定され、練り混ぜの技法を用い、一人の職人が一貫して毛筆を作る小規模な工房が産地を支えています。

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